この記事は、合同会社の代表社員・業務執行社員の方、資産管理会社として合同会社をお持ちの方、そして決算を担当する経理の方に向けた解説です。「株式会社には定時株主総会があるのに、合同会社は決算のときに何をすればよいのか分からない」と迷われる方は少なくありません。
先に結論をお伝えします。会社法には、株式会社の定時株主総会のように合同会社に定時社員総会の開催を義務づける規定は置かれていません。一方で、計算書類の作成・保存の義務はあり、法人税は事業年度終了の日の翌日から2か月以内に「確定した決算」に基づいて申告する必要があります。そのため実務では、社員の同意書や決定書で決算を承認し、記録を残しておく形が多く見られます。社員総会を置くかどうか、どのように決算を承認するかは定款の定めによって異なりますので、まずはご自身の会社の定款を確認するところから始めましょう。
合同会社の定時社員総会の要否
最初に、会社法の条文の上で株式会社と合同会社がどう違うのかを整理します。名前が似ている「定時株主総会」と「社員総会」ですが、法律上の位置づけは大きく異なります。
株式会社の定時株主総会との違い
株式会社については、会社法第296条第1項で次のように定められています。
定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
さらに会社法第438条により、計算書類は原則として定時株主総会に提出し、その承認を受けることとされていますe-Gov法令検索 会社法。
これに対して、合同会社を含む持分会社(合名会社・合資会社・合同会社の総称)の章には、定時総会の招集を義務づける規定や、計算書類を総会で承認させる規定は設けられていません。合同会社は社員自身が業務を執行することを前提にした会社の形であり、会議体を通じて経営者を監督する株式会社とは仕組みが異なることが背景にあると考えられます。
| 株式会社 | 定時株主総会の招集が会社法で義務づけられ、計算書類は定時株主総会の承認を受ける |
|---|---|
| 合同会社 | 定時社員総会の開催を義務づける規定は無く、業務の決定方法は定款の定めによる |
| 計算書類の作成 | どちらも各事業年度ごとに作成し、作成時から10年間保存する |
定款自治と社員総会の位置づけ
合同会社は、会社の内部のルールを定款で柔軟に決められる「定款自治」の幅が広い会社です。法律上の義務が無いからといって社員総会を置けないわけではなく、定款に「社員総会」や「定時社員総会」の規定を設けている合同会社もあります。
定款に「毎事業年度終了後3か月以内に定時社員総会を招集する」「計算書類は社員総会の承認を受ける」といった定めがある場合、その会社では定款に沿った手続きが必要になります。設立時にひな形をそのまま使い、社員総会の条項が入っていることに気付いていないケースもありますので、決算の前に一度定款の条文を読み直しておくと安心です。
なお、会社法第637条により、定款の変更は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって行うこととされています。社員総会の規定を加える・外すといった変更も、この手続きによることになります。
持分会社の業務執行の決定方法
総会が義務でないとすれば、合同会社の重要な事項は誰がどのように決めるのでしょうか。会社法は、業務の執行と決定の方法を次のように定めています。
社員による業務執行と過半数での決定
会社法第590条では、社員は定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行するとされています。社員が2人以上いる場合、業務は定款に別段の定めがある場合を除き社員の過半数で決定し、日常の業務(常務)は各社員が単独で行えます。ただし、常務の完了前に他の社員が異議を述べた場合は単独では行えません。
業務執行社員を定款で定めた場合
定款で業務を執行する社員(業務執行社員)を定めた場合で、業務執行社員が2人以上いるときは、会社法第591条により、定款に別段の定めがある場合を除き業務執行社員の過半数で業務を決定します。ただし、支配人の選任・解任は、定款で別段の定めをしない限り社員の過半数で決めることとされています。
| 業務執行社員の定めが無い場合 | 社員の過半数で業務を決定(定款に別段の定めがある場合を除く) |
|---|---|
| 業務執行社員を定款で 定めた場合 |
業務執行社員の過半数で業務を決定(定款に別段の定めがある場合を除く) |
| 日常の業務(常務) | 各社員(業務執行社員)が単独で行える。完了前に他の社員が異議を述べた場合を除く |
| 定款の変更 | 定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意 |
決算の承認を「業務の決定」の一つとして扱うのか、定款に定めた社員総会で扱うのかは、会社ごとの定款の書き方で変わります。解釈が分かれそうな場合は、定款の条文を前提に専門家へ確認しておくことをおすすめします。
合同会社の計算書類の作成と保存
社員総会の要否とは別に、合同会社にも決算書類に関する法律上の義務があります。ここは「定款で自由に決められる」部分ではないため、確実に押さえておきたいところです。
計算書類の作成義務と10年間の保存
会社法第617条により、持分会社は成立の日における貸借対照表を作成し、さらに各事業年度に係る計算書類(貸借対照表その他、法務省令で定めるもの)を作成しなければなりません。計算書類は電磁的記録で作成することもでき、作成した時から10年間保存する必要があります。
あわせて会社法第615条では、適時に正確な会計帳簿を作成し、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、会計帳簿と事業に関する重要な資料を保存することも求められています。
社員・債権者による計算書類の閲覧
会社法第618条により、合同会社の社員は、営業時間内であればいつでも計算書類の閲覧や謄写を請求できます。この権利は定款で別段の定めができるものの、事業年度の終了時に請求することまでは制限できないとされています。
また、会社法第625条により、合同会社の債権者も、作成した日から5年以内の計算書類について閲覧・謄写を請求できます。金融機関からの借入れがある資産管理会社では、決算書を整えておくことが取引上の信用にもつながります。
法人税の確定申告の期限と決算の確定
税務の面で大切なのは、法人税の申告期限と「確定した決算」の関係です。合同会社であっても、法人税の確定申告の期限は株式会社と同じです。
事業年度終了の日の翌日から2か月以内の申告
法人税法第74条では、内国法人は各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、確定した決算に基づき、所得金額や法人税額を記載した申告書を税務署長に提出しなければならないと定めています。また法人税法第77条により、申告書に記載した法人税は申告書の提出期限までに納付する必要がありますe-Gov法令検索 法人税法。
たとえば3月31日が決算日の合同会社であれば、申告と納付の期限は原則として5月31日です。社員総会を開かない会社でも、この2か月の間に決算書を確定させ、申告書を作成・提出する流れになります。
| 申告期限 | 事業年度終了の日の翌日から2か月以内 |
|---|---|
| 申告の基礎 | 確定した決算 |
| 納付期限 | 申告書の提出期限まで |
| 3月31日決算の例 | 申告・納付とも原則5月31日まで |
合同会社における「確定した決算」の考え方
株式会社では、定時株主総会での承認などによって決算が確定します。合同会社には法律上の定時総会がないため、定款に定めた方法、あるいは業務の決定の方法(社員または業務執行社員の過半数など)によって計算書類を承認したことをもって、決算を確定させる扱いが一般的です。
大切なのは、「いつ、誰が、どの計算書類を承認したのか」を後から説明できる状態にしておくことです。税務調査などで決算の確定の経緯を確認されたときに、承認の記録がないと説明に苦労することがあります。
申告期限の延長の特例と合同会社
「決算の確定が2か月以内に間に合わない」という場合には、法人税の申告期限を延長する特例があります。合同会社で使えるかどうかは、やはり定款の定め方がポイントになります。
法人税法第75条の2の延長特例の要件
法人税法第75条の2では、定款等の定めにより、または特別の事情があることにより、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内にその事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合、申請に基づき、確定申告書の提出期限を1か月間延長できると定めています。手続きは「定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請書」で行い、定款の定めを理由とする場合は定款の写しを添付します国税庁 C1-17 定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請。
| 対象となる場合 | 定款等の定めまたは特別の事情により、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に決算についての定時総会が招集されない常況にある場合 |
|---|---|
| 延長される期間 | 原則1か月間(会計監査人を置く場合などは別の定めあり) |
| 申請の期限 | 最初に適用を受けようとする事業年度終了の日まで |
| 添付書類 | 定款、寄附行為、規則若しくは規約の写し |
| 提出先 | 納税地の所轄税務署長 |
申請書を提出し、最初に適用を受けようとする事業年度終了の日の翌日から15日以内に延長または却下の処分がなかったときは、1か月間の延長がされたものとみなされます。いったん適用を受けると、その事業年度以後の各事業年度に継続して適用される仕組みです。
合同会社で延長特例を検討する際の注意点
この特例は「定時総会が2か月以内に招集されない常況にある」ことが前提です。定時社員総会の定めが無い合同会社では、そもそも要件に当てはまるかどうかが問題になります。定款で「定時社員総会は毎事業年度終了後3か月以内に招集する」といった定めを置いている場合に検討の余地が出てくるため、定款の条文と申請の可否を事前に確認することが欠かせません。
また、延長されるのは申告書の提出期限です。延長された期間については、法人税に併せて利子税を納付する必要があります。「延長すれば納税も1か月遅らせて問題ない」というわけではないため、実務では本来の期限までに見込み額を納付しておく対応もよく行われています。
消費税の申告期限の延長との関係
消費税の確定申告の期限も、法人税の延長特例の適用を受けている法人であれば、所轄税務署長へ「消費税申告期限延長届出書」を出すことで1か月延長されます。この場合も、延長された期間に係る利子税を併せて納付する必要があります国税庁 No.6610 法人に係る消費税の確定申告書の提出期限について。法人税だけ延長して消費税の届出を忘れると、消費税の申告は本来の2か月以内のままとなるため注意が必要です。
合同会社の決算承認の実務
ここからは、定時社員総会を置いていない合同会社で、決算をどのように承認・記録しておくかの実務をご紹介します。会社の規模や社員の人数によって形は異なりますが、共通する考え方は「承認の事実を書面で残す」ことです。
総社員の同意書・決定書による承認
実務では、決算書(計算書類)ができあがった段階で、総社員の同意書や業務執行社員の決定書を作成し、計算書類を承認する形が多く見られます。社員が1人だけの資産管理会社であれば、その社員(代表社員)の決定書として、承認した日付・対象の事業年度・承認した計算書類の名称を記載しておく方法が一般的です。
| 承認した日付 | 申告期限(事業年度終了の日の翌日から2か月以内)より前の日付 |
|---|---|
| 対象の事業年度 | 「自 令和7年4月1日 至 令和8年3月31日」などと明記 |
| 承認の対象 | 貸借対照表など、承認する計算書類の名称 |
| 承認した社員 | 総社員または業務執行社員の氏名と記名押印(署名) |
定款に社員総会の定めがある場合は、その定めに沿って社員総会を開き、議事録を作成します。どちらの方法をとるにしても、作成した同意書・決定書・議事録は、計算書類と一緒に保存しておくと後から確認しやすくなります。
役員報酬など他の決定とのつながり
決算の承認と同じ時期に、次の事業年度の業務執行社員の報酬を決めることも少なくありません。報酬の決定も社員の同意や決定書で記録を残す点は共通していますが、法人税の損金算入には別の要件があります。報酬の金額や届出の考え方は、次の記事で詳しく解説しています。
関連コラム合同会社の役員報酬と税務署への届出|金額の考え方を税理士が解説▸
賞与のように特定の時期に支給する報酬を検討している場合は、事前の届出が必要になることがあります。
関連コラム合同会社の社員に対する事前確定届出給与の注意点と要件▸
資産管理会社で見落としやすい点
不動産の管理や保有を目的とした資産管理会社では、社員が1人またはご家族だけということが多く、「承認の書類まで作る必要はないのでは」と感じる方もいらっしゃいます。しかし、決算の承認記録は、決算の確定の経緯を示す材料になります。毎期の決算と申告をきちんと積み重ねておくことは、赤字の年の欠損金を翌期以降に活かす際の前提にもなります。
関連コラム青色申告の欠損金の繰越控除|法人10年・個人3年の違いと要件を解説▸
設立したばかりの資産管理会社で、決算や申告の全体像がまだつかめていない方は、次の記事もあわせてご覧ください。
関連コラム不動産管理会社の設立後、必要な税務申告をすべて解説!▸
定款の定め方や決算の承認方法、延長特例を使うかどうかは、会社ごとの事情で判断が変わります。迷われたときは、まずは税理士にご相談ください。
まとめ
会社法には、株式会社の定時株主総会のように合同会社に定時社員総会の開催を義務づける規定は無く、業務の決定は社員または業務執行社員の過半数など、定款の定めに従って行います。一方で、計算書類の作成と10年間の保存は法律上の義務であり、法人税は事業年度終了の日の翌日から2か月以内に確定した決算に基づいて申告・納付する必要があります。
定款に定時社員総会の定めがある場合は、申告期限の延長特例を検討できる余地もありますが、延長された期間には利子税がかかり、消費税は別途届出が必要です。定時社員総会を置かない合同会社では、総社員の同意書や業務執行社員の決定書で決算を承認し、計算書類と一緒に保存しておく方法が実務では多く見られます。ご自身の会社の定款でどの方法をとるべきか判断がつかない場合は、まずは税理士にご相談ください。
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参考文献
合同会社の定時社員総会のよくある質問まとめ
Q.合同会社は定時社員総会を開かなければいけませんか?
A.会社法には、株式会社の定時株主総会のように合同会社に定時社員総会の開催を義務づける規定はありません。ただし、定款に社員総会の定めがある場合は、その定めに従う必要があります。
Q.合同会社の決算は誰が承認しますか?
A.定款の定めによります。定めが無い場合、業務は社員の過半数(業務執行社員を定めた場合は業務執行社員の過半数)で決定するため、実務では総社員の同意書や業務執行社員の決定書で計算書類を承認する形が多く見られます。
Q.合同会社の法人税の申告期限はいつですか?
A.株式会社と同じく、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、確定した決算に基づいて申告し、同じ期限までに納付します。3月31日決算なら原則5月31日です。
Q.合同会社でも法人税の申告期限を延長できますか?
A.定款等の定めにより決算についての定時総会が2か月以内に招集されない常況にある場合、申請により1か月延長できる特例があります。合同会社で使えるかは定款の定め方によるため、事前の確認が必要です。
Q.申告期限を延長すると納税も遅らせてよいのですか?
A.延長された期間については利子税を併せて納付する必要があります。消費税も延長するには別途、消費税申告期限延長届出書の提出が必要です。
Q.合同会社の計算書類はどのくらい保存が必要ですか?
A.会社法により、計算書類は作成した時から10年間、会計帳簿は帳簿の閉鎖の時から10年間保存する必要があります。決算を承認した同意書や決定書も一緒に保存しておくと安心です。


