数次相続とは、ある方が亡くなって相続が始まったあと、その遺産分割や相続税の申告などの手続きが終わらないうちに、相続人の一人が続けて亡くなり、相続が二重(数次)に重なる状態をいいます。相続手続きの途中で相続人が死亡するため、二つの相続を並行して進める必要があり、相続税の申告期限や相続登記の考え方が通常の相続とは変わります。この記事では、数次相続の定義、よく混同される代襲相続との違い、相続税の申告期限の特則、相続登記や遺産分割協議書の書き方までを整理して解説します。
数次相続の定義と発生する場面
数次相続は、最初の相続(一次相続)の手続きが完了する前に、その相続人が亡くなって次の相続(二次相続)が始まることで発生します。たとえば父が亡くなり、遺産分割協議をしないうちに母(父の相続人)が亡くなると、父の相続と母の相続が重なります。この場合、母が本来受け取るはずだった父の遺産を分ける権利は、母の相続人である子などへ引き継がれます。
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続の承認または放棄を選ぶことになっていますe-Gov法令検索 民法。この期間(熟慮期間)の途中で相続人が承認も放棄もしないまま亡くなった場合、その相続人の相続人が改めて熟慮期間を数え直して判断します。これを再転相続と呼び、数次相続の一場面にあたります。
数次相続と代襲相続の違い
数次相続と似た言葉に代襲相続があります。両者は相続人が亡くなるタイミングで区別します。数次相続は被相続人が亡くなった後に相続人が亡くなるケース、代襲相続は被相続人が亡くなる前(または同時)にその子などがすでに亡くなっているケースです。代襲相続では、亡くなった子に代わって孫が直接相続人になります。
誰が遺産を受け取る立場になるかや、相続税の申告期限の考え方も両者で異なるため、まずどちらに当たるのかを確認することが大切です。数次相続では先に亡くなった相続人の権利がその相続人へ引き継がれるのに対し、代襲相続では下の世代が直接相続人となる点が大きな違いです。
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数次相続における相続税の申告期限
相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うのが原則です国税庁 No.4205 相続税の申告と納税。数次相続では、この期限の数え方に特則があります。
一次相続の相続税を申告すべき人が、その申告期限より前に申告書を提出しないまま亡くなった場合、その人の相続人は、自己が相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、亡くなった人に代わって一次相続の申告書を提出しますe-Gov法令検索 相続税法。つまり、先に亡くなった相続人の分の申告期限は、後の相続の発生に合わせて延びることになります。一方、後から亡くなった人自身(二次相続)の相続税の申告期限は、その人が亡くなった日を基準に別途10か月以内で数えます。
二つの相続で期限が異なるため、どちらの申告がいつまでなのかを混同しないよう、被相続人ごとに期限を整理しておくことをおすすめします。
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相次相続控除と未分割のときの申告
数次相続のように短い期間に相続が続くと、同じ財産に相続税が重ねてかかる負担を和らげる仕組みがあります。今回の相続開始前10年以内に、被相続人が相続などで財産を取得して相続税が課されていた場合、その被相続人から財産を取得した人の相続税額から一定額を差し引く相次相続控除です国税庁 No.4168 相次相続控除。数次相続と相次相続控除は混同されがちですが、数次相続は相続が重なった状態そのものを指す言葉、相次相続控除は10年以内に2回相続が続いたときの税額控除であり、別の概念です。
また、申告期限までに遺産分割が終わらないこともあります。その場合は、いったん法定相続分で分けたものとして相続税を申告・納税します国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告。このとき「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えておくと、後日分割が確定した時点で配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用し直せます。数次相続では相続人が増えて分割協議に時間がかかりやすいため、この扱いを知っておくと安心です。
数次相続の相続登記と中間省略
相続で不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります法務局 相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)。令和6年4月1日より前に発生した相続も義務化の対象で、3年の猶予期間が設けられています。
数次相続では、名義がまだ最初の被相続人のままで、その間に相続人が亡くなっているため、世代をまたいだ相続関係を戸籍でたどる必要があります法務局 相続登記未了の間に相続人が死亡した場合による相続。中間の相続人が1人だけ(単独相続)だった場合などは、中間の登記を省略して、最終的に不動産を取得する人へ一度の申請で名義を移せることがあります。中間の相続人が複数いて遺産分割が必要な場合は省略できないなど、条件によって手続きが変わるため、登記の進め方は事前に法務局へ確認すると確実です。
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数次相続の遺産分割協議書の書き方
数次相続では被相続人が複数になるため、遺産分割協議書も相続ごとに整理して作成します。原則として一次相続と二次相続で協議書を分けて作る方法が基本ですが、相続人の関係によっては1通にまとめる場合もあります。
先に亡くなった相続人(たとえば母)は、父の相続では相続人でありながら、自身の相続では被相続人になります。協議書では、その人の氏名の前に「相続人兼被相続人」と肩書きを記載し、立場を明確にします。誰がどの相続でどの財産を取得するのかを取り違えないよう、被相続人ごとに財産と取得者を丁寧に書き分けることが大切です。相続関係が複雑な場合は、法定相続情報一覧図を用意すると相続人の確認がしやすくなります。
まとめ
数次相続は、相続手続きの途中で相続人が亡くなり相続が重なるケースです。被相続人が亡くなる前に相続人が亡くなる代襲相続とは区別され、相続税の申告期限は先に亡くなった人の分が後の相続に合わせて延びる特則があります。相続登記は3年以内の申請義務があり、条件次第で中間の登記を省略できます。遺産分割協議書は被相続人ごとに立場を明確にして作成します。手続きが重なるぶん期限や必要書類が複雑になりやすいため、早めの整理が欠かせません。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
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参考文献
- e-Gov法令検索 民法
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
- e-Gov法令検索 相続税法
- 国税庁 No.4168 相次相続控除
- 国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告
- 法務局 相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)
- 法務局 相続登記未了の間に相続人が死亡した場合による相続
数次相続のよくある質問まとめ
Q.数次相続と代襲相続の違いは何ですか?
A.相続人が亡くなるタイミングが違います。数次相続は被相続人の死亡後に相続人が亡くなるケース、代襲相続は被相続人の死亡前にその子などがすでに亡くなっているケースです。
Q.数次相続では相続税の申告期限はどうなりますか?
A.原則は死亡を知った日の翌日から10か月以内です。先に亡くなった相続人の分の申告期限は、その相続人の相続人が相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に延びます。
Q.数次相続でも相続税の申告は必要ですか?
A.各相続で基礎控除を超える財産があれば、それぞれ申告が必要です。被相続人ごとに期限と財産を分けて考えます。
Q.数次相続の相続登記は省略できますか?
A.中間の相続人が1人だけの場合などは、中間の登記を省略して一度の申請で名義を移せることがあります。条件により異なるため法務局に確認すると確実です。
Q.相次相続控除とは何ですか?
A.10年以内に相続が続いたとき、前の相続で課された相続税の一部を今回の相続税額から差し引ける制度です。数次相続そのものとは別の概念です。
Q.数次相続の遺産分割協議書はどう書きますか?
A.被相続人ごとに整理し、先に亡くなった相続人には相続人兼被相続人と肩書きを記載して立場を明確にします。


