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国外財産調書の為替レート|12月31日のTTB換算と5000万円判定

目次
  1. 国外財産調書の為替レートは12月31日のTTB
  2. 国外財産調書制度の概要
  3. 邦貨換算に使う相場の決まり
  4. 12月31日に相場が無い場合の扱い
  5. 国外財産調書に記載する価額の算定方法
  6. 時価とは
  7. 見積価額の主な算定方法
  8. 借入金は差し引けない
  9. 国外財産に当たるかどうかの判定
  10. 国内支店の外貨預金は対象外
  11. 有価証券は口座の所在で判定
  12. 為替レートで5,000万円判定が変わる設例
  13. 設例の前提
  14. ケース1:TTBが1ドル148円の場合
  15. ケース2:TTBが1ドル146円の場合
  16. 実務での確認ポイント
  17. 国外財産調書の提出期限と加算税の軽減・加重
  18. 提出期限は翌年6月30日
  19. 過少申告加算税等の軽減措置と加重措置
  20. 財産債務調書との関係
  21. まとめ
  22. 参考文献
  23. 国外財産調書の為替レートのよくある質問まとめ

「海外の銀行口座と米国株を持っているが、国外財産調書の5,000万円はどの為替レートで判定するのか」「年末に円安が進むと、提出が必要になるのか」といったご相談をいただくことがあります。この記事は、海外預金・海外株式・海外不動産などを保有する経営者・事業者・資産家の方に向けて、国外財産調書の為替レートと財産の価額の算定方法を、国税庁の一次情報に沿って整理したものです。

結論から申し上げると、外貨で表示される国外財産は、その年の12月31日に、ご自身の取引金融機関が公表する最終の対顧客直物電信買相場(TTB)またはこれに準ずる相場で円に換算します。預貯金のように預入先の金融機関が特定されている財産は、その預入先の金融機関が公表する相場を使います。12月31日に相場が無い場合は、同日前で最も近い日の相場によります。換算後の合計額が5,000万円を超えれば、翌年6月30日までに国外財産調書を提出します。

国外財産調書の為替レートは12月31日のTTB

まずは、国外財産調書の制度の枠組みと、外貨建て財産を円に換算するときのルールを確認します。為替レートの選び方は判定と記載の両方に影響するため、最初に押さえておきたいポイントです。

国外財産調書制度の概要

国外財産調書は、居住者(非永住者を除きます)で、その年の12月31日においてその価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する方が、国外財産の種類、数量および価額その他必要な事項を記載して、その年の翌年の6月30日までに住所地等の所轄税務署長に提出する書類です国税庁 No.7456 国外財産調書の提出義務。提出の際は「国外財産調書合計表」を作成して添付します。

居住者に当たるかどうかは、その年の12月31日の現況で判定します。つまり、提出義務の判定も、財産の価額も、為替の換算も、すべて12月31日という1つの時点を基準に組み立てられている点が、この制度の特徴です。

関連コラム海外資産の相続税申告と国外財産調書|申告漏れのリスクと調査▸

邦貨換算に使う相場の決まり

国外財産調書に記載する価額は円(邦貨)で表示します。国外財産の価額が外国通貨で表示される場合は、その年の12月31日における外国為替の売買相場により円に換算するものとされています国税庁 国外財産調書制度(FAQ)。

具体的な相場の取り方は、国税庁の法令解釈通達(通達5−14)で次のように定められています国税庁 内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国外財産調書及び財産債務調書関係)の取扱いについて(法令解釈通達)。

基準日 その年の12月31日
使う相場の種類 いわゆる対顧客直物電信買相場(TTB)またはこれに準ずる相場
どの金融機関の相場か 国外財産調書を提出する方の取引金融機関が公表する最終の相場
預金等で預入先が
特定されている場合
その預金等を預け入れている金融機関が公表する相場
12月31日に相場が
無い場合
同日前の相場のうち、同日に最も近い日の相場

ここでいう相場は「買相場」であり、仲値(TTM)ではありません。外国為替の相場には仲値・買相場・売相場があるため、どの相場を見ているのかを最初に確認しておくことが大切です。

12月31日に相場が無い場合の扱い

金融機関によっては、12月31日付けの相場が公表されていない場合もあります。その場合は、12月31日より前で、同日に最も近い日に公表された相場を使います。翌年1月の相場を使うのではない点に注意が必要です。

実務では、取引金融機関のウェブサイトなどで年末最終の公表相場を確認し、その日付と数値を記録に残しておくと、後から換算の根拠を説明しやすくなります。外貨預金を複数の金融機関に分けている場合は、預金ごとに預入先の相場をそろえて確認することになります。

国外財産調書に記載する価額の算定方法

為替レートを当てはめる前に、まず外貨建てのままで「12月31日時点の価額」を財産ごとに確定させる必要があります。国外財産調書に記載する価額は、その年の12月31日における「時価」、または時価に準ずるものとしての「見積価額」によります。時価の算定が難しい財産もあるため、見積価額で記載しても差し支えないとされています。

時価とは

時価は、12月31日時点の財産の状態を前提に、不特定多数の当事者が自由に取引するとしたら通常成り立つと考えられる価額のことです。たとえば動産や不動産は専門家による鑑定評価額、上場株式等は金融商品取引所等が公表する12月31日の最終価格(同日の最終価格が無い場合は、同日前の最終価格のうち同日に最も近い日の価格)などです。

見積価額の主な算定方法

見積価額は、その財産の取得価額や売買実例価額などを基に、合理的な方法により算定した価額です。財産の種類ごとの主な例は次のとおりです。

預貯金 12月31日における預入高(満期前の定期預金等は、契約時に預け入れた元本の金額とすることも可)
土地 外国で固定資産税に相当する租税が課される場合のその課税標準額、取得価額に合理的な価格変動率を乗じた価額、翌年1月1日から提出期限までに譲渡した場合の譲渡価額のいずれか
建物 土地と同様の方法、または業務用以外の建物であれば取得価額から経過年数に応ずる償却費の額(定額法)を控除した金額
上場されていない
有価証券
12月31日の適正な売買実例価額、翌年の提出期限までの譲渡価額、発行法人の決算書等に基づく純資産価額に持株割合を乗じた価額、取得価額の順で算定
貸付金・未収入金 12月31日における元本の額
事業用の
減価償却資産
12月31日における償却後の価額

また、相続税・贈与税の財産評価に使う財産評価基本通達の方法で評価した価額としても差し支えないとされています。海外不動産のように外国通貨で取得価額や課税標準額が示される財産は、上の方法で外貨建ての価額を求めたうえで、12月31日のTTBで円に換算します。

借入金は差し引けない

国外財産を金融機関からの借入金で取得している場合でも、その財産の時価や見積価額を算定する際に借入金元本の額を差し引くことはできません。たとえば外貨建てローンで海外不動産を購入していても、不動産の価額そのものを記載し、5,000万円の判定にもそのまま含めます。

なお、財産債務調書では債務も記載しますが、外貨建ての債務は対顧客直物電信売相場(TTS)またはこれに準ずる相場で換算するとされており、財産(TTB)と相場の種類が異なります。両方の調書を作る方は、財産と債務で相場を取り違えないよう注意が必要です。

国外財産に当たるかどうかの判定

為替換算の対象になるのは、あくまで「国外にある財産」です。外貨建てであっても国外財産に当たらないものがあり、ここを誤ると5,000万円の判定額が大きくずれます。

国内支店の外貨預金は対象外

預貯金が国外にあるかどうかは、円建て・外貨建てを問わず、預金を受け入れた金融機関の営業所等の所在で判定します。そのため、国内の銀行の国内支店に開設した外貨預金は、国外財産調書の記載対象になりません。外国銀行の国内支店に預けている預金も同様です。

関連コラム外貨預金の相続税評価|TTBレートでの換算方法と手続きを解説▸

有価証券は口座の所在で判定

金融商品取引業者等の口座で管理されている有価証券は、原則としてその口座が開設された営業所等の所在で判定します。発行会社が外国法人か内国法人かよりも、どこの口座で管理しているかが先に効いてくる点がポイントです。

管理の方法 内国法人が発行した
有価証券等
外国法人が発行した
有価証券等
国内の金融商品取引業者等の口座で管理 国内 国内
国外の金融商品取引業者等の口座で管理 国外 国外
上記以外 国内 国外

たとえば、日本の証券会社の口座で保有している米国株は国内にある財産として扱われ、国外財産調書の対象になりません。一方、米国の証券会社の口座で保有している米国株は国外財産となり、12月31日の価額をTTBで円換算して記載します。

為替レートで5,000万円判定が変わる設例

ここでは、為替レートが提出義務の判定にどう影響するかを、自前の設例で確認します。数値はすべて説明用に設定したもので、実際の相場ではありません。

設例の前提

経営者Aさんは、12月31日時点で次の国外財産を保有しているとします。日本国内の証券口座や国内支店の外貨預金は、前の章のとおり国外財産に当たらないため含めていません。

米国の銀行の米ドル預金 預入高18万ドル
米国の証券会社の口座で
保有する米国上場株式
12月31日の最終価格による評価額16万ドル
換算に使う相場 米ドル預金は預入先の金融機関、株式はAさんの取引金融機関が公表するTTB(説明を簡単にするため、設例ではいずれも同じ相場とします)

ケース1:TTBが1ドル148円の場合

米ドル預金:18万ドル × 148円 = 2,664万円
米国上場株式:16万ドル × 148円 = 2,368万円
国外財産の合計額:2,664万円 + 2,368万円 = 5,032万円

合計額が5,000万円を超えるため、Aさんは翌年6月30日までに国外財産調書を提出する必要があります。

ケース2:TTBが1ドル146円の場合

米ドル預金:18万ドル × 146円 = 2,628万円
米国上場株式:16万ドル × 146円 = 2,336万円
国外財産の合計額:2,628万円 + 2,336万円 = 4,964万円

外貨建ての財産額がまったく同じでも、相場が1ドルあたり2円違うだけで合計額は68万円変わり、5,000万円を超えない結果になります。このように、5,000万円の前後に位置する方ほど、どの金融機関の、どの日付の、どの種類の相場を使うかが判定を左右します。仲値(TTM)や翌年1月の相場で計算してしまうと、本来の判定と結論が入れ替わるおそれがあります。

ケース1(148円) 合計5,032万円で提出が必要
ケース2(146円) 合計4,964万円で提出は不要

実務での確認ポイント

実務では、次の順で作業すると漏れや取り違えを防ぎやすくなります。

  1. 保有財産を一覧にし、口座の所在などから国外財産に当たるものを選ぶ
  2. 財産ごとに、12月31日時点の外貨建ての時価または見積価額を確定させる
  3. 預金は預入先の金融機関、それ以外は取引金融機関の12月31日(相場が無ければ同日前の最も近い日)のTTBを確認する
  4. 円換算額を合計し、5,000万円を超えるかを判定する
  5. 使った相場の金融機関名・日付・数値を記録として残す

なお、国外財産調書に記載する価額は調書のための価額であり、所得税の課税標準や相続税・贈与税の課税価格は、それぞれの税法の規定に基づいて計算します。調書の価額がそのまま税額計算に使われるわけではない点もあわせて押さえておきましょう。

国外財産調書の提出期限と加算税の軽減・加重

換算と判定が済んだら、提出期限と、提出の有無が加算税に与える影響を確認します。

提出期限は翌年6月30日

国外財産調書の提出期限は、その年の翌年の6月30日です。令和4年分以前は翌年3月15日でしたが、現在は6月30日に改められています。たとえば令和8年12月31日時点で判定する令和8年分は、令和9年6月30日までの提出となります。

提出はe-Taxで行うほか、書面で作成して持参または送付することもできます国税庁 F4-4 国外財産調書(同合計表)。提出した調書に誤りや記載漏れがあった場合は、提出期限後でも再提出による訂正が可能ですが、その際は誤った財産だけでなく、すべての国外財産を記載し直します。

過少申告加算税等の軽減措置と加重措置

国外財産調書には、適正な提出を促すための加算税の特例があります。

軽減措置 提出期限内に提出された調書に記載がある国外財産について、所得税・相続税の申告漏れが生じた場合、その国外財産に係る過少申告加算税等が5%軽減
加重措置 提出期限内に調書の提出が無い、または記載すべき国外財産の記載が無い(重要なものの記載が不十分な場合を含む)ときに、その国外財産に関して所得税・相続税の申告漏れ(死亡した方に係るものを除く)が生じた場合、過少申告加算税等が5%加重
書類の提示等が
無い場合
税務職員から国外財産の取得・運用・処分に係る書類の提示等を求められ、指定された期限(求められた日から60日を超えない範囲)までに提示等が無いときは、軽減措置を適用せず、加重措置は10%に

提出期限後に提出した場合でも、調査があったことにより更正または決定があるべきことを予知してされたものでなく、調査通知がある前に提出したときは、期限内に提出されたものとみなして特例が適用されます。また、正当な理由なく提出期限までに提出しなかった場合や、偽りの記載をして提出した場合には、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となる規定もあります。

財産債務調書との関係

所得や財産の規模によっては、財産債務調書の提出も必要になります。財産債務調書を提出する方でも、国外財産の合計額が5,000万円を超えれば国外財産調書の提出も必要です。この場合、財産債務調書には国外財産の明細は記載せず、「国外財産調書に記載した国外財産の価額の合計額」などを記載します。国外にある債務は財産債務調書に記載します。

関連コラム財産債務調書の提出義務者は誰?基準となる所得と財産額をわかりやすく解説▸

国外財産の合計額が5,000万円の前後で推移している方や、海外不動産・非上場の海外法人株式のように見積価額の算定に判断を要する財産をお持ちの方は、年末の相場と財産の評価を早めに確認しておくことが大切です。換算や記載の方法に迷う場合は、まずは税理士にご相談ください。

まとめ

国外財産調書の為替レートは、12月31日の取引金融機関のTTBが基本です。要点は次のとおりです。

  • 外貨建ての国外財産は、12月31日に取引金融機関が公表する最終のTTBまたはこれに準ずる相場で円換算する
  • 預金で預入先が特定されている場合は、その預入先の金融機関の相場を使う
  • 12月31日に相場が無ければ、同日前で最も近い日の相場を使う
  • 価額は12月31日の時価または見積価額で、借入金を差し引くことはできない
  • 国内支店の外貨預金や国内の証券口座で管理する外国株式は、国外財産に当たらない
  • 5,000万円の前後では、相場のわずかな差で提出義務の判定が変わることがある
  • 提出期限は翌年6月30日で、提出の有無により過少申告加算税等が5%軽減または加重される

相場の取り方と財産の価額の算定を正しく行うことが、適正な判定と記載の出発点になります。具体的なケースについては、税理士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

国外財産調書の為替レートのよくある質問まとめ

Q.国外財産調書の為替レートはTTMとTTBのどちらを使いますか?

A.TTB(対顧客直物電信買相場)またはこれに準ずる相場を使います。その年の12月31日に、国外財産調書を提出する方の取引金融機関が公表する最終の相場で円に換算します。

Q.12月31日に為替相場が公表されていない場合はどうしますか?

A.12月31日より前の相場のうち、同日に最も近い日の相場を使います。翌年1月の相場を使うのではありません。

Q.海外の銀行に預けた外貨預金は、どの金融機関の相場で換算しますか?

A.預入先の金融機関が特定されている預貯金等は、その預金を預け入れている金融機関が公表する相場で換算します。

Q.日本の証券会社で買った米国株は国外財産調書に記載しますか?

A.国内の金融商品取引業者等の口座で管理している有価証券は国内にある財産として扱われるため、国外財産調書の記載対象になりません。国外の証券会社の口座で管理している場合は国外財産に当たります。

Q.借入金で買った海外不動産は、借入金を差し引いて判定できますか?

A.差し引けません。国外財産の時価または見積価額の算定に当たり、借入金元本の額を差し引くことはできないとされています。

Q.国外財産調書の提出期限はいつですか?

A.その年の翌年の6月30日です。令和4年分以前は翌年3月15日でしたが、現在は6月30日となっています。

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