土地・建物や株式を売却して利益が出たとき、「所得税はなんとなく分かるが、住民税がいくらかかるのか分からない」「住民税はいつ請求されるのか」と不安に感じる方は少なくありません。この記事は、不動産や株式を売却した個人の資産家・事業者の方に向けて、譲渡所得にかかる住民税の税率と計算方法、課税される時期を整理したものです。
結論から申し上げると、譲渡所得の住民税の税率は、土地・建物の長期譲渡所得が5%、短期譲渡所得が9%、株式等の譲渡所得が5%です。いずれも給与所得などとは分けて計算する分離課税で、所得税・復興特別所得税と合わせた税率は、土地・建物の長期譲渡所得で20.315%、短期譲渡所得で39.63%となります。以下で、計算の流れと実務での注意点を順にご説明します。
譲渡所得の住民税の税率一覧
譲渡所得の住民税は、売った資産の種類と所有期間によって税率が変わります。まずは全体像を確認しておきましょう。
| 区分 | 住民税の税率 |
|---|---|
| 土地・建物の長期譲渡所得 (所有期間5年超) |
5% |
| 土地・建物の短期譲渡所得 (所有期間5年以下) |
9% |
| 上場株式等に係る譲渡所得等 | 5% |
| 一般株式等に係る譲渡所得等 | 5% |
土地・建物の長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率
土地や建物を売ったときは、売った年の1月1日現在の所有期間が5年を超えるかどうかで長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれます。長期譲渡所得の税額は課税長期譲渡所得金額に対して所得税15%(住民税5%)で計算します国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算。
一方、短期譲渡所得の税額は課税短期譲渡所得金額に対して所得税30%(住民税9%)です国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算。所有期間が5年以下かどうかで住民税の税率も5%と9%に分かれ、税負担はおよそ2倍になります。売却の時期を検討している段階であれば、所有期間の判定を先に確認しておくことが大切です。
株式等の譲渡所得の税率
株式や投資信託などの株式等を売ったときの所得は、「上場株式等に係る譲渡所得等」と「一般株式等に係る譲渡所得等」に分けて、他の所得と区分して計算する申告分離課税です。税率はどちらも20%(所得税15%、住民税5%)で、所有期間による長期・短期の区別はありません国税庁 No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)。
なお、上場株式等と一般株式等(非上場株式など)はそれぞれ別々の申告分離課税のため、一方の譲渡損失を他方の譲渡所得等から差し引くことは原則としてできません。非上場の自社株を売却した年に上場株式の損失があっても、そのまま差し引けるわけではない点にご注意ください。
関連コラム特定口座の譲渡損失は配当所得と損益通算・繰越できる?条件を解説▸
所得税・復興特別所得税を含めた合計税率
譲渡所得には、所得税と住民税のほかに復興特別所得税がかかります。復興特別所得税は、平成25年から令和29年までの各年分について、基準所得税額に2.1%を掛けて計算し、所得税と併せて申告・納付します。そのため、所得税の税率に1.021を掛けた率に住民税の税率を足したものが、実際の合計税率になります。
| 区分 | 所得税・復興特別所得税・ 住民税の合計税率 |
|---|---|
| 土地・建物の長期譲渡所得 | 20.315% |
| 土地・建物の短期譲渡所得 | 39.63% |
| 株式等の譲渡所得等 | 20.315% |
なお、国税庁のパンフレットでは、確定申告の際に基準所得税額に2.1%を掛けて計算する税について、令和9年分以後は防衛特別所得税及び復興特別所得税になると案内されています国税庁 土地や建物を売ったとき。住民税の5%・9%という税率そのものは、この見直しの対象ではありません。
マイホームを売ったときの軽減税率
自分が住んでいる家と敷地を売った場合で、売った年の1月1日現在で所有期間が10年を超えるときは、3,000万円の特別控除の特例を適用した後の課税長期譲渡所得金額に、軽減された税率を使えます。住民税は次のとおりです。
| 課税長期譲渡所得金額のうち 6,000万円までの部分 |
所得税10%・住民税4% |
|---|---|
| 課税長期譲渡所得金額のうち 6,000万円を超える部分 |
所得税15%・住民税5% |
マイホームの特例は、居住の状況や売った時期などについて細かな要件が定められています。住まなくなった家の売却を検討している方は、次の記事もあわせてご覧ください。
関連コラム住んでいない家の売却でかかる税金|3000万円控除と2つの特例▸
分離課税となる資産と総合課税となる資産
「譲渡所得」とひとことで言っても、売った資産によって計算のしかたが変わります。住民税の税率が5%・9%となるのは、分離課税の対象になる土地・建物と株式等です。
分離課税の対象となる土地・建物と株式等
土地や建物を売ったときの譲渡所得は、事業所得や給与所得などの所得と分けて計算する分離課税です。所有期間は、取得の日から引き続き所有していた期間をいい、長期譲渡所得は譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの、短期譲渡所得は5年以下のものと区分されます国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)。
分離課税なので、事業や給与の所得が多い方でも、土地・建物の譲渡所得の住民税は5%または9%で計算します。逆に、土地・建物の譲渡で損失が出ても、原則として事業所得や給与所得と相殺することはできません。
車などを売ったときの課税関係
「車を売ったら譲渡所得の住民税がかかるのか」というご質問もよくいただきます。家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産を売ったことによる所得は、所得税が課税されない譲渡所得とされています国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法。ただし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで1個または1組の価額が30万円を超えるものは、この非課税の対象から除かれます。
一方、生活用動産に当たらない車や機械器具など、土地・建物や株式等以外の資産を売った場合は、給与所得や事業所得などと合わせて計算する総合課税の譲渡所得になります。総合課税の譲渡所得は、その年の譲渡益の合計額から最高50万円の特別控除を差し引き、所有期間が5年を超える長期譲渡所得はその2分の1が課税の対象です国税庁 No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)。この場合の住民税は、分離課税のような5%・9%の固定税率ではなく、他の所得と合わせた所得をもとに計算されます。
譲渡所得の住民税の計算方法
土地・建物の譲渡所得の住民税は、次の順番で計算します。所得税と住民税は、同じ課税譲渡所得金額に別々の税率を掛けて求めます。
収入金額・取得費・譲渡費用の考え方
計算に使う3つの金額は、それぞれ次のような内容です。
| 譲渡価額(収入金額) | 土地や建物の売却代金など |
|---|---|
| 取得費 | 買い入れたときの購入代金や購入手数料などに、その後の改良費・設備費を加えた額。建物は所有期間中の減価償却費相当額を差し引く |
| 譲渡費用 | 仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、借家人への立退料、建物の取壊し費用など、売るために直接かかった費用 |
| 特別控除額 | 通常はないが、マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除など各種の特例がある |
実務で見落としが多いのは、建物の取得費から減価償却費相当額を差し引く点です。購入価格そのままで計算すると取得費が大きくなりすぎ、住民税を含めた税額を少なく見積もってしまいます。
取得費が分からないときの概算取得費5%
先祖伝来の土地や、買い入れた時期が古く売買契約書が残っていない土地建物では、取得費が分からないことがあります。このような場合は、売った金額の5%相当額を取得費とすることができます。また、実際の取得費が売った金額の5%相当額を下回る場合も、5%相当額を取得費にできます国税庁 No.3258 取得費が分からないとき。
概算取得費は手軽な反面、売却代金の95%がそのまま譲渡益として残る計算になるため、住民税の負担も大きくなります。購入当時の売買契約書や通帳の記録、登記の資料などから実際の取得費を確認できないか、先に探してみることをおすすめします。
相続した土地建物の取得費と所有期間
相続や贈与によって取得した土地建物を売った場合の取得費は、被相続人や贈与者がその土地建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などをもとに計算します。取得の時期も被相続人や贈与者のものがそのまま引き継がれるため、親が取得した時から、売った年の1月1日までの期間で長期か短期かを判定します国税庁 No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期。
相続税の申告で使った評価額が取得費になるわけではない点は、誤解が多いところです。なお、取得費が分からず概算取得費5%を使う場合は、相続人が支払った登記費用などを取得費に含めることはできません。
関連コラム相続した不動産の売却にかかる税金|譲渡所得税の計算と2つの特例▸
取得費が分からない土地を売った場合の計算例
ここでは、ご相談の多いケースをもとに、住民税を含めた税額を具体的に計算してみます。数字は説明のための設例です。
設例の前提条件
| 売った資産 | 父から相続した土地(父が数十年前に取得) |
|---|---|
| 譲渡価額 | 5,000万円 |
| 取得費 | 売買契約書が見つからず不明 |
| 譲渡費用 | 仲介手数料など170万円 |
| 所有期間 | 父の取得時から通算して5年超(長期譲渡所得) |
| 特別控除 | 適用なし |
所得税・復興特別所得税・住民税の内訳
取得費が分からないので、概算取得費として譲渡価額の5%を使います。
この設例では、住民税だけで229万円になります。実際の申告では所得金額や税額の端数処理がありますので、目安としてご覧ください。
実際の取得費が分かった場合との比較
同じ土地について、父の購入代金1,500万円が売買契約書で確認できたとします。この場合の課税長期譲渡所得金額と住民税は次のとおりです。
| 取得費の扱い | 住民税額 |
|---|---|
| 概算取得費(譲渡価額の5%)を使う場合 | 229万円 |
| 実際の取得費1,500万円が分かる場合 | 166万5,000円 |
住民税だけで62万5,000円の差が生じ、所得税・復興特別所得税を含めるとさらに差は広がります。実務では、売却前に取得費の資料を探すだけで、税負担が大きく変わることがあります。
譲渡所得の住民税が課税される時期と申告
「売却代金を受け取ったら、すぐに住民税を納めるのか」と心配される方もいらっしゃいます。土地・建物の譲渡所得の住民税は、売ったときにその場で納めるものではなく、確定申告をした後に課税される流れです。
確定申告の時期
譲渡所得の申告は、資産を譲渡した日の属する年の翌年の2月16日から3月15日の間に行います。土地、建物や株式等の譲渡所得がある方は、確定申告書に分離課税用の「申告書第三表」と「譲渡所得の内訳書」などを添えて、他の所得と一緒に申告します国税庁 No.3102 譲渡所得の申告期限。
関連コラム確定申告書はどこでもらえる?税務署・国税庁HP・コンビニでの入手方法▸
住民税の申告と税額の通知
所得税等の確定申告書を提出した方は、その確定申告書等が地方公共団体へデータで送信されるため、改めて住民税の申告書を提出する必要はありません。住民税の税額は、確定申告書に記載された所得の金額などをもとに、都道府県や市区町村が計算して納税者に通知します国税庁 手順6 住民税、事業税に関する事項を記入する。
つまり、売却した年の住民税は、翌年の確定申告の内容をもとに、翌年度の住民税として課税されます。納付の時期や方法は、お住まいの市区町村から届く通知でご確認ください。売却の翌年は所得税の納付に加えて住民税の負担も重なるため、売却代金の一部を納税資金として残しておくことが大切です。
特定口座(源泉徴収あり)で株式を売った場合
上場株式等を特定口座で売り、源泉徴収を選択している場合は、譲渡のつど、譲渡益に15.315%(他に住民税5%)の税率で計算した所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されます。この源泉徴収口座内の譲渡所得は、申告不要とすることもできます国税庁 No.1476 特定口座制度。
ただし、他の口座の譲渡損益と相殺する場合や、上場株式等の譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例を使う場合は、確定申告が必要です。
譲渡所得の住民税で注意したい点
最後に、実務で住民税の負担に影響しやすいポイントを確認しておきます。
所有期間は売った年の1月1日現在で判定
所有期間は、実際に売った日ではなく、売った年の1月1日現在で判定します。例えば、令和8年中に売った場合は、取得が令和2年12月31日以前であれば長期譲渡所得、令和3年1月1日以後であれば短期譲渡所得です。取得から5年を少し過ぎた時期に売っても、1月1日時点で5年以下なら住民税は9%になります。
相続税を払った財産の取得費加算
相続や遺贈で取得した土地、建物、株式などを、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売った場合は、支払った相続税額のうち一定金額を取得費に加算できる特例があります国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例。取得費が増えれば課税譲渡所得金額が減り、住民税も少なくなります。相続した不動産の売却時期を考えるときは、この期限も確認しておきたいところです。
土地・建物の譲渡損失の扱い
土地・建物の譲渡で損失が出ても、原則として給与所得や事業所得などとの損益通算はできません。マイホームを売ったときには損失を控除できる特例がありますが、要件が細かく定められています。損失が出たから申告しなくてよいと判断する前に、特例の対象になるかを確認しましょう。
譲渡所得の住民税は、取得費の資料の有無、所有期間、相続との関係、特例の使い方によって金額が大きく変わります。売却前の段階で試算しておくと、納税資金の準備もしやすくなります。具体的なケースは、まずは税理士にご相談ください。
まとめ
譲渡所得の住民税は、土地・建物の長期譲渡所得が5%、短期譲渡所得が9%、株式等の譲渡所得が5%です。所得税・復興特別所得税と合わせると、長期譲渡所得と株式等は20.315%、短期譲渡所得は39.63%になります。
- 土地・建物と株式等の譲渡所得は、他の所得と分けて計算する分離課税
- 長期・短期は売った年の1月1日現在の所有期間(5年超かどうか)で判定
- 取得費が分からないときは、売った金額の5%を概算取得費にできる
- 相続した土地建物は、被相続人の取得費と取得の時期を引き継ぐ
- 住民税は確定申告の内容をもとに、翌年度の住民税として市区町村などが計算・通知
- 通勤用の自動車などの生活用動産の売却は課税されない
同じ売却でも、取得費の確認や特例の適用によって住民税を含めた税負担は変わります。売却を決める前の試算や確定申告の進め方に迷われたときは、まずは税理士にご相談ください。
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参考文献
- 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算
- 国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算
- 国税庁 No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
- 国税庁 土地や建物を売ったとき
- 国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
- 国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法
- 国税庁 No.3152 譲渡所得の計算のしかた(総合課税)
- 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき
- 国税庁 No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期
- 国税庁 No.3102 譲渡所得の申告期限
- 国税庁 手順6 住民税、事業税に関する事項を記入する
- 国税庁 No.1476 特定口座制度
- 国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
譲渡所得の住民税のよくある質問まとめ
Q.譲渡所得の住民税は何%ですか?
A.土地・建物の長期譲渡所得(売った年の1月1日現在で所有期間5年超)は5%、短期譲渡所得(5年以下)は9%、株式等の譲渡所得は5%です。所得税・復興特別所得税と合わせると、長期譲渡所得と株式等は20.315%、短期譲渡所得は39.63%になります。
Q.譲渡所得の住民税はいつ課税されますか?
A.売った年の翌年2月16日から3月15日までに行う確定申告の内容をもとに、都道府県や市区町村が税額を計算して通知します。売却した年の所得は翌年度の住民税として課税されるため、納付の時期や方法は市区町村からの通知で確認してください。
Q.取得費が分からないときはどう計算しますか?
A.売った金額の5%相当額を取得費(概算取得費)とすることができます。実際の取得費が売った金額の5%を下回る場合も同じです。ただし譲渡益が大きくなりやすいため、売買契約書などで実際の取得費を確認できないか先に探すことをおすすめします。
Q.車を売ったときも譲渡所得の住民税はかかりますか?
A.通勤用の自動車など生活に通常必要な動産を売ったことによる所得は課税されません。生活用動産に当たらない車などを売った場合は総合課税の譲渡所得となり、最高50万円の特別控除を差し引いたうえで、他の所得と合わせて住民税が計算されます。
Q.特定口座(源泉徴収あり)で株を売った場合も申告が必要ですか?
A.源泉徴収口座では、譲渡のつど所得税及び復興特別所得税15.315%(他に住民税5%)が源泉徴収され、申告不要とすることができます。他の口座の損益と相殺する場合や譲渡損失の繰越控除を使う場合は確定申告が必要です。
Q.確定申告をしたら住民税の申告書も別に出す必要がありますか?
A.所得税等の確定申告書を提出した方は、その内容が地方公共団体へデータで送信されるため、改めて住民税の申告書を提出する必要はありません。


