結論から申し上げると、戸籍謄本は「誰と誰がどのような関係にあるか(身分関係)」を証明する書類、戸籍の附票は「その戸籍にいる間、どこに住んでいたか(住所の履歴)」を証明する書類です。名前は似ていますが、記載されている内容も、使う場面もまったく別のものです。
| 項目 | 戸籍謄本 (戸籍全部事項証明書) |
戸籍の附票 |
|---|---|---|
| 証明できること | 出生・婚姻・死亡・親子関係などの身分関係 | その戸籍が作られてからの住所の履歴 |
| 主な記載事項 | 本籍、氏名、出生の年月日、身分事項(住所は載らない) | 戸籍の表示、氏名、住所、住所を定めた年月日 |
| 取得できる場所 | 本籍地の市区町村(広域交付なら最寄りの窓口でも可) | 本籍地の市区町村のみ |
| 相続での主な出番 | 相続人が誰かを確定する | 登記簿上の住所と最後の住所をつなぐ |
| 手数料(1通) | 450円 | 300円(市区町村により異なる場合があります) |
| 広域交付(最寄りの窓口での取得) | 可(2024年3月〜・本人等が窓口請求する場合) | 対象外(本籍地へ請求) |
相続手続きや不動産の名義変更では、この2つを場面に応じて使い分けます。この記事では、両者の違いをはじめ、住所が載るのはどちらなのか、住民票との違い、取得方法と手数料、そして「結局どちらを取ればよいのか」というケース別の判定まで、順にご説明しますね。お急ぎのときはケース別の判定から先にご覧いただくと、ご自身の手続きでどちらが必要かをすぐ確認できますよ。
戸籍謄本が証明するのは「身分関係」
まずは違いの片方、戸籍謄本の側から見ていきましょう。戸籍謄本は「誰と誰がどういう関係にあるか」を示す書類で、住所は登場しません。その土台となる「戸籍」のしくみから順に整理しますね。
日本国民の身分関係を記録・証明するもの
戸籍とは、日本国民一人ひとりの出生から死亡までの身分関係(親子関係、婚姻・離婚、養子縁組など)を登録し、公に証明するためのものです。戸籍は、夫婦と未婚の子を一つの単位として作られ、本籍地の市区町村役場で管理されています。住民票が「どこに住んでいるか」を証明するのに対し、戸籍は「誰が誰とどのような関係にあるか」を証明する、という点が大きな違いです。
戸籍謄本と戸籍抄本の違い
戸籍の証明書には「戸籍謄本(こせきとうほん)」と「戸籍抄本(こせきしょうほん)」があります。現在はコンピュータ化により、それぞれ「戸籍全部事項証明書」「戸籍個人事項証明書」というのが正式名称です。この二つの違いは、証明される範囲にあります。
| 証明書の種類 | 内 容 |
| 戸籍全部事項証明書(戸籍謄本) | 戸籍に記録されている全員分の身分事項を証明するもの |
| 戸籍個人事項証明書(戸籍抄本) | 戸籍に記録されている人のうち、特定の一人または複数人の身分事項を証明するもの |
相続手続きでは、亡くなった方(被相続人)との関係を証明するために、戸籍に記載されている全員の情報が必要になることが多いため、基本的には「戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)」を取得します。
戸籍の取得方法
戸籍謄本(全部事項証明書)は、本籍地の市区町村役場で取得できます。窓口で直接請求するほか、郵送で請求することも可能です。請求できるのは、原則として本人、配偶者、直系の親族(父母、祖父母、子、孫など)です。代理人が請求する場合は、委任状が必要になります。また、2024年3月1日から始まった「広域交付制度」を利用すれば、本籍地以外の市区町村役場でも戸籍謄本を取得できるようになりました。これについては後ほど詳しく解説しますね。
戸籍の附票が証明するのは「住所の履歴」
次にもう片方、戸籍の附票です。自治体の案内では「戸籍附票」「戸籍の附票の写し」と表記されることもありますが、いずれも同じ書類を指しています。戸籍謄本との一番の違いは、住所の移り変わりが分かるという点です。
戸籍に紐づく住所の記録
戸籍の附票(こせきのふひょう)とは、その戸籍が作られてから現在までの住所の履歴を記録した書類です。戸籍は本籍地の役所で管理されていますが、戸籍の附票も同じく、戸籍と一緒に本籍地の役所で保管されています。住民票には現在の住所と一つ前の住所しか記載されていませんが、戸籍の附票を見れば、その本籍地になってからの住所の変遷がすべてわかる仕組みになっています。
「戸籍の附票の写し」とは?窓口で交付されるのは写し
役所の窓口で交付されるのは、附票そのものではなく「戸籍の附票の写し」という証明書です。附票の原本は本籍地の市区町村が戸籍とセットで管理しているため、私たちが手続きで提出するのはこの「写し」になります。「戸籍証明書(戸籍謄本など)」と「戸籍の附票の写し」を並べて案内されると同じ仲間の書類に見えますが、戸籍証明書が証明するのは身分関係、附票の写しが証明するのは住所の履歴という点で、役割ははっきり分かれています。
戸籍の附票は何に使うの?
戸籍の附票は、過去の住所を証明する必要がある場面で役立ちます。特に相続手続きでは、亡くなった方の不動産の名義変更(相続登記)を行う際に必要になるケースが多いです。不動産の登記簿には所有者の住所が記載されていますが、引っ越しを繰り返していると、登記簿上の住所と亡くなった時の最後の住所が異なることがあります。このような場合に、戸籍の附票を取得して住所のつながりを証明し、登記名義人が亡くなった方本人であることを示す必要があります。その他、自動車の廃車手続きやローンの手続きなどで、過去の住所証明として求められることもあります。
戸籍の附票の取得方法
戸籍の附票も、戸籍謄本と同様に本籍地の市区町村役場で取得します。請求できる人や必要なものも、基本的には戸籍謄本と同じです。注意点として、結婚や転籍(本籍地を移すこと)で新しい戸籍が作られた場合、附票の記録もその時点からスタートします。そのため、それ以前の住所履歴が必要な場合は、前の本籍地で「除かれた戸籍の附票(除附票)」を取得する必要があります。また、戸籍の附票の保存期間は、法令の改正により、2019年6月20日以降に除票となったものは、除かれてから150年間保存されることになりました。しかし、それ以前に保存期間(5年間)が経過して破棄されてしまったものについては取得できない場合があるので注意が必要です。
関連コラム戸籍の附票とは|取得方法と相続手続きでの使い道を解説▸
戸籍謄本に住所は載る?本籍と住所の違い
「戸籍謄本を取れば住所も分かるだろう」と思って取り寄せたところ、住所が見当たらず戸惑った、というご相談は実務でもよくあります。戸籍謄本に住所は記載されません。戸籍に記載するのは、本籍のほか、戸籍にいる各人の氏名・出生の年月日・身分事項などと法律で定められており、住所はその中に含まれていないからです。e-Gov法令検索 戸籍法第13条
戸籍に載る「本籍」は住所とは別のもの
本籍は、その戸籍がどこに置かれているかを示すもので、実際に住んでいる場所を示すものではありません。土地の地番などで表示されるため、日常使っている住所(住居表示)の「○番○号」とは書き方が違うこともよくあります。引っ越しをしても本籍は自動では変わらないので、本籍と現住所が何十年も離れている、というケースも珍しくありません。
住所を証明したいときは「戸籍の附票」か「住民票」
住所を公的に証明したいときは、戸籍謄本ではなく戸籍の附票か住民票を使います。戸籍の附票には、戸籍の表示・氏名のほか、住所と住所を定めた年月日が記載されるため、「いつからいつまで、どこに住んでいたか」という履歴を1通でたどることができます。e-Gov法令検索 住民基本台帳法第17条一方の住民票は現在の住所(と直前の住所)を示すもので、過去の履歴を長くさかのぼる用途には向きません。
混同しやすい!戸籍と住民票の違い
「戸籍」と「住民票」、どちらも公的な証明書ですが、その役割は全く異なります。違いをしっかり理解しておきましょう。
| 項目 | 戸籍 | 住民票 |
|---|---|---|
| 証明する内容 | 出生、婚姻、死亡、親子関係などの身分関係 | 居住地(どこに住んでいるか) |
| 管理場所 | 本籍地の市区町村 | 住所地の市区町村 |
| 編成単位 | 夫婦と未婚の子 | 世帯 |
相続手続きでは、亡くなった方の身分関係を証明するために「戸籍」を、最後の住所地を証明するために「住民票の除票」をそれぞれ取得する必要があります。
戸籍謄本と戸籍の附票、どちらを取ればよい?ケース別の判定
「違いは分かったけれど、自分の手続きではどちらが要るのか」が一番の悩みどころだと思います。証明したいことが「人と人のつながり」なら戸籍謄本、「住所のつながり」なら戸籍の附票、と考えると迷いにくくなります。よくある場面ごとに整理しました。
| 相続人が誰かを確定したい | 戸籍謄本(亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍・除籍・改製原戸籍) |
|---|---|
| 亡くなった方の最後の住所を証明したい | 住民票の除票。市区町村で廃棄されているなど取得できない場合は戸籍の附票で代用します法務局 法定相続情報証明制度の具体的な手続について |
| 登記簿の住所と最後の住所がつながらない | 戸籍の附票(前の本籍のものは「除附票」を取得) |
| 引っ越しが多く住所の履歴をまとめて出したい | 戸籍の附票(本籍を移していれば前の本籍の除附票も) |
| 自分の本籍が分からない | 「本籍地記載あり」の住民票の写しで本籍を確認してから請求します |
実務で多いのは、戸籍謄本と戸籍の附票の両方が必要になるパターンです。相続登記では「相続人が誰か」と「登記簿の名義人が亡くなった方本人か」を同時に示す必要があるためです。どちらも本籍地の市区町村で扱っているので、請求のときにまとめて依頼しておくと、往復の手間が一度で済みます。
関連コラム相続の戸籍謄本集めが楽になる広域交付とは|まとめて取得する方法と注意点▸
相続手続きでの戸籍謄本と戸籍の附票の使い分け
相続の場面では、この2つの書類がそれぞれ別の役割を担います。どこでどちらが求められるのかを、手続きの流れに沿って見ていきましょう。
相続人の確定は「出生から死亡までの戸籍」
相続手続きの出発点は、相続人が誰かを確定させることです。そのため、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍謄本・改製原戸籍を含む)を集めます。転籍や婚姻、戸籍のコンピュータ化のたびに戸籍は作り替えられているため、1通では足りず、複数の市区町村にまたがることも多い作業です。ここで戸籍の附票を集めても相続人の確定にはならないので、混同しないようご注意ください。なお、この戸籍の束は相続税申告でも提出を求められます。相続税申告の必要書類の全体像はこちらの記事で一覧にしていますので、あわせてご確認くださいね。
相続登記では住所のつながりを附票で示す
不動産を相続したときは、相続登記の申請が必要です。令和6年4月1日以降は、所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務化されています。法務局 法定相続情報証明制度について登記簿に記録された住所と、亡くなった時点の最後の住所が引っ越しで食い違っている場合には、戸籍の附票(前の本籍のものは除附票)で住所のつながりを示し、登記名義人と亡くなった方が同一人物であることを証明します。
法定相続情報一覧図を使うと戸籍の束を何度も出さずに済む
集めた戸除籍謄本の束は、法務局・金融機関・税務署などに何度も提出することになりがちです。法定相続情報証明制度を利用すると、戸除籍謄本の束と相続関係を一覧にした図を法務局に提出することで、登記官の認証文が付いた一覧図の写しを無料で交付してもらえます。この写しは戸除籍謄本の束の代わりに使えるため、複数の手続きを並行して進めたいときに負担が大きく減ります。なお、一覧図に記載する「最後の住所」は住民票の除票(取得できない場合は戸籍の附票)で確認するため、ここでも附票が登場します。
関連コラム法定相続情報一覧図の取得方法|必要書類と法務局での手続きを解説▸
戸籍関連の証明書と手数料一覧
戸籍関連の証明書にはいくつか種類があり、手数料も異なります。主な証明書と一般的な手数料をまとめました。
| 証明書の種類 | 手数料(1通あたり) |
| 戸籍全部(個人)事項証明書(戸籍謄本・抄本) | 450円 |
| 除籍・改製原戸籍謄本・抄本 | 750円 |
| 戸籍の附票の写し | 300円(市区町村により異なる場合があります) |
| 身分証明書 | 300円(市区町村により異なる場合があります) |
※手数料は市区町村によって異なる場合がありますので、請求先の役所にご確認ください。相続手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍謄本や改製原戸籍謄本も含む)をすべて集める必要があり、通数が多くなることもあります。
便利になった!戸籍証明書の広域交付制度
これまで戸籍謄本などは本籍地の役所でしか取得できず、遠方の場合は郵送で請求する必要があり手間と時間がかかっていました。しかし、2024年3月1日から戸籍法の一部が改正され、戸籍証明書の広域交付制度がスタートしました。これにより、本籍地が遠くにある場合でも、最寄りの市区町村役場の窓口で戸籍謄本などを請求できるようになりました。ただし、請求できるのは本人、配偶者、直系の親族(父母、子、孫など)が窓口に直接出向く場合に限られます。郵送や代理人による請求は広域交付の対象外なのでご注意ください。また、コンピュータ化されていない一部の戸籍は対象外となります。残念ながら、戸籍の附票の写しは広域交付の対象外です。これまで通り、本籍地の市区町村へ請求する必要があります。政府広報オンライン 戸籍証明書の広域交付制度等の開始(令和6年(2024年)1月掲載)
まとめ
今回は、戸籍と戸籍の附票について解説しました。
- 戸籍は、出生から死亡までの身分関係を証明するものです。
- 戸籍の附票は、戸籍に紐づいた住所の履歴を証明するものです。
- どちらも本籍地の役所で管理されています。
- 相続手続きや不動産登記など、さまざまな場面で必要になる重要な書類です。
- 戸籍謄本は広域交付制度で最寄りの役所でも取得可能になりましたが、戸籍の附票は対象外です。
これらの書類は、特に相続手続きにおいて、亡くなった方を特定し、相続人を確定させるために不可欠です。いざという時に慌てないよう、基本的な知識を持っておくと安心ですね。戸籍の取り寄せは相続税申告の準備とも直結しますが、必要な範囲は事情によって変わりますので、具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。
お問い合わせはこちらこの記事を読んだ方へ
Inheritance Tax
相続税申告は、相続専門の税理士法人へ
公認会計士・税理士が担当し、全国オンラインで対応します。初回のご相談は無料です。
相続税申告のサービスを見る
Price
相続税申告の料金を確認する
遺産総額に応じた明朗な料金体系です。加算報酬の考え方も掲載しています。
料金体系を見る
参考文献
- e-Gov法令検索 戸籍法第13条
- e-Gov法令検索 住民基本台帳法第17条
- 法務局 法定相続情報証明制度について
- 法務局 法定相続情報証明制度の具体的な手続について
- 政府広報オンライン 戸籍証明書の広域交付制度等の開始(令和6年(2024年)1月掲載)
戸籍と戸籍の附票のよくある質問まとめ
Q. 戸籍謄本と戸籍の附票の違いは何ですか?
A. 戸籍謄本は出生・婚姻・死亡・親子関係などの身分関係を証明する書類、戸籍の附票はその戸籍が作られてからの住所の履歴を証明する書類です。戸籍謄本に住所は記載されず、住所の履歴は戸籍の附票で確認します。どちらも本籍地の市区町村で管理されています。
Q. 戸籍謄本に住所は載りますか?
A. 載りません。戸籍に記載されるのは本籍のほか、氏名・出生の年月日・身分事項などです。本籍は戸籍の置き場所を示すもので、実際に住んでいる住所とは別のものです。住所を証明したいときは戸籍の附票または住民票を取得します。
Q. 戸籍ってなんですか?
A. 日本国民の出生、婚姻、死亡などの身分関係を記録・証明する公的な文書です。一つの戸籍は、原則として一組の夫婦と、その夫婦の未婚の子で構成されます。
Q. 戸籍謄本と戸籍抄本の違いは何ですか?
A. 戸籍謄本は、戸籍に記録されている全員分の内容を証明するものです。一方、戸籍抄本は、戸籍に記録されている人のうち、特定の一人または複数人分のみを証明するものです。現在はそれぞれ「全部事項証明書」「個人事項証明書」が正式名称です。
Q. 戸籍の附票(ふひょう)とは何ですか?
A. その戸籍が作られてから現在までの住所の履歴を記録したものです。戸籍とセットで本籍地の市区町村で管理されています。
Q. 相続手続きでは戸籍謄本と戸籍の附票のどちらが必要ですか?
A. 相続人を確定するためには亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。加えて、相続登記で登記簿上の住所と最後の住所が異なる場合など、住所のつながりを示す場面では戸籍の附票が必要になります。両方を求められることも多いため、請求時にまとめて依頼すると効率的です。
Q. 戸籍の附票はどんなときに必要になりますか?
A. 住所の変遷を証明する必要があるときに使います。例えば、相続手続きや、不動産登記で登記簿上の住所と現住所が異なる場合、自動車の廃車手続きなどで必要になることがあります。
Q. 戸籍の附票の写しはどこで取得できますか?
A. 本籍地のある市区町村の役所で取得できます。窓口での請求のほか、郵送請求や、自治体によってはマイナンバーカードを利用したコンビニ交付サービスでも取得可能です。なお、戸籍の附票の写しは広域交付の対象外です。
Q. 戸籍の附票の保存期間はどのくらいですか?
A. 2019年6月20日以降に除票となった戸籍の附票は、除かれてから150年間保存されます。ただし、それ以前に当時の保存期間(5年間)が経過して廃棄されたものは取得できない場合があります。古い住所履歴が必要なときは早めに本籍地の市区町村へ確認しましょう。
Q. 自分の本籍地がわからない場合はどうすればいいですか?
A. お住まいの市区町村で「本籍地記載あり」の住民票の写しを取得することで確認できます。


