この記事は、法人税の申告期限を過ぎてしまった法人の経営者・経理担当者に向けて、無申告加算税の税率・計算方法・免除される場合を整理したものです。
結論から申し上げます。法人税を期限までに申告しなかった場合、無申告加算税は原則として本税の15%(納付すべき税額のうち50万円を超え300万円までの部分は20%、300万円を超える部分は30%)です。ただし、税務調査の通知を受ける前に自主的に期限後申告をすれば5%に下がり、法定申告期限から1か月以内に一定の要件を満たして自主申告すれば課されません。つまり、気づいた時点でどれだけ早く動けるかで負担が大きく変わります。
「今さら申告して大丈夫だろうか」「どのくらい上乗せされるのか分からない」と不安に感じる方も多いはずです。以下では、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものに適用される最新の取扱いを、条文と国税庁の公表資料に沿って具体的な数字で解説します。
無申告加算税の概要と法人税における位置づけ
無申告加算税は、期限内に申告書を提出しなかったことに対して課される行政上のペナルティ(附帯税)です。本来納めるべき法人税(本税)とは別に、追加で納付を求められます。
無申告加算税とは
無申告加算税は、期限後申告書の提出があった場合や、税務署長から決定を受けた場合に、その申告・決定に基づいて納付すべき税額に一定の割合を乗じて課されます。期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合は課されませんe-Gov法令検索 国税通則法第66条。
法人税の無申告加算税は、法人税法ではなく国税通則法に定められています。所得税・消費税・相続税なども同じ条文が根拠であるため、「法人税だけ特別な税率」というものはありません。実務では、法人税・地方法人税・消費税の3税目それぞれに無申告加算税が課されるため、合計額が想定以上に膨らむ点に注意が必要です。
法人税の申告期限と無申告の判定
内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に確定申告書を提出しなければなりませんe-Gov法令検索 法人税法第74条。3月決算法人であれば5月31日が法定申告期限です。この日を1日でも過ぎて提出すれば期限後申告となり、無申告加算税の対象になります。
| 法定申告期限 | 事業年度終了の日の翌日から2か月以内 |
|---|---|
| 3月決算法人の期限 | 5月31日(休日の場合は翌開庁日) |
| 期限を過ぎた申告 | 期限後申告として取り扱われ、無申告加算税の対象 |
| 申告書を出さない場合 | 税務署長による決定を受け、同じく無申告加算税の対象 |
なお、定款の定め等により決算確定が間に合わない法人には申告期限の延長の特例がありますが、これはあらかじめ申請して承認を受けている場合に限られます。承認がないまま2か月を過ぎれば、事情にかかわらず期限後申告です。
無申告加算税の税率(令和6年1月1日以後)
税率は「いつ申告したか」で三段階に分かれます。令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものについては、次のとおりです国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき。
| 申告のタイミング | 無申告加算税の割合 |
|---|---|
| 調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告 | 一律5% |
| 事前通知の後、決定を予知する前に期限後申告 | 50万円までの部分10% 50万円超300万円までの部分15% 300万円を超える部分25% |
| 調査を受けた後の期限後申告 または税務署長による決定 |
50万円までの部分15% 50万円超300万円までの部分20% 300万円を超える部分30% |
「調査の事前通知」とは、税務署から実地調査を行う旨の連絡を受けることをいいます。この連絡が入る前か後かで、税率が5%と10%以上に分かれるのが最大の分岐点です。
300万円を超える部分に対する30%の取扱い
納付すべき税額のうち300万円を超える部分について30%(事前通知後・決定予知前は25%)という区分は、令和5年度税制改正で設けられ、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から適用されています。高額な無申告への対応を強化する趣旨です。
ただし、300万円を超えることについて納税者の責めに帰すべき事由がないと認められる部分は、この30%の区分から除いて計算します。相続により取得した財産に係るものなど、本人の関与が乏しい事情がある場合を想定した措置です。
税務調査との関係
無申告加算税の税率は税務調査の進行段階と直結しています。調査がどこまで遡るのか、どの程度の確率で行われるのかを知っておくと、対応の優先順位を判断しやすくなります。
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無申告加算税の計算方法
計算は「納付すべき税額を金額の段階ごとに区切り、それぞれの割合を乗じて合計する」という累進的な仕組みです。全額に一律の率を掛けるわけではありません。具体的な数字で確認します。
調査後に期限後申告をした場合の計算例
法人税の納付すべき税額が500万円で、税務調査を受けた後に期限後申告をしたケースです。
本税500万円に加えて117万5000円の無申告加算税が課されます。ここに延滞税も加わります。
調査の通知前に自主申告した場合の計算例
同じ税額500万円でも、調査の事前通知を受ける前に自ら期限後申告をした場合は一律5%です。
同じ無申告でも、動くタイミングの違いだけで92万5000円の差が生じます。無申告を自覚しているなら、調査の連絡を待つ理由はありません。
無申告加算税が課されない場合・軽減される場合
無申告加算税には、課されない場合(免除)と、割合が下がる場合(軽減)があります。要件は条文で明確に定められており、「反省しているから」といった事情では減りません。
正当な理由があると認められる場合
期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合、無申告加算税は課されません。国税庁の事務運営指針では、災害、交通・通信の途絶その他期限内に申告書を提出しなかったことについて真にやむを得ない事由があると認められたときが、これに当たるものとして取り扱われています国税庁 法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)。
同じ事務運営指針では、過少申告加算税の正当な理由について税法の不知や誤解、事実誤認に基づくものは該当しないと明記されています。「申告が必要だと知らなかった」「顧問税理士に任せていたつもりだった」という理由は、実務上まず通りません。
| 主張されやすい事情 | 正当な理由としての評価 |
|---|---|
| 災害・交通や通信の途絶 | 真にやむを得ない事由として認められ得る |
| 申告義務を知らなかった | 税法の不知に当たり、認められない |
| 資金繰りが苦しく納付できなかった | 申告と納付は別の義務であり、認められない |
| 担当者の退職で処理が漏れた | 社内の事情にとどまり、認められない |
法定申告期限から1か月以内の自主的な期限後申告
期限後申告であっても、次の要件をすべて満たす場合には無申告加算税は課されません。
| 申告の時期 | 法定申告期限から1か月以内に自主的に行われていること |
|---|---|
| 納付の状況 | 期限後申告に係る納付すべき税額の全額を法定納期限までに納付していること |
| 過去の履歴 | 期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、この不適用の取扱いも受けていないこと |
ここで見落とされやすいのが納付の要件です。申告書の提出が1か月以内でも、税金の納付が法定納期限(申告期限と同じ日)を過ぎていれば、この取扱いは受けられません。3月決算法人であれば、5月31日までに納付を済ませたうえで6月30日までに申告書を提出する、という順序になります。
調査の事前通知前の自主申告による軽減
1か月を過ぎてしまった場合でも、調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告をすれば5%にとどまります。事前通知を受けた後では、同じ自主申告でも10%以上に上がります。前掲の計算例のとおり、この差は数十万円単位になり得ます。
無申告加算税が加重される場合
一方で、割合が上乗せされる仕組みも設けられています。いずれも、無申告を繰り返す法人や、調査に協力しない法人への対応を想定したものです。
短期間に無申告を繰り返した場合の10%加算
調査を受けた後の期限後申告等があった日の前日から起算して5年前までの間に同じ税目について無申告加算税(決定の予知後に課されたものに限ります)または重加算税を課されたことがあるときは、納付すべき税額に10%を乗じた金額が加算されます。
さらに令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものについては、期限後申告等に係る事業年度の前年および前々年に課税期間が開始した同じ税目について無申告加算税等を課されたことがあるとき(または課されるべきと認められるとき)にも、10%が加算されます。
先ほどの500万円・調査後のケースで、この加重措置が適用される場合は次のとおりです。
本税とは別に167万5000円の負担となり、さらに延滞税が加わります。2期・3期と無申告が続いている法人ほど、この加重に直面しやすくなります。
帳簿の提示等がない場合の加算
令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものについては、調査で帳簿の提示または提出を求められた際に帳簿を提示等しなかった場合、および帳簿への売上金額の記載等が本来記載すべき金額の2分の1未満だった場合は、納付すべき税額に10%を乗じた金額が加算されます。3分の2未満だった場合は5%の加算です。
実務では、会計ソフトのデータはあるものの証ひょう書類が整理されておらず、求められた資料をすぐに出せないという状態が見受けられます。帳簿書類を整えておくこと自体が、加算を避ける直接の手段になります。
重加算税・延滞税との関係
無申告加算税は、重加算税に置き換わったり、延滞税と併せて課されたりします。全体でいくらになるのかを把握しておくことが重要です。
隠蔽・仮装があった場合の重加算税
課税標準等または税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽・仮装し、それに基づいて法定申告期限までに申告書を提出しなかった場合は、無申告加算税に代えて40%の重加算税が課されます。さらに、過去5年内に無申告加算税等を課されているなど一定の場合には、10%が加算されますe-Gov法令検索 国税通則法第68条。
何が「隠蔽又は仮装」に当たるかは、事務運営指針に例示があります。二重帳簿の作成、帳簿書類の破棄・隠匿、帳簿書類の改ざんや虚偽記載、相手方と通じた虚偽の証ひょう書類の作成、売上げその他の収入の脱ろう、棚卸資産の除外などが挙げられています国税庁 法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)。
逆に、売上げの計上を繰り延べた場合でも、その収入が翌事業年度の収益に計上されていることが確認され、相手方との通謀や書類の破棄・隠匿・改ざんによるものでないときは、帳簿書類の隠匿・虚偽記載等に該当しないとされています。単なる期ズレと不正行為は区別して判断されるということです。
| 課される附帯税 | 割合 |
|---|---|
| 無申告加算税(調査後の期限後申告) | 15%・20%・30%の三段階 |
| 無申告加算税(事前通知前の自主申告) | 5% |
| 重加算税(隠蔽・仮装があった無申告) | 40%(一定の場合は50%) |
| 延滞税 | 納期限からの期間に応じた割合 |
延滞税の併課
期限後申告によって納める税金は、申告書を提出した日が納期限となります。そのうえで、法定納期限の翌日から実際に納付する日までの期間に応じた延滞税を併せて納付する必要があります。割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが令和8年1月1日から令和8年12月31日までの期間で年2.8%、2か月を経過した日以後が年9.1%です国税庁 No.9205 延滞税について。
無申告の期間が長いほど延滞税は積み上がります。無申告加算税が「一度きりの上乗せ」であるのに対し、延滞税は日数に比例して増える点が異なります。
関連コラム修正申告の延滞税納付書はいつ届く?届いた後の対応を税理士が解説▸
実務での取扱いと対応の流れ
ここからは、無申告の状態に気づいた法人が実際にどう動くのかを、実務の視点で整理します。
無申告に気づいた場合の対応手順
| 第1段階 | 未申告の事業年度と税目(法人税・地方法人税・消費税・法人住民税等)を洗い出す |
|---|---|
| 第2段階 | 各事業年度の帳簿・証ひょう書類を集め、決算書を作成する |
| 第3段階 | 古い事業年度から順に申告書を作成し、まとめて提出する |
| 第4段階 | 本税・無申告加算税・延滞税の納付計画を立てる |
優先すべきは調査の事前通知が来る前に提出を終えることです。資料が完全に揃っていない事業年度があっても、判明している範囲で申告し、後から修正申告で是正する方が、全期間を放置するより負担は小さくなります。
実務でよくあるケース
実務で多いのは、決算は組んでいたものの、納税資金が用意できず申告書の提出まで止めてしまったというケースです。申告と納付は別の義務であり、納付できないからといって提出を止める理由にはなりません。この点を早い段階で切り分けられるかどうかで、その後の負担が変わります。
例えば3期分の法人税が未申告だった法人が、税務署からの接触を受ける前に3期分をまとめて期限後申告したケースでは、無申告加算税は各期とも納付すべき税額の5%にとどまりました。仮に調査を受けた後の申告であれば15%から30%の区分が適用され、さらに繰り返しによる10%の加算対象にもなり得た事案です。
一方で、税務署からの連絡を放置し続けると、督促や滞納処分といった手続きに進みます。通知が届いた時点での対応が、その後の選択肢を左右します。
関連コラム税務署の督促状が届いたら|放置リスクと対処法を税理士が解説▸
無申告の状態が複数期にわたる場合、どの事業年度から着手するか、消費税の課税事業者判定をどう扱うか、繰越欠損金が使えるかなど、判断が必要な論点が同時に発生します。金額が大きくなるほど、税率区分や加重措置の適用可否で結果が変わります。判断に迷う場合は、まずは税理士にご相談ください。
まとめ
法人税の無申告加算税は、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものについて、調査後の期限後申告であれば50万円までの部分15%、50万円超300万円までの部分20%、300万円を超える部分30%です。調査の事前通知を受ける前に自主的に申告すれば5%、法定申告期限から1か月以内に納付も含めた要件を満たせば課されません。
正当な理由として認められるのは災害や交通・通信の途絶といった真にやむを得ない事由に限られ、申告義務の不知や資金繰りの悪化は該当しません。さらに、短期間に無申告を繰り返した場合や帳簿を提示しなかった場合には10%が加算され、隠蔽・仮装があれば40%の重加算税に置き換わります。加えて延滞税も日数に応じて積み上がります。
負担を最小限に抑える方法は、要件が明確に定められている以上、調査の通知が入る前に自ら申告することに尽きます。個別の事情によって適用される区分は変わりますので、具体的な取扱いの判断はまずは税理士にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務判断を保証するものではありません。
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参考文献
- 国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき
- 国税庁 No.9205 延滞税について
- 国税庁 法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)
- 国税庁 法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
- e-Gov法令検索 国税通則法第66条
- e-Gov法令検索 国税通則法第68条
- e-Gov法令検索 法人税法第74条
法人税の無申告加算税に関するよくある質問まとめ
Q.法人税の無申告加算税は何%ですか。
A.令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するもので税務調査後に期限後申告をした場合、納付すべき税額のうち50万円までの部分が15%、50万円超300万円までの部分が20%、300万円を超える部分が30%です。調査の事前通知前に自主的に申告した場合は一律5%です。
Q.無申告加算税が免除されるのはどのような場合ですか。
A.期限内申告書を提出しなかったことに正当な理由があると認められる場合と、法定申告期限から1か月以内に自主的に期限後申告を行い、税額全額を法定納期限までに納付し、過去5年間に無申告加算税等を課されていない場合です。
Q.申告義務を知らなかった場合は正当な理由になりますか。
A.なりません。国税庁の事務運営指針では、正当な理由として取り扱うのは災害や交通・通信の途絶など真にやむを得ない事由に限られ、税法の不知や誤解、事実誤認によるものは該当しないとされています。
Q.無申告を繰り返すとどうなりますか。
A.調査後の期限後申告等の日の前日から5年前までの間に同じ税目で無申告加算税や重加算税を課されている場合、また前年および前々年に無申告加算税等を課されている場合には、納付すべき税額の10%が加算されます。
Q.無申告加算税と重加算税はどう違いますか。
A.無申告加算税は期限内に申告しなかったこと自体に課されます。これに対し重加算税は、事実を隠蔽または仮装して申告しなかった場合に無申告加算税に代えて40%の割合で課され、一定の場合はさらに10%が加算されます。
Q.無申告加算税のほかに延滞税もかかりますか。
A.かかります。期限後申告により納める税金は申告書を提出した日が納期限となり、法定納期限の翌日から納付日までの期間に応じた延滞税を併せて納付します。令和8年中の割合は納期限の翌日から2か月までが年2.8%、それ以後が年9.1%です。


