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資産管理会社の合併|適格合併の要件と相続への影響

目次
  1. 資産管理会社の合併を検討する背景
  2. 資産管理会社が複数になる経緯
  3. 複数社を維持することによる負担
  4. 承継しやすい株主構成への組み替え
  5. 適格合併の要件と三つの類型
  6. 適格合併の定義と金銭等不交付要件
  7. 完全支配関係がある場合の要件
  8. 支配関係がある場合の要件
  9. 共同事業を行うための合併の要件
  10. 非適格合併となった場合の課税
  11. 適格合併と非適格合併の取扱いの違い
  12. 資産の時価譲渡による譲渡損益課税
  13. みなし配当と株主への課税
  14. 繰越欠損金の引継ぎ制限
  15. 適格合併における欠損金の引継ぎ
  16. 制限の対象となる欠損金額
  17. みなし共同事業要件と特定資産の譲渡等損失
  18. 合併後の自社株評価と相続税への影響
  19. 取引相場のない株式の評価方法
  20. 特定の評価会社への該当の有無
  21. 比準要素をめぐる合併直後の留意点
  22. まとめ
  23. 参考文献
  24. 資産管理会社の合併と適格合併の要件のよくある質問まとめ

不動産賃貸用の会社、有価証券を保有する会社、かつて事業のために設立したまま残っている会社。資産管理会社が気づけば2社、3社と増えていて、「そろそろ1社にまとめたい」とお考えの方は少なくありません。ただ、合併と聞くと「まとまった税金がかかるのではないか」と不安に感じられるのも当然です。

結論から申し上げますと、資産管理会社どうしの合併は、適格合併の要件を満たせば資産の含み益に課税されることなく実行できます。適格合併とは、合併によって移した資産や負債を帳簿価額のまま引き継ぐことが認められ、課税が繰り延べられる合併のことです。逆に要件を外して非適格合併になると、不動産や株式の含み益に法人税が課され、株主にもみなし配当という配当課税が生じます。

このコラムでは、同族のオーナーが複数の資産管理会社を1社にまとめる場面を想定し、適格合併の要件を三つの類型に整理してご説明します。あわせて、非適格になった場合に何が起こるのか、繰越欠損金はどこまで引き継げるのか、そして合併後の自社株評価が相続税にどう影響するのかまで、実務で確認すべき順序に沿って解説します。

資産管理会社の合併を検討する背景

相続対策としてつくった会社が、時間の経過とともに「持っているだけで負担になる存在」に変わってしまうことがあります。まずは、なぜ合併という選択肢が浮上するのかを整理します。

資産管理会社が複数になる経緯

資産管理会社が増える理由の多くは、設立当時の目的の違いにあります。賃貸物件を取得するたびに別法人を立てた、相続で引き継いだ会社をそのまま残した、事業を廃止した会社を清算せずに休眠させた、といった経緯です。

それぞれの会社に合理性があった一方で、法人が増えるほど毎年の負担は積み上がります。決算と申告の手間は会社数だけ発生しますし、帳簿や契約書の管理も分散します。

複数社を維持することによる負担

実務でご相談を受けていて多いのは、「どの会社に何があるのか、家族が誰も把握していない」という状態です。オーナーご本人が元気なうちは問題になりませんが、相続が起きた瞬間に、複数社の株式評価と財産把握を同時に進めることになります。

複数社を維持することによる
負担
合併による整理の方向
会社の数だけ決算と申告の事務が発生する 1社に集約することで維持のための事務とコストを圧縮できる
相続時に複数社の株式をそれぞれ評価する必要がある 評価対象の株式が1銘柄に整理される
相続人が複数社の株式を分散して取得し、議決権が割れやすい 株主構成を1社にまとめ、承継の設計をしやすくする
黒字の会社と赤字の会社が併存し、損益が通算できない 合併後は同一法人内の損益として取り扱われる

承継しやすい株主構成への組み替え

相続対策の観点からは、会社を減らすこと自体よりも、誰にどの株式を引き継がせるかを設計しやすくなる点に価値があります。会社が3社あれば、株式の分け方も評価額の把握も3通り必要ですが、1社になれば議決権の集約と分割の方針をひとつの土俵で考えられます。

もっとも、会社を残すか、合併するか、清算するかは、資産構成や含み損益によって答えが変わります。合併と清算の比較については、次のコラムもあわせてご確認ください。

関連コラムいらない会社の合併か清算、どっちがお得?手続きと費用の違いを徹底解説▸

適格合併の要件と三つの類型

適格合併に該当するかどうかは、まず合併の対価として何を渡すかを確認し、次に合併する2社がどのような資本関係にあるかを確認する、という二段階で判定します。資本関係は「完全支配関係」「支配関係」「それ以外」の三つに分かれ、関係が薄くなるほど求められる要件が増えていきます。

適格合併の定義と金銭等不交付要件

適格合併とは、被合併法人(吸収されて消滅する会社)の株主に対して、合併法人またはその親法人のうちいずれか一の法人の株式以外の資産を交付しない合併で、一定の資本関係の要件を満たすものをいいます。この「株式以外を渡さない」という条件が、いわゆる金銭等不交付要件です。e-Gov法令検索 法人税法

つまり、合併の対価として現金や不動産を渡してしまうと、その時点で適格合併から外れます。ただし例外があり、剰余金の配当として交付される金銭、合併に反対する株主の買取請求に応じて支払う対価、そして合併の直前に合併法人が被合併法人の発行済株式等の3分の2以上を持っている場合に少数株主へ交付する金銭は、この判定から除かれます。

実務上、同族の資産管理会社どうしの合併では、対価を合併法人の株式だけにするか、株式の交付自体を省略する無対価合併を選ぶことがほとんどです。金銭等不交付要件でつまずくケースは多くありませんが、少数株主に現金で退いてもらう設計を同時に行うと、思わぬところで要件を外すことがあります。

完全支配関係がある場合の要件

完全支配関係とは、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接または間接に保有する関係、およびその一の者との間に完全支配関係がある法人どうしの関係をいいます。かみ砕いて言えば、100パーセントの持株関係でつながっている状態です。

この類型はさらに二つに分かれます。ひとつは、合併する2社のいずれか一方が他方の株式を100パーセント保有している親子関係の場合です。もうひとつは、共通の親会社やオーナー個人が両社の株式を100パーセント保有している兄弟関係の場合で、こちらは合併後もその同一の者と合併法人との完全支配関係が続く見込みであることが必要になります。国税庁 合併法人と被合併法人との間に「当事者間の完全支配関係」と「法人相互の完全支配関係」のいずれにも該当する関係がある場合の適格判定について

ここで見落とされやすいのが、株主が個人である場合の「一の者」の範囲です。完全支配関係の判定における一の者には、その個人だけでなく、その個人と特殊の関係にある個人、すなわち親族等も含めて判定します。夫が全株式を持つA社と、妻が全株式を持つB社は、一見すると株主が別人ですが、夫婦を一の者とみるため同一の者による完全支配関係があることになり、他の要件を満たせば適格合併に該当します。国税庁 株主が個人である場合の同一の者による完全支配関係について

同族のオーナー家では、株式の名義が配偶者や子に分かれていることがよくあります。名義が分かれていても親族等をまとめて一の者と考えるため、想像以上に完全支配関係型に当てはまりやすい、というのが実務での実感です。

支配関係がある場合の要件

支配関係とは、一の者が法人の発行済株式総数の50パーセントを超える数の株式を直接または間接に保有する関係、およびその一の者との間に支配関係がある法人どうしの関係をいいます。100パーセントには届かないものの、過半数は押さえている状態です。

支配関係型の場合、金銭等不交付要件に加えて、次の二つの要件をどちらも満たす必要があります。国税庁 合併法人と被合併法人との間に「当事者間の完全支配関係」と「法人相互の支配関係」のいずれにも該当する関係がある場合の適格要件の適用関係について

  • 従業者引継ぎ要件…被合併法人の合併直前の従業者のうち、おおむね80パーセント以上が合併後に合併法人の業務に従事する見込みであること
  • 事業継続要件…被合併法人が合併前に行っていた主要な事業が、合併後も合併法人で引き続き行われる見込みであること

不動産賃貸を行う資産管理会社であれば、賃貸事業がそのまま合併法人に移り継続されるため、事業継続要件は満たしやすい傾向にあります。一方、従業員がいない会社どうしの合併では従業者引継ぎ要件の判定に迷いが生じやすく、事前の確認が欠かせません。

なお、完全支配関係と支配関係の両方に当てはまる資本関係のときは、まず完全支配関係の要件で判定します。要件の重い支配関係型を先に当てはめる必要はありません。

共同事業を行うための合併の要件

資本関係がまったくない法人どうし、あるいは50パーセント以下の関係しかない法人どうしの合併でも、共同で事業を行うための合併と認められれば適格合併になります。この場合は、次の五つの要件をすべて満たす必要があります。e-Gov法令検索 法人税法施行令

共同事業を行うための
合併の要件
要件の内容
事業関連性要件 被合併法人の主要な事業と合併法人の事業が相互に関連するものであること
事業規模要件または
特定役員引継要件
売上金額、従業者数、資本金の額などの規模の割合がおおむね5倍を超えないこと、または双方の特定役員が合併後も合併法人の特定役員となる見込みであること
従業者引継要件 被合併法人の合併直前の従業者のおおむね80パーセント以上が合併法人の業務に従事する見込みであること
事業継続要件 被合併法人の事業が合併後も合併法人で引き続き行われる見込みであること
株式継続保有要件 被合併法人の支配株主に交付される合併法人株式の全部が、その支配株主によって継続して保有される見込みであること

ここでいう特定役員とは、社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役、常務取締役、またはこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいいます。被合併法人の社長と合併法人の社長が、合併後にそれぞれ副社長と社長に就任する見込みであれば、この要件を満たします。ただし、極端に短期間で退任する場合や名目的な就任にとどまる場合は、形式を整えただけとみられる余地がある点に注意が必要です。国税庁 特定役員引継要件

従業者引継要件の80パーセントを数えるときの「合併法人の業務」には、合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務も含まれます。被合併法人の従業者100人のうち60人が合併法人へ、30人が合併法人の完全子会社へ移る場合、合計90人が対象となり要件を満たします。国税庁 被合併法人の従業者が合併法人以外の法人の業務に従事する場合の従業者引継要件の判定

非適格合併となった場合の課税

適格合併の要件をひとつでも外すと、その合併は非適格合併として扱われます。同族の資産管理会社では、含み益のある不動産を長く保有していることが多いため、非適格になったときの影響は決して小さくありません。

適格合併と非適格合併の取扱いの違い

両者の違いは、資産を「帳簿価額のまま渡す」のか「時価で売ったものとみなす」のかという一点から派生します。

適格合併の場合の取扱い 非適格合併の場合の取扱い
資産と負債は帳簿価額のまま合併法人に引き継がれる 資産と負債を合併時の時価で譲渡したものとして所得を計算する
被合併法人に譲渡損益は生じない 譲渡利益額または譲渡損失額が最後事業年度の益金または損金になる
株主にみなし配当は生じない 交付を受けた資産の価額のうち資本金等の額に対応する部分を超える金額がみなし配当となる
被合併法人の未処理欠損金額を引き継げる(制限あり) 被合併法人の繰越欠損金を合併法人に引き継ぐ規定はない

資産の時価譲渡による譲渡損益課税

非適格合併では、被合併法人が合併法人に移した資産と負債を、合併時の価額で譲渡したものとして所得を計算します。その譲渡利益額または譲渡損失額は、被合併法人の最後事業年度(合併の日の前日が属する事業年度)の益金または損金に算入されます。

たとえば、被合併法人が帳簿価額3000万円、時価1億円の土地を1件だけ保有しているとします。この場合の譲渡利益額は次のとおりです。

土地の時価1億円 − 帳簿価額3000万円 = 譲渡利益額7000万円

この7000万円が最後事業年度の益金に算入され、法人税等の課税対象になります。実際には手元に現金が入ってくるわけではありませんので、納税資金をどこから用意するかという問題が同時に発生します。バブル期以前から不動産を保有している資産管理会社では、含み益が数億円規模になることも珍しくありません。

みなし配当と株主への課税

みなし配当とは、実際に配当の決議をしていなくても、税務上は配当を受け取ったものとみなして課税される金額のことです。非適格合併では、株主が交付を受けた金銭や資産の価額の合計額のうち、被合併法人の資本金等の額に対応する部分を超える金額がみなし配当となります。

先ほどの例で、被合併法人の資本金等の額のうち株式に対応する部分が1000万円、株主が交付を受けた合併法人株式の価額が1億円だったとすると、みなし配当の金額は次のようになります。

交付を受けた資産の価額1億円 − 資本金等の額のうち対応部分1000万円 = みなし配当9000万円

株主が個人の場合、合併により交付を受ける金銭等の合計額は、みなし配当とされる部分を除いて株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされます。ただし、株主に合併法人株式または合併親法人株式のいずれか一の法人の株式以外の資産が交付されなかった合併は除かれ、この場合は課税が繰り延べられます。国税庁 No.1536 株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされる場合-法人の合併等、自己株式の取得等の場合-

整理しますと、株式以外の対価を渡さなければ株主の譲渡所得課税は生じませんが、資本関係の要件を外して非適格になった場合には、株式だけを交付していてもみなし配当は生じます。会社側の含み益課税と株主側の配当課税が同時に起こりうる、というのが非適格合併の怖さです。

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繰越欠損金の引継ぎ制限

繰越欠損金とは、過去の事業年度に生じた赤字のうち、その後の黒字と相殺するために繰り越している金額のことです。赤字の資産管理会社を黒字の会社に吸収させれば節税になるのではないか、と考えたくなりますが、税法にはこれを制限する規定が置かれています。

適格合併における欠損金の引継ぎ

適格合併が行われた場合、被合併法人の合併前10年内の事業年度に生じた未処理欠損金額は、合併法人の欠損金額とみなして繰越控除の対象にできます。ここが適格合併の大きなメリットのひとつです。

ただし、この引継ぎは無条件ではありません。被合併法人と合併法人との間に支配関係がある場合には、次のいずれかに該当しないと、一定の欠損金額が引継ぎの対象から外れます。

  • その適格合併がみなし共同事業要件を満たす場合
  • 合併法人の合併の日が属する事業年度開始の日の5年前の日、被合併法人の設立の日、合併法人の設立の日のうち最も遅い日から継続して支配関係がある場合

この支配関係の継続については、合併法人と被合併法人の間の支配関係が続いていれば足り、その上にいる親会社が途中で入れ替わっていても継続していると判断されます。設立時から100パーセント子会社どうしであった会社は、親会社が別の会社に吸収合併されて変わった後でも、設立時から継続して支配関係があるものとして取り扱われます。国税庁 株式の保有関係が変更している場合の青色欠損金額の引継ぎ

制限の対象となる欠損金額

制限がかかった場合に引継ぎの対象から外れるのは、次の二つです。

  • 被合併法人が合併法人との間に最後に支配関係を持つこととなった日が属する事業年度(支配関係事業年度)より前の各事業年度に生じた欠損金額
  • 支配関係事業年度以後の各事業年度に生じた欠損金額のうち、特定資産の譲渡等損失額に相当する金額から成る部分

実務でご相談が多いのは、「赤字を使いたいから急いで株式を買い集めて合併する」という発想です。しかし支配関係を持ってから5年が経っていなければ、支配関係を持つ前の赤字はまず使えません。欠損金の活用を目的とするなら、5年という時間軸を織り込んだ計画が必要になります。

みなし共同事業要件と特定資産の譲渡等損失

みなし共同事業要件とは、その組織再編成が共同で事業を行うためのものと認められるための要件で、事業関連性要件、事業規模要件(5倍)、被合併法人の事業規模継続要件(2倍)、合併法人の事業規模継続要件(2倍)の四つ、または事業関連性要件と特定役員引継要件の二つを満たすことをいいます。国税庁 持株会社と事業会社が合併する場合の事業関連性の判定について

事業関連性要件については、単に株主としての立場しか持たない持株会社では判定が難しい一方、経営計画の策定や営業指導、監査業務といった経営管理業務を実際に行っており、グループ全体を経営上監督する立場にある場合には、事業が相互に関連すると認められる余地があります。

また、みなし共同事業要件を満たさず、支配関係が生じてから5年を経過していない場合には、繰越欠損金だけでなく、合併前から保有していた含み損のある資産を売却したときの損失についても、損金への算入が制限されます。赤字と含み損の両方を当て込んだ合併は、想定どおりに機能しないことがあるとお考えください。

合併後の自社株評価と相続税への影響

資産管理会社の合併は、法人税だけで完結する話ではありません。合併によって会社の資産構成や規模が変わると、オーナーが保有する株式の相続税評価額も変わります。相続対策として合併を行うのであれば、この点の検証が最も重要です。

取引相場のない株式の評価方法

資産管理会社の株式は、上場株式でも気配相場のある株式でもない取引相場のない株式にあたります。この評価は、株式を取得した株主が経営支配力を持つ同族株主等かどうかで、原則的評価方式か特例的な評価方式である配当還元方式かに分かれます。国税庁 No.4638 取引相場のない株式の評価

原則的評価方式では、会社を総資産価額、従業員数、取引金額によって大会社・中会社・小会社に区分し、区分に応じた方法で評価します。

会社規模の区分 原則的な評価方式
大会社 原則として類似業種比準方式により評価する
中会社 大会社と小会社の評価方法を併用して評価する
小会社 原則として純資産価額方式により評価する

合併によって総資産価額や取引金額が増えれば、会社規模の区分そのものが変わる可能性があります。純資産価額方式は含み益をそのまま評価額に反映しやすい方法ですので、区分が変わることで評価額の水準が動く点に注意が必要です。

関連コラム非上場株式の相続税評価方法をわかりやすく解説▸

特定の評価会社への該当の有無

資産管理会社で特に確認したいのが、特定の評価会社に該当するかどうかです。総資産価額のうち株式等の占める割合が一定以上の会社は株式等保有特定会社、土地等の占める割合が一定以上の会社は土地保有特定会社として、原則として純資産価額方式により評価することとされています。

有価証券中心の会社と不動産中心の会社を合併させると、合併後の資産構成は当然に変わります。合併前は株式等保有特定会社に該当していた会社が該当しなくなることもあれば、その逆もあります。どちらに転ぶかは資産の中身次第ですので、合併前に評価のシミュレーションを行うことが欠かせません。

比準要素をめぐる合併直後の留意点

もうひとつ注意したいのが、類似業種比準方式で用いる配当金額、利益金額、純資産価額(簿価)という三つの比準要素です。直前期末の比準要素のいずれか2つがゼロで、かつ直前々期末の比準要素のいずれか2つ以上がゼロである会社は比準要素数1の会社として、また開業後の経過年数が3年未満の会社なども、原則として純資産価額方式により評価します。

合併の前後では、どの期の数値を用いるのか、消滅した会社の数値をどう扱うのかという論点が生じます。合併直後に相続が発生すると評価方式が想定と変わることもありますので、比準要素の考え方は事前に押さえておきたいところです。

関連コラム合併時の比準要素計算!直前期や直前々期の数値は合算する?▸

まとめ

資産管理会社の合併は、適格合併の要件を満たせば資産の含み益に課税されることなく実行でき、管理コストの削減と株式評価の整理、そして承継しやすい株主構成づくりにつながります。判定の順序は、金銭等不交付要件を確認したうえで、完全支配関係、支配関係、共同事業のどの類型に当てはまるかを見る、という流れです。

同族のオーナーが持つ会社どうしであれば、株主が個人である場合の一の者に親族等が含まれる点から、完全支配関係型に当てはまるケースが多くあります。一方で、要件を外して非適格合併になると、時価による譲渡損益課税とみなし配当が同時に発生し、現金が動かないまま多額の納税が生じかねません。

繰越欠損金の引継ぎには支配関係の5年ルールとみなし共同事業要件という制限があり、赤字の活用だけを目的とした合併は思うような効果を生まないことがあります。さらに、合併後の会社規模区分や特定の評価会社への該当の有無によって自社株の相続税評価額が動くため、法人税と相続税の両面から事前に検証しておくことが大切です。

資産管理会社の合併は、資本関係、資産構成、相続人の状況によって最適な設計が大きく変わります。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

資産管理会社の合併と適格合併の要件のよくある質問まとめ

Q. 適格合併と非適格合併は何が違うのですか。

A. 適格合併では資産と負債を帳簿価額のまま引き継ぐため、被合併法人に譲渡損益は生じず課税が繰り延べられます。非適格合併では合併時の時価で譲渡したものとして所得を計算するため、含み益に法人税が課され、株主にもみなし配当が生じます。

Q. 夫と妻がそれぞれ別の資産管理会社の全株式を持っています。この2社の合併は適格合併になりますか。

A. 完全支配関係の判定における一の者には、その個人と特殊の関係にある個人、すなわち親族等も含まれます。したがって夫婦を一の者とみて同一の者による完全支配関係があることになり、合併後も完全支配関係が続く見込みで株式以外の対価を交付しなければ、適格合併に該当します。

Q. 合併の対価として現金を渡すと適格合併にならないのですか。

A. 原則として合併法人または合併親法人のうちいずれか一の法人の株式以外を交付すると適格合併になりません。ただし剰余金の配当として交付する金銭、反対株主の買取請求に基づく対価、合併法人が被合併法人の発行済株式等の3分の2以上を持つ場合に他の株主へ交付する金銭は判定から除かれます。

Q. 支配関係がある会社どうしの合併では、どのような要件が追加されますか。

A. 50パーセント超100パーセント未満の支配関係の場合は、金銭等不交付要件に加えて従業者引継ぎ要件と事業継続要件の両方が必要です。被合併法人の従業者のおおむね80パーセント以上が合併後も合併法人の業務に従事する見込みであり、主要な事業が引き続き行われる見込みであることが求められます。

Q. 赤字の資産管理会社を合併すれば、繰越欠損金をすべて使えますか。

A. 使えるとは限りません。みなし共同事業要件を満たすか、合併法人の合併事業年度開始の日の5年前の日などのうち最も遅い日から継続して支配関係がある場合に該当しないと、支配関係を持つ前の事業年度に生じた欠損金額などは引継ぎの対象から外れます。

Q. 合併すると自社株の相続税評価額はどうなりますか。

A. 合併により総資産価額や取引金額が変わると会社規模の区分が変わり、評価方式が変わる可能性があります。また株式等保有特定会社や土地保有特定会社に該当するかどうかも資産構成の変化で動くため、合併前に評価のシミュレーションを行うことが重要です。

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