会社が従業員の食事代を負担したとき、経費にできるのか、給与として課税されるのかで迷うことはありませんか。結論からお伝えすると、昼食補助は「従業員が食事の価額の半分以上を負担」かつ「会社負担が月7,500円(税抜)以下」なら非課税の福利厚生費にでき、取引先との飲食は会議費や交際費、出張中の食事は旅費交通費などに分かれます。なお、この非課税枠は令和8年4月1日以後に支給する食事から月3,500円→月7,500円に、深夜勤務者への夜食代の現金支給も1食300円→650円に引き上げられました。この記事では、改正後の金額を前提に、勘定科目の選び方と経費にする条件をわかりやすくご説明しますね。
会社が従業員の食事代を負担するときの原則と注意点
会社が従業員の食事代を負担する場合、その費用が事業に必要なものであるかどうかが重要になります。ここでは、基本的な考え方と注意点について詳しく見ていきましょう。
原則として個人の食事代は経費にできない
従業員が個人的に食べる日々のランチ代などは生活費とみなされるため、原則として会社の経費にすることはできません。事業と直接関係のない費用を会社が負担した場合は、従業員への給与として扱われます。給与とみなされると所得税の課税対象になるため、注意が必要です。
経費にできる食事代の条件とは
食事代を経費として処理するためには、事業に関連する目的があることが条件です。例えば、取引先との打ち合わせを兼ねたランチや、全従業員を対象とした忘年会などが該当します。また、従業員の昼食代を会社が一部負担する場合でも、国税庁が示す金額や割合のルールを満たせば、福利厚生費として非課税で処理することが可能です。
役員や従業員に課税されるリスクに注意
食事代を会社が負担したものの、非課税の要件を満たしていないと判断された場合、その費用は現物給与として扱われます。現物給与になると、従業員や役員の所得税や住民税が増えるだけでなく、源泉徴収の漏れとして税務調査で指摘されるリスクがあります。ルールに基づいた適切な運用が求められます。
従業員の食事代を経費にするための主な勘定科目
会社が従業員の食事代を負担したとき、状況によって使う勘定科目が変わります。まずは一覧で全体像をつかみ、そのあとそれぞれの特徴と注意点を確認しましょう。
| 状況 | 勘定科目 |
|---|---|
| 全従業員対象の慰労会・所定の要件を満たす昼食補助・残業時の食事 | 福利厚生費 |
| 社内会議で出すお弁当や飲み物(通常要する程度のもの) | 会議費 |
| 取引先との1人10,000円以下の飲食(記録の保存が必要) | 会議費(交際費から除外) |
| 取引先との接待・1人10,000円超の飲食 | 交際費 |
| 出張時の宿泊費に含まれる朝食・規程に基づく日当 | 旅費交通費 |
| 要件を満たさない食事代・現金での食事手当 | 給与(源泉徴収の対象) |
福利厚生費として処理するケース
全従業員を対象とした新年会や忘年会などの食事代は、福利厚生費として処理できます。ただし、一部の従業員だけが参加する高額な食事会は給与とみなされる可能性があります。また、従業員の昼食代を会社が負担する場合も、後述する2つの要件を満たせば福利厚生費として認められます。
会議費として処理するケース
社内での会議に際して提供されるお弁当や飲み物代は、会議に通常必要な程度のものであれば会議費として経費計上します。取引先との打ち合わせを兼ねた飲食は、参加者1人あたりの金額が10,000円以下であれば交際費から除外でき、会議費として処理できます。ただし、この10,000円基準は、飲食の年月日・参加した取引先の名称と氏名・参加人数・金額・飲食店の名称と所在地などを記載した書類を保存している場合に限って使えます。国税庁 No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算また、もっぱら自社の役員や従業員だけで行う飲食(いわゆる社内飲食費)は、1人10,000円以下であってもこの除外の対象にならない点に注意しましょう。
交際費として処理するケース
取引先を接待するための食事代で、1人あたりの金額が10,000円を超える場合は交際費となります。交際費は法人の規模によって損金にできる上限が定められています。期末の資本金が1億円以下である等の中小法人であれば、年間800万円までの定額控除か、接待飲食費の50パーセントのどちらか有利な方を選んで損金にできます。
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福利厚生費として食事代を非課税にするための具体的な要件
従業員の昼食代などを会社が負担するとき、給与として課税されないためには次の2つの要件を両方ともクリアする必要があります。国税庁 No.2594 食事を支給したとき
従業員が食事代の半分以上を負担していること
最初の要件は、食事の価額のうち半分以上を従業員自身が負担していることです。例えば、1食あたり600円のお弁当を会社が手配する場合、従業員は300円以上の代金を支払う必要があります。会社が全額を負担してしまうと、全額が給与として課税されてしまいます。なお、お弁当を購入して支給する場合は業者への支払額、社員食堂で作る場合は材料費や調味料など直接かかった費用が「食事の価額」になります。
会社負担額が1か月あたり7,500円(税抜)以下であること
もう一つの要件は、会社が負担する金額(食事の価額から従業員の負担額を引いた残り)が1か月あたり7,500円(消費税等を除く)以下に収まることです。この上限は、令和8年3月31日の通達改正により、令和8年4月1日以後に支給する食事から月3,500円から月7,500円へ引き上げられました。国税庁 食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて令和8年3月31日以前に支給した食事には、改正前の月3,500円で判定します。
| 支給した時期 | 会社負担の上限(月額・税抜) | 深夜勤務の夜食代(現金・1食・税抜) |
|---|---|---|
| 令和8年3月31日まで | 3,500円 | 300円 |
| 令和8年4月1日以後 | 7,500円 | 650円 |
7,500円以下かどうかは消費税等を除いた金額で判定し、10円未満の端数は切り捨てます。例えば、1か月の食事の価額が14,000円で従業員が7,000円を負担している場合は、次のとおり2つの要件をどちらも満たすので非課税になります。
一方、食事の価額が16,000円で従業員の負担が8,000円の場合、会社負担は8,000円となり上限を超えます。この場合は、超えた500円だけではなく、会社負担の8,000円全額が給与として課税されるので、計算には十分な注意が必要です。
現金での支給は原則として給与課税される
昼食代の補助を現金でそのまま支給してしまうと、使い道が食事以外にもなり得るため、金額にかかわらず全額が給与として課税されます。会社がお弁当業者に直接支払うか、社員食堂の運営費として負担するなど、現物で支給することが非課税の条件となります。例外は、次の章でご説明する深夜勤務者の夜食代だけです。
なお、消費税では、社員食堂で従業員に無償で食事を提供した場合は対価がないため課税関係は生じず、有償で提供した場合は従業員から受け取る食事代が課税の対象になります。国税庁 No.6471 従業員に対する食事の提供
残業や深夜勤務時の食事代に関する注意点
通常の昼食とは異なり、残業や深夜勤務をおこなう従業員に対して会社が食事代を負担する場合には、特別なルールが設けられています。
残業や宿日直の食事代は全額会社負担が可能
従業員が残業や宿日直をする際に、会社が夕食などを現物で支給する場合は、無料で支給しても給与として課税しなくてよいことになっています。この場合は福利厚生費として全額を経費にできます。ただし、常識的な金額の範囲内である必要があります。
深夜勤務者への夜食代の現金支給の特例
深夜勤務をする従業員に対して、会社が夜食を現物で支給できない場合もあります。その場合に限り、1食あたり650円(消費税等を除く)以下の現金を夜食代として支給するのであれば、給与として課税しなくてもよいという特例があります。国税庁 深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭に対する所得税の取扱いについてこの金額も昼食補助と同じく、令和8年4月1日以後に支給するものから300円以下から650円以下に引き上げられています。650円を超えると全額課税されるため、金額の設定には注意しましょう。
出張中の食事代を負担するときの注意点
出張先での食事代については、普段の業務とは異なる経費精算の基準があります。出張ならではの注意点を確認しましょう。
旅費交通費規程に基づく日当や宿泊費込みの処理
出張先での個人の食事代は、原則として経費にできません。しかし、ホテル代に朝食が含まれている場合などは、全体を旅費交通費として処理することが一般的です。また、会社で旅費交通費規程を作成し、出張時の食事代などの諸経費をまかなうために1日あたり2,000円などの日当を定額支給している場合は、日当として経費計上が可能です。
出張中の取引先との会食の取り扱い
出張先で取引先と一緒に食事をした場合は、目的や金額に応じて会議費や交際費として処理します。1人あたり10,000円以下の飲食で記録を残していれば会議費、接待が目的であったり1人10,000円を超えたりすれば交際費となります。誰とどのような目的で食事をしたのか、必ず領収書の裏などにメモを残すよう、注意点として従業員に伝えておきましょう。
まとめ
会社が従業員の食事代を負担するときは、目的や金額ごとのルールを正しく理解することが欠かせません。昼食補助は「従業員が半分以上を負担」かつ「会社負担が月7,500円(税抜)以下」、深夜勤務の夜食代は「1食650円(税抜)以下」が、令和8年4月1日以後の基準です。社内規程や補助額を旧基準の月3,500円・300円のまま運用している場合は、見直しの好機といえます。条件を満たせば福利厚生費や会議費として処理できますが、ルールを誤ると給与として課税されるリスクがあります。具体的な金額の基準や勘定科目の選び方を社内で徹底し、正しい経費処理を行いましょう。
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参考文献
国税庁 食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて
国税庁 深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭に対する所得税の取扱いについて
従業員の食事代負担に関するよくある質問まとめ
Q.会社が従業員の個人の食事代を負担した場合、経費になりますか?
A.個人的な昼食代は生活費とみなされるため、原則として給与課税されます。ただし、食事の価額の半分以上を従業員が負担し、会社の負担額が1か月あたり7,500円(税抜)以下であれば、福利厚生費として非課税で処理できます。この7,500円は令和8年4月1日以後に支給する食事に適用され、それより前に支給した食事は月3,500円で判定します。
Q.従業員の食事代を現金で支給することはできますか?
A.食事代の補助を現金で支給すると、原則として全額が給与として課税されます。給与課税を避けるためには、会社がお弁当業者に直接支払うなどの現物支給にする必要があります。例外は、深夜勤務者に夜食を現物支給できない場合の1食650円(税抜)以下の現金支給です。
Q.取引先との打ち合わせ中の食事代はどの勘定科目になりますか?
A.取引先との飲食で1人あたり10,000円以下であれば、一定の事項を記載した書類の保存を条件に交際費から除外でき、会議費として処理できます。接待が目的の場合や、1人あたり10,000円を超える場合は交際費となります。社内の役員・従業員だけの飲食はこの10,000円基準の対象外です。
Q.残業時の夕食代を会社が負担する場合の注意点はありますか?
A.残業や宿日直を行うときに現物で支給する食事は、常識的な金額の範囲内であれば無料で支給しても給与課税されません。福利厚生費として処理が可能です。
Q.出張先での個人の食事代は経費として落とせますか?
A.出張中の個人的な食事代は原則として経費にできません。ただし、宿泊費に朝食代が含まれている場合は旅費交通費として処理するか、出張日当の中からまかなうのが一般的です。
Q.深夜勤務者に食事を用意できない場合、現金支給は可能ですか?
A.深夜勤務者に夜食の現物支給ができない場合に限り、1食あたり650円(税抜)以下であれば現金で夜食代を支給しても給与として課税されない特例があります。令和8年3月31日以前に支給したものは300円以下で判定します。


