この記事は、個人事業主・フリーランスの方と、小規模な法人の経営者の方に向けて、ご自身のランチ代を経費にできるかどうかを整理したものです。「毎日の昼食代も仕事のうちと考えてよいのか」「取引先とのランチは会議費なのか交際費なのか」と迷う方は少なくありません。
結論からお伝えします。自分ひとりで食べる昼食代は、原則として経費になりません。一方で、取引先との打ち合わせを兼ねたランチは、業務のための支出として経費(法人では会議費や交際費)になり得ます。また、法人が社長個人の昼食代を負担すると、役員給与(経済的利益)として扱われるおそれがある点に注意が必要です。以下、国税庁の公表資料をもとに判断の基準を順にご説明します。
ランチ代を経費にできるかの結論
ランチ代が経費になるかどうかは、金額の大小よりも「誰と、何のために食べたか」で決まります。まずは場面ごとの扱いを一覧でご確認ください。
| 自分ひとりで食べる昼食 | 原則として経費にならない(生活費=家事費の扱い) |
|---|---|
| 取引先・顧客との 打ち合わせを兼ねたランチ |
業務上の費用として経費になり得る(法人では会議費または交際費等に区分) |
| 法人が社長個人の 昼食代を負担する場合 |
役員に対する経済的利益として給与課税・損金不算入のおそれがある |
| 従業員とのランチ・ 従業員への食事補助 |
福利厚生費になるかは要件次第(別記事で詳しく解説) |
同じ「昼食」でも、場面によって税務上の扱いがまったく異なります。ここから先は、個人事業主の場合と法人の場合に分けて見ていきます。
個人事業主の昼食代と家事費
自分ひとりの昼食代が経費にならない理由
個人事業主の必要経費になるのは、売上を得るために直接かかった費用や、販売費・一般管理費など業務上の費用です。一方で、家事上の費用は必要経費にならないとされています国税庁 No.2210 必要経費の知識。
ひとりで食べる昼食は、仕事をしている日であっても、食事そのものは生きていくための生活費です。「仕事の合間に食べたから」「作業場の近くで食べたから」という理由だけでは業務上の費用にはならず、家事費として扱われるのが原則です。
家事関連費と業務上必要な部分の区分
1つの支出に家事上の部分と業務上の部分が混ざっているものを家事関連費といいます。家事関連費のうち必要経費にできるのは、業務の遂行上直接必要だったことが明らかに区分できる部分に限られます。
所得税基本通達では、業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかで判定し、50%以下であっても必要な部分を明らかに区分できればその部分を必要経費にしてよい、と示されています国税庁 〔家事関連費(第1号関係)〕。昼食代でいえば、「誰と、どの案件のために」食事をしたのかを記録で説明できるかどうかが分かれ目になります。
取引先との打ち合わせランチの扱い
取引先や見込み客と打ち合わせをしながら昼食をとった場合、その費用は業務上の費用として必要経費に算入できる可能性があります。ポイントは、打ち合わせの相手・目的が具体的に説明できることです。
反対に、同業の友人と近況を話しながら食べたランチや、家族との外食は、仕事の話題が出たとしても業務上の必要性を説明しにくく、家事費と判断されやすくなります。相手と目的を領収書の余白や会計ソフトの摘要に残しておくと、後から説明しやすくなります。
法人における取引先とのランチ代(会議費と交際費)
法人の場合、取引先とのランチ代は「交際費等」に当たるかどうかで、法人税の計算が変わります。交際費等とは、得意先や仕入先など事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答などのために支出する費用をいい、原則として損金不算入とされています国税庁 No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算。ただし、次の費用は交際費等から除かれます。
会議費になる昼食の範囲
会議に関連して、茶菓や弁当などの飲食物を出すために通常かかる費用は、交際費等から除かれます。措置法通達では、会議に際して社内または通常会議を行う場所で出される通常の昼食の程度を超えない飲食物の費用は、原則としてこの会議費に当たるとされ、その「会議」には来客との商談や打合せも含まれると明記されています国税庁 第1款 交際費等の範囲。
また同じ通達の注書きでは、この取扱いは1人当たりの金額が後述の10,000円基準を超える場合にも適用があるとされています。会議費になるかどうかは、金額だけでなく「実際に会議・打合せとしての実態があり、昼食の程度にとどまっているか」で判断されます。
1人当たり10,000円以下の飲食費
会議費に当たらない接待の飲食であっても、飲食に参加した人数で割った1人当たりの金額が10,000円以下であれば、交際費等から除かれます。なお、令和6年3月31日以前に支出した飲食費の基準額は5,000円以下でした。この基準は、社内の役員・従業員やその親族だけで行う飲食には使えません。
この取扱いを受けるには、次の事項を記載した書類を保存しておく必要があります。
- 飲食等のあった年月日
- 参加した得意先・仕入先など事業関係者の氏名または名称と、その関係
- 飲食等に参加した人数
- 費用の額、飲食店の名称と所在地
- その他、飲食費であることを明らかにするために必要な事項
10,000円の判定は、法人が採用している消費税の経理方式(税抜経理または税込経理)に応じた金額で行います。
交際費等に当たる場合の損金不算入額
1人当たり10,000円を超えるなどして交際費等に当たる場合でも、期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下である等の法人には、損金不算入額の計算に特例があります。次のいずれかの金額を損金不算入額とします。
- 接待飲食費(社内の役員・従業員等だけの飲食は除く)の50%を超える部分の金額
- 交際費等のうち、800万円にその事業年度の月数を乗じて12で割った金額(定額控除限度額)を超える部分の金額
小規模な法人であれば、取引先とのランチ代が直ちに税負担に直結するケースは多くありません。それでも、会議費・接待飲食費・その他の交際費等を区分して記録しておくことが、申告の前提になります。
社長の昼食代を会社が支払う場合の役員給与リスク
経済的利益として給与とみなされるケース
法人の経営者がいちばん気を付けたいのが、社長が自分ひとりで食べた昼食代を会社の経費として支払うケースです。法人税基本通達では、役員等のために個人的費用を負担した場合のその費用の額や、交際費等の名義で支給したもののうち法人の業務のために使用したことが明らかでないものは、役員に給与を支給したのと同じ経済的効果をもつ「経済的な利益」に当たると例示されています国税庁 第2款 経済的な利益の供与。
社長ひとりの昼食代は、個人事業主の場合と同じく本来は個人の生活費です。会社のカードや経費精算で支払っても、実態は「会社が社長の個人的な費用を肩代わりした」ことになり、役員への給与として扱われるおそれがあります。
定期同額給与に当たらない場合の損金不算入
法人が役員に支給する給与のうち、定期同額給与・事前確定届出給与・一定の業績連動給与のいずれにも当たらないものは、損金の額に算入されません。定期同額給与には「継続的に供与される経済的利益のうち、その額が毎月おおむね一定であるもの」も含まれますが国税庁 No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)、日によって店も金額も変わる昼食代は、毎月の額が一定とはいいにくいものです。
その結果、会社側では損金に算入できず、社長側では給与として所得税の課税対象になる、という二重の負担が生じる可能性があります。少額の積み重ねでも、税務調査で年単位にさかのぼって指摘されると金額は大きくなります。
関連コラム定期同額給与とは?損金算入の3要件と改定できる3つのタイミング|国税庁ルール▸
食事の現物支給の非課税要件と役員への適用
一方で、会社が弁当などの食事を現物で支給する場合には、役員・使用人のどちらであっても、次の2つの要件を満たせば経済的利益はないものとされます。法人税基本通達でも、所得税で経済的利益として課税されないもので、給与として経理していないものは給与として扱わないとされています。
- 役員・使用人から、食事の価額の50%相当額以上を実際に徴収していること
- 食事の価額から徴収した額を差し引いた残額が月額7,500円以下であること
この月額7,500円(改正前は月額3,500円)の非課税限度額は、令和8年4月1日以後に支給する食事について適用されます国税庁 食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて。ただし、食事を支給するのではなく現金で食事代を補助する場合は、深夜勤務者の夜食代の例外を除き、補助した全額が給与として課税されます国税庁 No.2594 食事を支給したとき。社長が自分で店を選んで食べた昼食代を会社が精算する形は、この現物支給の要件に当てはめにくい点に注意が必要です。
関連コラム2026年4月施行!食事補助と夜食代の所得税非課税枠の変更を解説▸
従業員とのランチ代の考え方
社長や事業主が従業員と一緒にランチをとり、その代金を事業の経費として支払う場合は、本記事の「自分ひとりの昼食代」とは別の論点になります。従業員への食事の提供が福利厚生費になるか、給与として課税されるかは、上で触れた現物支給の要件や支給の方法によって判断します。
なお、交際費等の10,000円基準は、社内の役員・従業員やその親族だけで行う飲食には使えません。従業員の食事代を会社が負担するときの要件や注意点は、次の記事で詳しくまとめています。
関連コラム会社が従業員の食事代を負担するときの注意点と経費にする条件▸
実務での判断例
取引先2名とのランチを法人で支払った例
資本金1,000万円の法人の社長が、取引先の担当者2名と新しい案件の打合せを兼ねてランチをとり、3名分で12,600円(税込経理)を会社が支払ったケースを考えます。
打合せの実態があり通常の昼食の程度にとどまるなら会議費、そうでなくても1人当たり10,000円以下なので、参加者・人数・店名などの記録を残せば交際費等から除かれます。実務では、領収書に相手先の会社名・氏名と打合せの内容を書き添えておくだけでも、後の説明がずっと楽になります。
社長がひとりで食べた昼食代を毎日精算していた例
同じ社長が、平日に会社近くでひとりで食べた昼食代1,000円を、毎月20日分、法人カードで支払っていたケースです。
この支出は業務のための飲食とは説明しにくく、社長の個人的費用を会社が負担したものとして、役員への経済的利益と判断されるおそれがあります。税務調査では、法人カードの明細から平日昼の少額の飲食がまとめて確認されることもあります。指摘を受けた場合、会社側の損金不算入と社長側の源泉所得税の両方が問題になり得るため、社長個人の昼食代は個人の財布から支払うのが基本です。
関連コラム法人カード 税務調査|私的利用・ポイントの取扱いを税理士が解説▸
ランチ代のような日常的な支出は、1件ずつの金額が小さいぶん、区分があいまいなまま処理が積み重なりがちです。ご自身の支出が会議費・交際費・役員給与のどれに当たるか判断に迷う場合は、帳簿を締める前の段階で確認しておくと安心です。
経費処理で残しておきたい記録
ランチ代を経費として処理する場合、税務調査などで説明を求められたときに答えられるよう、次の記録を残しておくことをおすすめします。
| 日付・店名・所在地 | 領収書やカード明細で確認できる状態にしておく |
|---|---|
| 同席者の氏名・会社名 | 取引先との関係(得意先、仕入先など)もあわせて記録する |
| 参加人数 | 1人当たり10,000円以下かどうかの判定に使う |
| 打合せの目的・案件名 | 業務上の必要性を説明する根拠になる |
| 勘定科目の区分 | 会議費・交際費・福利厚生費・役員給与のどれで処理したかを統一する |
記録は、領収書の裏面や余白へのメモ、会計ソフトの摘要欄など、続けやすい方法で構いません。大切なのは、後から見て「誰と、何のための食事だったか」が分かることです。
まとめ
ランチ代を経費にできるかどうかは、「誰と、何のために食べたか」で判断します。要点を振り返ります。
- 自分ひとりの昼食代は、個人事業主・社長のどちらでも原則として経費にならない
- 取引先との打ち合わせランチは業務上の費用になり得る。法人では会議費、1人当たり10,000円以下の飲食費、交際費等のいずれかに区分する
- 法人が社長個人の昼食代を負担すると、役員への経済的利益として給与課税・損金不算入のおそれがある
- 従業員への食事の支給は、現物支給の要件(令和8年4月1日以後は月額7,500円以下など)を確認する
- 相手・人数・目的を記録しておくことが、どの区分でも判断の前提になる
実際の取扱いは、支出の目的や会社の規程、帳簿の付け方によって変わります。区分に迷う支出がある場合や、これまでの処理に不安がある場合は、まずは税理士にご相談ください。
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参考文献
- 国税庁 No.2210 必要経費の知識
- 国税庁 〔家事関連費(第1号関係)〕
- 国税庁 No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算
- 国税庁 第1款 交際費等の範囲
- 国税庁 第2款 経済的な利益の供与
- 国税庁 No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)
- 国税庁 食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて
- 国税庁 No.2594 食事を支給したとき
ランチ代の経費処理のよくある質問まとめ
Q.個人事業主がひとりで食べたランチ代は経費になりますか?
A.原則として経費になりません。ひとりで食べる昼食は生活費である家事費に当たり、仕事の日であっても必要経費には算入できないのが基本です。
Q.取引先とのランチ代は会議費と交際費のどちらですか?
A.打合せの実態があり、通常の昼食の程度を超えない飲食であれば会議費として扱われるのが原則です。会議費に当たらない接待でも、1人当たり10,000円以下で必要事項を記録した書類を保存していれば交際費等から除かれます。
Q.社長の昼食代を会社のカードで払うと何が問題ですか?
A.社長個人の昼食代を会社が負担すると、役員への経済的利益として給与とみなされるおそれがあります。その場合、会社側では損金不算入、社長側では所得税の課税対象となる可能性があります。
Q.1人当たり10,000円の基準は税込と税抜のどちらで判定しますか?
A.法人が採用している消費税の経理方式に応じて判定します。税抜経理方式なら税抜金額、税込経理方式なら税込金額で判定します。
Q.会社が社長に弁当を支給する場合も非課税になりますか?
A.役員にも食事の現物支給の非課税要件が適用されます。令和8年4月1日以後に支給する食事は、本人が価額の50%以上を負担し、会社負担額が月額7,500円以下であれば課税されません。現金での食事代補助は原則として全額が給与になります。
Q.ランチ代を経費にするために何を記録すればよいですか?
A.日付・店名・所在地、同席者の氏名と会社名、参加人数、打合せの目的を残しておくと安心です。領収書の余白や会計ソフトの摘要欄に書き添える方法でも構いません。


