この記事は、法人の経理担当者・個人事業主・経営者の方に向けて、更正請求書(更正の請求)の仕組みと実務手順を整理したものです。結論から申し上げます。税金を多く申告してしまった場合に取り戻す手続は、修正申告ではなく「更正の請求」です。逆に税額が少なすぎた場合が修正申告であり、両者は方向が正反対です。
そして、更正の請求ができる期間は原則として法定申告期限から5年以内です国税庁 A1-2、H1-1 所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続。経費の計上漏れ、控除の適用漏れ、二重計上に気づいたとき、期限内であればまだ取り返せます。本記事では、要件・期限・更正請求書の書き方・添付書類・提出後の流れまでを順に解説します。
更正の請求とは
更正の請求とは、すでに提出した申告書に記載した税額等が実際より多かった場合に、税務署長に対して正しい額への訂正(更正)を求める手続です国税庁 申告に誤りがあった場合など。根拠は国税通則法第23条で、条文上も「更正請求書」という名称が使われていますe-Gov法令検索 国税通則法第23条。
請求できるのは、単に申告内容が違っていた場合ではなく、次の3つのいずれかに当たる場合です。納付すべき税額が過大であるとき、純損失等の金額が過少であるとき(記載がなかったときを含む)、還付金の額に相当する税額が過少であるとき(記載がなかったときを含む)です。所得金額の増減や所得控除の追加があっても、最終的な税額または純損失の金額に異動がない場合は更正の請求はできません国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき。
法人税でも枠組みは同じで、納付すべき税額が過大なとき、翌期へ繰り越す欠損金額が過少なとき、還付金額が過少なときなどに更正を求めます国税庁 C1-12、H1-2 法人税及び地方法人税の確定申告に係る税額等についての更正の請求。消費税及び地方消費税についても、法人用の更正の請求手続が用意されています国税庁 D1-29、H1-5 消費税及び地方消費税の更正の請求手続(法人用)。
修正申告との違い
もっとも混同されるのが修正申告との違いです。税額が少なすぎたときは修正申告、多すぎたときは更正の請求と覚えると間違えません。誤っている申告額を自発的に訂正しない場合には、税務署長が正しい額に更正します。
| 更正の請求 | 修正申告 |
|---|---|
| 申告した税額等が実際より多かったとき | 申告した税額等が実際より少なかったとき |
| 更正請求書を提出し、訂正を「求める」手続 | 納税者自身が正しい額へ「訂正する」手続 |
| 税務署が内容を検討し、認められれば減額更正されて納め過ぎた税金が還付される | 提出日が納期限となり、その日に新たな税額を納付する |
| 税額を減らす方向の手続で、加算税は生じない | 過少申告加算税や延滞税が生じる場合がある |
修正申告の側の負担も押さえておきましょう。税務署からの調査の事前通知の前に自主的に修正申告をした場合であれば過少申告加算税はかかりません。事前通知の後で、かつ調査による更正を予知する前の修正申告であれば新たに納める税金の5%、当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は10%です。調査を受けた後の修正申告や更正を受けた場合は10%、同じく超過部分は15%となります。
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更正の請求ができる要件と期限
更正の請求は、期限を1日でも過ぎると原則として受け付けられません。期限は「原則の5年」と「後発的事由の2か月」の2本立てで理解してください。
原則は法定申告期限から5年以内
国税に関する法律の規定に従っていなかった場合、またはその計算に誤りがあった場合は、法定申告期限から5年以内に提出します。確定申告の必要のない方が還付を受けるための申告をしている場合は、その提出した日から5年以内です。提出期限が土曜日・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。
法人税の場合も、国税通則法第23条第1項に基づく請求は、請求の基になる申告の法定申告期限から5年以内です。申告期限の延長申請に対する承認がある場合は、その承認申告期限が起点となります。
後発的事由による2か月以内の請求
5年を過ぎていても請求できる例外が後発的事由です。申告等の計算の基礎とした事実が、その事実に係る判決またはこれと同一の効力を有する和解により、申告等の計算の基礎としたところと異なることが確定した場合などが該当し、それらの事実が生じた日の翌日から起算して2か月以内に提出します。自分に帰属するとされていた所得が他の者に帰属するものとして、その他の者に係る国税の更正または決定があった場合も同様です。
法人税では、修正申告や更正・決定に伴って後の事業年度の税額が過大となる場合にも、その修正申告書を提出した日または更正決定の通知を受けた日の翌日から起算して2か月以内という別枠が定められています。
法人税の欠損金・移転価格税制の特例期間
法人税には、5年より長い特例期間があります。純損失等の金額(翌期へ繰り越す欠損金額)に係る更正の請求のうち法人税に係るものは、平成30年4月1日以後に開始した事業年度に係るもので10年以内です(平成30年3月31日までに開始した事業年度に係るものは9年以内)。また、租税特別措置法第66条の4第26項(移転価格税制)に基づく請求は、法定申告期限から7年以内とされています(令和2年3月31日以前に開始した事業年度または課税事業年度分は6年以内)。
| 原則の請求 | 法定申告期限から5年以内 |
|---|---|
| 後発的事由による 請求 |
事実に該当した日の翌日から起算して2か月以内 |
| 法人の欠損金額に 係る請求 |
平成30年4月1日以後開始事業年度は10年以内(それ以前に開始した事業年度は9年以内) |
| 移転価格税制に 係る請求 |
法定申告期限から7年以内(令和2年3月31日以前開始事業年度分は6年以内) |
更正請求書の書き方
更正請求書は、書式を埋めるだけの書類ではありません。条文で記載すべき事項が定められており、その中身が審査の対象になります。
更正請求書の記載事項
国税通則法第23条第3項では、更正の請求をしようとする者は、請求に係る更正後の課税標準等または税額等、更正の請求をする理由、当該請求をするに至った事情の詳細、請求に係る更正前の納付すべき税額および還付金の額に相当する税額その他参考となるべき事項を記載した更正請求書を税務署長に提出しなければならない、と定めています。
法人税の更正請求書では、「この請求前の金額(円)」欄に請求の基になる確定申告書(更正または決定があった場合は更正決定通知書)に記載された該当項目の金額を移記し、「更正の請求金額(円)」欄には請求に基づいて更正がなされた場合の金額を確定申告書の記載方法に準じて計算のうえ記載します。あわせて「更正の請求をする理由等」欄を記載します。
実務で差が出るのは、この理由欄と事情の詳細です。「経費計上漏れのため」だけでは、税務署側で事実関係を追えません。どの勘定科目のいつの取引か、金額はいくらか、なぜ当初申告で漏れたのかを、添付する証拠書類と1対1で対応するように書くのが実務での基本です。
様式の入手先とe-Taxでの提出
所得税については、国税庁ホームページ「確定申告書等作成コーナー」の「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」で更正の請求書等を作成のうえ、e-Taxにより提出します。書面で作成して持参または送付により提出することもできます。画面の案内に従って金額等を入力すると税額などが自動計算されます。
法人税は取扱いが異なり、e-Taxソフトで更正の請求書を作成・提出することとされています。書面で作成する場合は更正の請求書を1部、提出先に持参または送付します。提出先はいずれも納税地を所轄する税務署長です。
なお、令和4年12月31日以後に課税期間が終了する所得税に係る更正の請求書および修正申告書については、更正前または修正前の課税標準等の記載が不要となっています。
添付書類
更正の請求で最も重要なのが添付書類です。所得税では、更正の請求の理由が一定期間の取引に関する事実に基づくものである場合は、その取引の記録等に基づき請求の理由の基礎となる事実を証明する書類を、それ以外の場合には請求の理由の基礎となる事実を証明する書類を添付します。法人税でも、取引の記録等に基づいて請求の理由の基礎となる事実を証明する書類の添付が求められます。
国税庁は具体例も示しています。事業所得の必要経費(地代家賃:事務所の賃借料)について12月分の計上漏れがあり事業所得の金額が過大となっていた場合は、青色申告決算書(または収支内訳書)、帳簿書類(地代家賃部分)の写し、事務所の賃借料を支払った領収書の写しなどを添付します。国民年金保険料の記載漏れで社会保険料控除が過少となっていた場合は、控除証明書等の支払金額を証明する書類を添付します。
また、変動所得または臨時所得のある方は「変動所得・臨時所得の平均課税の計算書」など、請求額を計算するにあたり使用した計算明細書等がある場合は、その書類も提出します。e-Taxにより提出する場合は、本人確認書類の提示または添付は不要です。
提出後の流れ
更正請求書を出せば自動的に還付されるわけではありません。税務署長は、更正の請求があった場合には、その請求に係る課税標準等または税額等について調査し、更正をし、または更正をすべき理由がない旨をその請求をした者に通知するとされています。つまり、認められない場合もあり、その場合は「更正をすべき理由がない旨の通知」が届きます。
請求内容が正当と認められたときは減額更正が行われ、その内容が請求者に通知されたうえで納め過ぎた税金が還付されます。審査基準としても、請求に係る税額等について調査し、請求が適正であるかを審査するとされています。
結果に納得できない場合の手当てもあります。処分の通知を受けた日の翌日から起算して3か月以内に、その処分をした税務署長に対して再調査の請求、または国税不服審判所長に対して審査請求をすることができます。
資金繰りの面で見落としやすいのが徴収の扱いです。更正の請求があった場合においても、税務署長はその請求に係る納付すべき国税の徴収を猶予しません(税務署長が相当の理由があると認めるときは、その全部または一部の徴収を猶予することができます)。請求中であっても、当初申告に基づく納税義務はそのまま残ると考えて資金を確保しておくべきです。
還付加算金
減額更正により還付を受ける際には、還付加算金が付く場合があります。還付加算金の割合は、延滞税と同様に市中金利を基礎として年ごとに定められる仕組みで、近年は低い水準で推移しています。延滞税の側は、令和8年1月1日から令和8年12月31日までの期間について、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以後が年9.1%とされています国税庁 No.9205 延滞税について。金額の大きな法人の還付では、還付加算金の有無と対象期間を着金額の検算に含めておきます。
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実務での注意点
実務で更正の請求がうまくいかない原因は、条文の理解不足よりも証拠書類の不足にあります。国税庁の手続案内が「取引の記録等に基づいて請求の理由の基礎となる事実を証明する書類」と繰り返し求めているとおり、更正の請求は「払い過ぎたはずだ」という主張ではなく、事実の立証を求める手続です。帳簿・契約書・領収書・入出金記録がそろわない論点は、請求前に社内で集め直すところから始めるのが結果的に近道です。
実務では、更正の請求が減額を求める手続である以上、税務署側で内容の確認が行われることを前提に組み立てます。国税通則法上も、請求があれば調査したうえで更正するか更正をすべき理由がない旨を通知する建て付けになっており、資料の照会や説明を求められる場面は珍しくありません。請求書の理由欄と添付資料が食い違っていると、その説明だけで時間を要します。
もう一点、方向を取り違えないことも重要です。1つの申告の中に、税額が増える論点(売上計上漏れ)と減る論点(経費計上漏れ)が同時に見つかることがあります。この場合に更正の請求だけを出しても、増える側は解決しません。修正申告が必要な論点が混ざっていないかを、着手前に全体で洗い出しておきます。
なお、更正の請求を検討する局面は、税務調査の対象期間と重なることが多くあります。個別のケースについては判断が分かれることもありますので、まずは税理士にご相談ください。
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まとめ
更正請求書は、納め過ぎた税金を取り戻すための正式な手続書類です。要点を整理します。
- 税額が多すぎたときは更正の請求、少なすぎたときは修正申告と、方向で使い分ける
- 期限は原則として法定申告期限から5年以内、後発的事由は事実が生じた日の翌日から2か月以内
- 法人の欠損金額に係る請求は10年以内、移転価格税制に係る請求は7年以内という特例がある
- 更正請求書には、更正後の課税標準等・請求の理由・請求に至った事情の詳細等を記載する
- 取引の記録等に基づき、請求の理由の基礎となる事実を証明する書類の添付が必須
- 提出後は税務署が調査し、減額更正または更正をすべき理由がない旨の通知が届く
- 請求中でも当初の国税の徴収は猶予されないため、資金繰りは分けて考える
期限が近い場合や、税務調査と並行して検討する場合は、早めに専門家に相談したうえで資料の整備から着手してください。
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参考文献
- 国税庁 A1-2、H1-1 所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続
- 国税庁 C1-12、H1-2 法人税及び地方法人税の確定申告に係る税額等についての更正の請求
- 国税庁 D1-29、H1-5 消費税及び地方消費税の更正の請求手続(法人用)
- 国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき
- 国税庁 申告に誤りがあった場合など
- 国税庁 No.9205 延滞税について
- e-Gov法令検索 国税通則法第23条
更正の請求のよくある質問まとめ
Q. 更正の請求と修正申告はどちらを使えばよいですか。
A. 申告した税額等が実際より多かったときは更正の請求、少なかったときは修正申告です。更正の請求は更正請求書を税務署長に提出して訂正を求める手続で、修正申告は納税者自身が正しい額へ訂正する手続です。
Q. 更正の請求の期限は何年ですか。
A. 原則として法定申告期限から5年以内です。後発的事由による場合は、その事実が生じた日の翌日から起算して2か月以内となります。法人の欠損金額に係る請求は10年以内、移転価格税制に係る請求は7年以内の特例があります。
Q. 更正請求書には何を記載しますか。
A. 国税通則法第23条第3項により、更正後の課税標準等または税額等、更正の請求をする理由、請求をするに至った事情の詳細、請求に係る更正前の納付すべき税額および還付金の額に相当する税額その他参考となるべき事項を記載します。
Q. 更正の請求に添付書類は必要ですか。
A. 必要です。取引の記録等に基づいて請求の理由の基礎となる事実を証明する書類を添付します。経費の計上漏れであれば決算書、帳簿書類の写し、領収書の写しなどが該当します。
Q. 更正の請求はe-Taxで提出できますか。
A. できます。所得税は確定申告書等作成コーナーの更正の請求書・修正申告書作成コーナーで作成しe-Taxで提出します。法人税はe-Taxソフトで作成・提出することとされており、書面の場合は1部を所轄税務署長へ提出します。
Q. 更正の請求が認められなかった場合はどうなりますか。
A. 税務署長から更正をすべき理由がない旨の通知が届きます。処分の通知を受けた日の翌日から起算して3か月以内に、処分をした税務署長への再調査の請求、または国税不服審判所長への審査請求ができます。


