先に結論からお伝えすると、亡くなった方の運転免許証を、ご遺族が返納しなければならないという法律上の義務はありません。道路交通法が返納を義務づけているのは免許証を持つご本人であり、ご遺族に返納を義務づける規定は置かれていないからですe-Gov法令検索 道路交通法第106条の3。
ただし、そのままにしておくと更新のお知らせハガキが届き続けたり、紛失時に悪用されるリスクが残ったりします。そのため、警察署や運転免許センターで返納(失効)の手続きをされるご家族が多いのが実情です。手数料はかからず、窓口での手続き自体は10分から30分ほどで終わります。
この記事では、返納する場所・必要なもの・期限・返納しない場合どうなるかを順に整理し、免許証を形見として手元に残す方法や、相続手続きで故人の免許証が使えるのかという疑問までまとめてご説明しますね。
亡くなった人の運転免許証はどうする?早見表
細かい説明の前に、多くの方が気にされる点をまとめました。ここだけ読んでいただければ、全体像はつかめます。
| 気になること | 結論 |
| 遺族に返納義務はある? | ありません。返納しなくても罰則はありません |
| どこに返納する? | 故人の住所地を管轄する警察署・運転免許センター・運転免許試験場 |
| いつまでに? | 法律上の期限はありません。更新ハガキを止めたい場合は早めに |
| 誰が行ってもいい? | ご家族が一般的です。続柄の扱いは都道府県で異なるため事前確認を |
| 費用は? | 手数料はかかりません |
| 形見として残せる? | 穴を開けるなどの無効化処理をしたうえで返してもらえるのが一般的です |
運転免許証の返納は義務?返納しないとどうなる?
まず一番に気になるのが、「故人の運転免許証は絶対に返さなければいけないの?」という点ですよね。結論は前述のとおり、ご遺族に返納の義務はありません。ただ、そのままにしておくと困ることもあるため、判断材料を整理しておきましょう。
遺族に返納を義務づける規定はない
道路交通法は、免許が取り消されたとき・失効したとき・有効期間が満了したときなどに、「免許証を有する者」本人が住所地を管轄する公安委員会へ速やかに返納することを定めています。亡くなった方に代わってご遺族が返納しなければならない、という定めはありません。
ですから「返却していないから法律違反になる」「罰金を取られる」と心配される必要は全くありませんよ。運転免許はご本人だけに与えられた資格ですので、亡くなられた時点でその免許証を使える方はいなくなります。
返納しないとどうなる?3つの困りごと
義務ではないとはいえ、手続きをしないままにしておくと、次のような困りごとが起こります。
| 起こること | 内容 |
| 更新のお知らせが届き続ける | 免許証の有効期限が来るまで、更新連絡のハガキがご自宅に届きます。そのたびに故人を思い出して辛くなる、というお声をよくいただきます |
| 悪用のリスクが残る | 顔写真つきの身分証明書ですので、紛失・盗難時に第三者へ悪用されるおそれがあります |
| 遺品整理で行き先に迷う | 他の遺品と違い、捨てるのもためらわれるため、何年も手元に残り続けてしまいがちです |
なお、返納しないことに対する罰則はありませんので、「急いで返さなければ」と焦る必要はありません。落ち着いてから手続きされて大丈夫です。
返納の期限はいつまで?
ご遺族の返納に法律上の期限はありません。死亡届のように「7日以内」といった決まりはなく、四十九日が過ぎてから、あるいは相続手続きが一段落してからでも問題ありません。
ひとつの目安としては、更新のお知らせハガキが届く時期(免許証の有効期限の約1か月前)より前に済ませておくと、辛い思いをせずに済みます。免許証の表面に記載された有効期限を確認して、その1〜2か月前までを目標にされるとよいでしょう。
返納手続きはどこでする?窓口と受付時間
返納の窓口は、警察署・運転免許センター・運転免許試験場です。道路交通法が返納先として定めているのは住所地を管轄する公安委員会ですので、原則としては故人がお住まいだった都道府県の窓口が返納先になります。
もっとも、亡くなった方の返納は法律上の義務ではないこともあり、実際の受付方法は都道府県ごとに運用が分かれます。ご遺族が遠方にお住まいの場合や、郵送での返納を希望される場合は、故人の住所地を管轄する警察署の交通課へ電話で確認してから動くのが確実です。二度手間を防げます。
| 窓口の種類 | 受付時間の目安 | 特徴 |
| 警察署(交通課) | 平日の日中(例:午前8時30分〜午後4時30分) | 数が多く行きやすい。昼休みに受付を止める署もあります |
| 運転免許センター・試験場 | 平日の日中(一部は日曜日も受付) | 免許関係の手続きに慣れており、その場で完結しやすい |
家族以外・代理の人でも手続きできる?
実際に窓口へ行かれるのは、配偶者やお子さまなど同居のご家族が一般的です。同居されていなかったご親族や、ご家族から頼まれた方が行かれるケースもありますが、どこまでの関係者を受け付けるかは都道府県によって扱いが異なります。
ご家族以外の方が窓口へ行かれる場合は、事前に管轄の警察署へ「誰が行けばよいか」「委任状は必要か」を確認しておくと安心です。あわせて、故人との関係がわかる戸籍謄本などを持参されるとスムーズに進みます。
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返納に必要なものと手続きの流れ
窓口へ行かれる際の持ち物は次のとおりです。忘れ物があると再訪になってしまいますので、お出かけ前にチェックしてくださいね。
| 必要なもの | 補足説明 |
| 故人の運転免許証 | 返納する免許証そのものです。見つからない場合は窓口でご相談ください |
| 死亡の事実が確認できる書類 | 死亡診断書のコピー、住民票の除票、戸籍謄本(除籍謄本)など。1点あれば足りるのが一般的です |
| 窓口へ行く方の本人確認書類 | ご自身の運転免許証、マイナンバーカードなど |
| 認印 | 不要な窓口も増えていますが、念のため持参されると安心です |
| 故人との関係がわかる書類 | 戸籍謄本など。ご家族以外の方が行かれる場合に求められることがあります |
窓口では「亡くなった家族の免許証の返納をお願いします」とお伝えいただければ、担当の方が案内してくださいます。申請書に必要事項を記入し、持参した書類を提出すれば完了です。混雑していなければ10分から30分程度、手数料はかかりません。
免許証が見つからない・紛失しているとき
遺品整理をしても免許証が出てこない、というご相談は多くあります。この場合でも、窓口でその旨をお伝えいただければ、免許証を添えずに手続きを進められる扱いが一般的です。
そもそも返納は義務ではありませんので、見つからない状態で放置していても罰則はありません。更新のお知らせを止めたい場合に、窓口へご相談いただくという整理で大丈夫です。
有効期限が切れている・更新中に亡くなったとき
有効期限がすでに切れている免許証は、その時点で免許としての効力がありませんので、返納しなくても差し支えありません。ご自宅で処分される場合は、氏名・住所・生年月日が読み取れないよう、細かく裁断するなどしてから処分されると安心です。
更新の手続きの途中で亡くなられた場合や、更新のお知らせが届いた直後に亡くなられた場合も、ご遺族が更新をする必要はありません。更新しないまま有効期限を迎えれば、免許は失効します。お知らせのハガキを止めたい場合は、上記の返納手続きをしていただくのが早道です。
返納の前に確認したい2つのこと
窓口へ行く前に知っておいていただきたいことが2つあります。どちらも「返してしまってから気づいた」となりやすい点です。
形見として手元に残したいときは無効化処理をしてもらう
大切な方の免許証を完全に手放してしまうのは寂しい、と感じられる方は少なくありません。窓口で「形見として持ち帰りたい」とお伝えいただければ、パンチで穴を開けるなどの無効化処理をしたうえで返してもらえるのが一般的です。
これで身分証明書としての機能はなくなりますが、お顔写真の入った思い出の品として保管できます。無効化された免許証にも氏名・生年月日などの個人情報は残りますので、お仏壇に納める、鍵のかかる引き出しにしまうなど、大切に保管してくださいね。なお、取扱いは都道府県で異なりますので、確実に残したい場合は事前に窓口へご確認ください。
故人の免許証は相続手続きの本人確認には使えない
金融機関の相続手続きや不動産の名義変更でご用意いただく本人確認書類は、手続きをする相続人ご自身のものです。亡くなった方の免許証は身分証明書として使えませんので、「免許証があるから戸籍は要らない」ということにはなりません。故人の情報は、戸籍謄本や住民票の除票で確認することになります。
ただ、免許証には故人の本籍地が記載されていない一方で、氏名・生年月日・住所が正確に載っています。返納の前にコピーを1枚取っておかれると、各種手続きの書類を書くときに住所表記を確認できて便利です。
運転免許証以外の死亡後の手続きと期限
ご家族が亡くなられると、免許証以外にも多くの手続きが必要になります。期限が決められているものも多いので、主なものを整理しておきましょう。
死亡直後に行う手続き
まず、亡くなられた直後から期限が迫る手続きです。葬儀の準備と並行するため大変ですが、抜け漏れのないようにしましょう。
| 手続き名 | 期限 |
| 死亡届・火葬許可申請 | 死亡の事実を知った日から7日以内e-Gov法令検索 戸籍法第86条 |
| 年金の受給停止手続き | 厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内が目安 |
| 健康保険の資格喪失届 | 死亡日から14日以内が目安 |
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遺産相続に関する手続き
相続に関する手続きは専門的で、時間がかかるものが多いです。特に相続税の申告は、期限を過ぎると加算税や延滞税といった負担が生じる可能性がありますので注意が必要です。
| 手続き名 | 期限 |
| 相続放棄・限定承認 | 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内e-Gov法令検索 民法第915条 |
| 所得税の準確定申告 | 相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告) |
| 相続税の申告・納付 | 被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内国税庁 No.4205 相続税の申告と納税 |
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その他の名義変更・解約
故人名義の契約も、解約や名義変更が必要です。電気・ガス・水道といったライフライン、携帯電話、クレジットカード、預貯金口座、自動車など、リストを作って一つずつ確認していくと漏れがなくなります。遺産分割協議が終わらないと進められないものもありますので、焦らず進めていきましょう。
相続税の申告が必要かどうかの判断や、遺産分割の進め方は、財産の構成によって最適な選択が変わります。ご不安な点は、早めに相続税を専門とする税理士へご相談ください。
お問い合わせはこちらまとめ
亡くなった方の運転免許証について、ご遺族に返納の義務はなく、返納しなくても罰則はありません。それでも多くのご家族が返納されているのは、更新のお知らせを止めたい、悪用のリスクをなくしたい、というお気持ちからです。
返納先は故人の住所地を管轄する警察署や運転免許センターで、手数料はかからず10分から30分ほどで終わります。持ち物は、故人の免許証・死亡の事実がわかる書類・窓口へ行く方の本人確認書類の3点が基本です。形見として残したい場合は、その旨を窓口でお伝えください。
ご家族が亡くなられた後の手続きは本当に多くて大変ですが、期限のあるものから一つひとつ落ち着いて進めていきましょう。この記事が、皆さまの不安を少しでも和らげるお役に立てれば嬉しいです。
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参考文献
- e-Gov法令検索 道路交通法第106条の3
- e-Gov法令検索 戸籍法第86条
- e-Gov法令検索 民法第915条
- 国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
亡くなった人の運転免許証に関するよくある質問
Q.亡くなった人の運転免許証は返納しなければいけませんか。
A.ご遺族に返納の義務はありません。道路交通法が返納を義務づけているのは免許証を持つご本人で、遺族に返納を義務づける規定はなく、返納しなくても罰則はありません。ただし更新のお知らせが届き続けるため、返納される方が多くなっています。
Q.亡くなった人の免許証はどこに返納しますか。
A.警察署の交通課、運転免許センター、運転免許試験場が窓口です。道路交通法が定める返納先は住所地を管轄する公安委員会のため、原則として故人がお住まいだった都道府県の窓口になります。運用は都道府県で異なるため、遠方の場合は事前に電話で確認すると確実です。
Q.運転免許証の返納はいつまでにすればいいですか。
A.法律上の期限はありません。目安としては、更新のお知らせハガキが届く有効期限の約1か月前より前に済ませておくと、ハガキが届いて辛い思いをせずに済みます。
Q.返納に必要なものは何ですか。
A.故人の運転免許証、死亡の事実が確認できる書類(死亡診断書のコピー、住民票の除票、戸籍謄本など)、窓口へ行く方の本人確認書類の3点が基本です。認印や、故人との関係がわかる戸籍謄本を求められることもあります。手数料はかかりません。
Q.免許証を返納しないとどうなりますか。
A.罰則はありません。ただし有効期限が来るまで更新のお知らせハガキが届き続け、紛失や盗難の際に身分証明書として悪用されるリスクが残ります。
Q.家族以外の人が返納手続きに行ってもいいですか。
A.配偶者やお子さまなどご家族が行かれるのが一般的です。どこまでの関係者を受け付けるかは都道府県で扱いが異なるため、ご家族以外が行かれる場合は委任状の要否を含めて事前に管轄の警察署へ確認してください。
Q.免許証を形見として手元に残せますか。
A.窓口で形見として持ち帰りたいとお伝えいただければ、パンチで穴を開けるなどの無効化処理をしたうえで返してもらえるのが一般的です。取扱いは都道府県で異なるため、事前の確認をおすすめします。
Q.故人の免許証を相続手続きの本人確認書類に使えますか。
A.使えません。金融機関などで求められる本人確認書類は手続きをする相続人ご自身のものです。故人の情報は戸籍謄本や住民票の除票で確認します。住所表記の確認用に、返納前にコピーを取っておくと便利です。


