誰かから財産をもらったときにかかる「贈与税」。実は、財産をもらった人(受贈者)がどこに住んでいるか、日本国籍があるか、そして財産をあげた人(贈与者)がどんな状況かによって、税金がかかる財産の範囲が変わってくるんです。特に、ご家族が海外に住んでいたり、国際結婚をされていたりすると、「海外の財産をもらっても日本の贈与税がかかるの?」と不安になりますよね。
先に結論をお伝えすると、贈与税の納税義務者は「居住無制限」「非居住無制限」「居住制限」「非居住制限」の4つに分かれます。「無制限」の2つは国内・国外のすべての財産が、「制限」の2つは日本国内にある財産だけが課税対象ですe-Gov法令検索 相続税法第1条の4。この記事では、4つの区分の分かれ目と判定の手順を、現在のルールに沿ってできるだけ分かりやすくご説明しますね。
贈与税の納税義務者は4つに分かれる
贈与税を納める義務がある人を「納税義務者」といいます。贈与税は原則として財産をもらった人(受贈者)が納めるもので、その受贈者が次の4つのどれに当たるかで、課税される財産の範囲が決まります。
| 納税義務者の区分 | 贈与を受けた時の 受贈者の住所 |
課税される財産の範囲 |
|---|---|---|
| 居住無制限納税義務者 | 日本国内にある | 国内財産+国外財産(すべての財産) |
| 非居住無制限納税義務者 | 日本国内にない | 国内財産+国外財産(すべての財産) |
| 居住制限納税義務者 | 日本国内にある | 国内財産のみ |
| 非居住制限納税義務者 | 日本国内にない | 国内財産のみ |
この表のポイントは、日本に住んでいるかどうかだけでは「無制限」か「制限」かが決まらないことです。日本に住んでいても国内財産だけの課税になる人(居住制限)がいる一方で、海外に住んでいても国外財産まで課税される人(非居住無制限)がいます。この分かれ目になるのが、受贈者の国籍・過去10年の住所、そして贈与者の状況です国税庁 No.4432 受贈者が外国に居住しているとき。
「住所」は生活の本拠で判断する
区分の出発点は、財産をもらった時点での「住所」です。相続税法でいう住所は、住民票の場所ではなく「生活の本拠(生活の中心地)」のことで、客観的な事実から判断されます国税庁 第1条の3《相続税の納税義務者》及び第1条の4《贈与税の納税義務者》共通関係。
たとえば日本国籍の方(または永住者の方)が次のような理由で日本を離れているときは、原則として住所は日本国内にあるものとして扱われます。
- 日本にいる家族の扶養親族として、留学している人
- 海外での勤務などが短期間(おおむね1年以内)と見込まれる人(同居している配偶者などの家族を含む)
- 海外出張などで一時的に日本を離れているだけの人
なお、所得税では「1年以上日本に居所がある人」も居住者に含めますが、贈与税の納税義務者の判定はあくまで「住所」で行います。所得税の居住者・非居住者の区分とは考え方が違うので、混同しないよう気をつけたいですね。
判定に出てくる3つの用語
4つの区分を見分けるには、受贈者側の「一時居住者」と、贈与者側の「外国人贈与者」「非居住贈与者」という用語を押さえておく必要があります。
| 一時居住者 (受贈者側) |
贈与の時に在留資格を持って日本に住んでいて、贈与前15年以内に日本に住所があった期間の合計が10年以下の人 |
|---|---|
| 外国人贈与者 (贈与者側) |
贈与の時に在留資格を持ち、日本に住所があった贈与者 |
| 非居住贈与者 (贈与者側) |
贈与の時に日本に住所がなく、①贈与前10年以内に日本に住所があったがその間ずっと日本国籍がなかった人、または②贈与前10年以内に日本に住所がなかった人 |
ここでいう「在留資格」は、就労や留学などの活動に応じた在留資格を指します。永住者や日本人の配偶者などの身分にもとづく在留資格の方は含まれないため、一時居住者や外国人贈与者には当たりません。また、日本国籍と外国籍の両方を持つ二重国籍の方は「日本国籍がある人」として判定します。
日本に住んでいる受贈者の区分
贈与を受けた時に日本国内に住所がある人は、「居住無制限納税義務者」か「居住制限納税義務者」のどちらかになります。
居住無制限納税義務者
日本に住所がある受贈者は、原則として居住無制限納税義務者です。国籍にかかわらず、日本に生活の本拠がある人が財産をもらったら、国内・国外のすべての財産に贈与税がかかります。
例えば、日本に住んでいるAさんが、アメリカに住む日本国籍の親からハワイの不動産を贈与された場合、そのハワイの不動産も日本の贈与税の対象になります。
居住制限納税義務者(一時居住者の特例)
日本に住んでいる人のうち、一時居住者が、外国人贈与者または非居住贈与者から財産をもらった場合だけは「居住制限納税義務者」となり、国内財産だけが課税対象になります。
たとえば、仕事のために在留資格を得て日本に5年住んでいる外国籍のCさんが、同じく在留資格で日本に住む外国籍の親から本国の預金を贈与されたケースです。この場合、国外にある預金には日本の贈与税はかかりません。日本で働くために滞在している外国人の方の、本国にある財産のやり取りにまで日本の税金が及ばないようにするための仕組みといえます。
反対に、同じCさんでも、日本に長く住んでいる日本国籍の方から贈与を受けた場合は、贈与者が外国人贈与者・非居住贈与者のどちらにも当たらないため、居住無制限納税義務者として国外財産まで課税されます。
海外に住んでいる受贈者の区分
贈与を受けた時に日本国内に住所がない人は、「非居住無制限納税義務者」か「非居住制限納税義務者」のどちらかになります。海外に住んでいても無制限になるケースが意外と広いので、ここはしっかり確認しておきたいところです。
非居住無制限納税義務者
海外に住んでいる受贈者でも、次のどれかに当てはまると非居住無制限納税義務者となり、国外財産まで課税されます。
- 日本国籍があり、贈与前10年以内に日本に住所があった受贈者(贈与者がどんな人でも該当)
- 日本国籍があり、贈与前10年以内に日本に住所がなかった受贈者で、贈与者が外国人贈与者・非居住贈与者のどちらでもない場合
- 日本国籍がない受贈者で、贈与者が外国人贈与者・非居住贈与者のどちらでもない場合
2つ目と3つ目は、言い換えると「日本に住んでいる日本人の親などから贈与を受けた」ケースです。たとえば、ずっとアメリカで暮らしているアメリカ国籍のお孫さんであっても、日本に住む日本国籍の祖父母からアメリカの預金を贈与されれば、その預金にも日本の贈与税がかかります。
これは、贈与税を避けるために家族で海外へ移ったり、海外の財産に替えたりしても、日本とのつながりが強いうちは課税を逃れられないようにするためのルールです。
非居住制限納税義務者
海外に住んでいる受贈者のうち、非居住無制限納税義務者に当たらない人が「非居住制限納税義務者」で、国内財産だけが課税対象になります。典型的なのは次のようなケースです。
- 受贈者が日本国籍で、受贈者自身も贈与者も10年以上日本に住所がない(贈与者が非居住贈与者に当たる)
- 受贈者が外国籍で、贈与者も日本に住んだことのない外国籍の人(非居住贈与者に当たる)
- 受贈者が外国籍で、贈与者が在留資格を持って日本に住む外国籍の人(外国人贈与者に当たる)
例えば、ずっとアメリカに住んでいるアメリカ国籍のBさんが、日本に住んだことのないアメリカ国籍の親からアメリカ国内の預金を贈与されても、日本の贈与税はかかりません。しかし、日本にある不動産を贈与された場合は、その不動産には日本の贈与税がかかります。
なお、国外転出時課税(出国時に株式などの含み益に所得税がかかる制度)の納税猶予を受けている人が贈与をした場合は、贈与前10年以内に日本に住所があったものとみなして判定する特別なルールがあります。該当しそうな方は個別に確認が必要です。
納税義務者の判定フローと早見表
ここまでの内容を、判定の順番に沿って整理します。ご自身がどの区分に当てはまるか確認してみてくださいね。
納税義務者の判定フロー
Step 1: 贈与を受けた時、日本に住所(生活の本拠)がありますか?
- はい → Step 2へ
- いいえ → Step 3へ
Step 2: あなたは一時居住者で、かつ贈与者が外国人贈与者または非居住贈与者ですか?
- はい → 「居住制限納税義務者」(国内財産のみ課税)
- いいえ → 「居住無制限納税義務者」(すべての財産に課税)
Step 3: あなたは日本国籍があり、贈与前10年以内に日本に住所がありましたか?
- はい → 「非居住無制限納税義務者」(すべての財産に課税)
- いいえ → Step 4へ
Step 4: 贈与者は外国人贈与者または非居住贈与者ですか?
- はい → 「非居住制限納税義務者」(国内財産のみ課税)
- いいえ → 「非居住無制限納税義務者」(すべての財産に課税)
※上記は判定の流れを簡略化したものです。住所の判断や国外転出時課税の特例など、個別の事情によって結論が変わることがあります。
受贈者と贈与者の組み合わせ早見表
| 受贈者の状況 | 贈与者が右記以外 (日本在住の日本人など) |
贈与者が外国人贈与者 または非居住贈与者 |
|---|---|---|
| 日本に住所あり(一時居住者でない) | 居住無制限 | 居住無制限 |
| 日本に住所あり(一時居住者) | 居住無制限 | 居住制限 |
| 日本に住所なし・日本国籍あり (10年以内に日本に住所あり) |
非居住無制限 | 非居住無制限 |
| 日本に住所なし・日本国籍あり (10年以内に日本に住所なし) |
非居住無制限 | 非居住制限 |
| 日本に住所なし・日本国籍なし | 非居住無制限 | 非居住制限 |
表の右の列にだけ「制限」が出てくることから分かるように、「制限」になるには贈与者側の条件(外国人贈与者か非居住贈与者であること)が必要です。受贈者が海外に住んでいるだけでは、制限納税義務者にはなりません。
国内財産か国外財産かの見分け方
制限納税義務者の場合、もらった財産が「日本国内にあるかどうか」で課税されるかが決まります。財産の所在は、財産の種類ごとに次のように決められていますe-Gov法令検索 相続税法第10条。
| 不動産・動産 | その不動産や動産がある場所 |
|---|---|
| 預金・貯金 | 預け入れた金融機関の営業所(支店など)がある場所 |
| 株式・社債 | 発行した法人の本店または主たる事務所がある場所 |
| 貸付金債権 | 債務者の住所または本店がある場所 |
| 国債・地方債 | 日本国内にあるものとして扱う |
例えば、日本の銀行の東京支店に預けてある預金は、受け取る人が海外にいても国内財産です。また、財産の所在はもらった時点の状況で判断します。
海外が絡む贈与で押さえておきたい注意点
基礎控除110万円は区分にかかわらず使える
暦年課税の基礎控除110万円は、納税義務者の区分による制限はなく、非居住者の方でも差し引くことができますe-Gov法令検索 租税特別措置法第70条の2の4。制限納税義務者であれば、課税対象になる国内財産の合計から110万円を差し引いて計算します。
海外在住なら納税管理人を定める
日本に住所がない方が日本で贈与税の申告をする必要がある場合は、納税管理人と納税地を定めて、その所轄の税務署長に申告と納税をします。あわせて「納税管理人届出書」の提出も必要です。申告期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までで、海外在住でも変わりません国税庁 No.4429 贈与税の申告と納税。
海外でも課税されたら外国税額控除
国外の財産をもらい、その国でも日本の贈与税にあたる税金が課された場合は、一定の上限の範囲で、その税額を日本の贈与税から差し引くことができますe-Gov法令検索 相続税法第21条の8。同じ財産に日本と外国の両方で税金がかかる二重課税を調整するための仕組みです。
改正前の「出国後2年」の取扱いに注意
贈与税の納税義務者のルールは、ここ10年ほどの間に何度か見直されています。インターネット上には、日本に長く住んでいた外国人が出国してから2年以内に行った贈与を特別に扱っていた頃の説明など、改正前のルールにもとづく情報が残っていることがあります。
出国後2年の取扱いは、平成30年4月1日から令和3年3月31日までの贈与について設けられていたもので国税庁 非居住無制限納税義務者が短期非居住贈与者から贈与を受けた場合の贈与税の申告手続、現在の規定にはその区分はありません。今の贈与を判定するときは、この記事でご説明した「10年」「15年のうち10年以下」の基準で確認してくださいね。
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まとめ
贈与税の納税義務者は、受贈者の「住所」「国籍」「過去10年の住所」と、贈与者が「外国人贈与者」「非居住贈与者」に当たるかどうかで、4つの区分に分かれます。無制限納税義務者なら国内外すべての財産が、制限納税義務者なら国内財産だけが課税対象です。
特に、海外に住んでいても日本に住む日本人の家族から贈与を受ければ国外財産まで課税されることや、日本に住んでいても一時居住者なら国内財産だけになる場合があることは、見落とされやすいポイントです。国境をまたぐ財産のやり取りは、住所の判断や財産の所在の確認も含めて判定が難しくなりがちです。判断に迷う場合や手続きに不安がある場合は、早めに税理士などの専門家にご相談くださいね。
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参考文献
- e-Gov法令検索 相続税法第1条の4
- 国税庁 No.4432 受贈者が外国に居住しているとき
- 国税庁 第1条の3《相続税の納税義務者》及び第1条の4《贈与税の納税義務者》共通関係
- e-Gov法令検索 相続税法第10条
- e-Gov法令検索 租税特別措置法第70条の2の4
- 国税庁 No.4429 贈与税の申告と納税
- e-Gov法令検索 相続税法第21条の8
- 国税庁 非居住無制限納税義務者が短期非居住贈与者から贈与を受けた場合の贈与税の申告手続
贈与税の納税義務者に関するよくある質問まとめ
Q. 贈与税は誰が払うのですか?
A. 贈与税は、原則として財産をもらった人(受贈者)が納税義務者となります。財産をあげた人(贈与者)ではありません。
Q. 制限納税義務者とは何ですか?
A. 制限納税義務者とは、日本国内にある財産をもらった場合にだけ贈与税が課される人のことです。日本に住む一時居住者が外国人贈与者・非居住贈与者から贈与を受けた「居住制限納税義務者」と、海外に住む受贈者が外国人贈与者・非居住贈与者から贈与を受けた場合などの「非居住制限納税義務者」の2つがあります。
Q. 無制限納税義務者とは何ですか?
A. 無制限納税義務者とは、国内・国外を問わず、もらったすべての財産に贈与税が課される人のことです。日本に住所がある人(一部の一時居住者を除く)が「居住無制限納税義務者」、海外に住んでいても日本国籍があり10年以内に日本に住所があった人や、日本在住の日本人などから贈与を受けた人が「非居住無制限納税義務者」になります。
Q. 贈与税の「居住者」と「非居住者」はどう区別しますか?
A. 贈与税の納税義務者の判定では、贈与を受けた時に日本国内に住所(生活の本拠)があるかどうかで区別します。所得税のように「1年以上の居所」で判定するものではありません。扶養されている留学生や、おおむね1年以内の海外勤務の人などは、日本に住所があるものとして扱われます。
Q. 海外に住んでいる親から、海外の銀行預金をもらいました。贈与税はかかりますか?
A. あなたが日本に住んでいれば、原則として居住無制限納税義務者となり、海外の預金にも贈与税がかかります。ただし、あなたが在留資格で日本に住む一時居住者で、親が非居住贈与者に当たる場合は、居住制限納税義務者となり海外の預金には課税されません。
Q. 私も親もずっと海外暮らしです。日本の贈与税は関係ありますか?
A. あなたも親も10年以上日本に住所がなければ、親は非居住贈与者に当たるため、あなたは非居住制限納税義務者となり、日本の贈与税がかかるのは日本国内にある財産だけです。日本の不動産や日本の銀行の預金などをもらった場合は課税対象になります。
Q. 海外に住む外国籍の孫に、日本に住む祖父母がお金を贈与すると日本の贈与税はかかりますか?
A. 日本に住む日本国籍の祖父母は外国人贈与者にも非居住贈与者にも当たらないため、お孫さんは非居住無制限納税義務者となります。そのため、海外の口座から渡した場合でも日本の贈与税の対象になります。


