「家の権利書がどこにも見当たらない…このままでは売れないの?」と不安になっている方へ、先に結論をお伝えしますね。権利書(権利証)を紛失しても、不動産は売却できます。権利書は再発行できませんが、なくしただけで所有権を失うことはなく、法律で用意された本人確認の代わりの方法を使えば所有権移転登記を申請できます法務局 登記済証(権利証)を紛失したのですが,どうしたらよいのですか?。
売買の実務で多く使われるのは、司法書士などが売主本人と面談して作成する「本人確認情報」です。この記事では、権利書の種類と役割、紛失に気づいたときにやること、権利書なしで売却する3つの方法とその違い、相続した不動産の場合の注意点まで、法務局の案内と法令に沿ってご説明しますね。
| 知りたいこと | 結論 |
|---|---|
| 権利書がなくても売れる? | 売れる(本人確認の代わりの方法を使う) |
| 再発行できる? | できない(登記済証・登記識別情報とも) |
| 所有権はどうなる? | なくならない(登記記録で公示されている) |
| 売買でよく使う方法は? | 司法書士などによる本人確認情報 |
家の権利書(権利証)とは?売却で必要になる理由
不動産の売却を考え始めると、必ず出てくるのが「権利書」「権利証」という言葉です。どちらも同じものを指す通称で、法令上の正式な名前は取得した時期によって変わります。まずは基本から確認していきましょう。
「登記済証」と「登記識別情報」の2種類
一般的に権利書と呼ばれているものには2つの種類があります。平成16年の不動産登記法改正で、紙の登記済証に代わる本人確認の手段として登記識別情報の制度が導入されたためです。
| 種類 | どんなものか |
|---|---|
| 登記済証(いわゆる権利証) | 改正前の制度で、登記が完了したときに法務局から登記名義人に交付された書面です。法務局の「登記済」の印が押されているのが特徴です。 |
| 登記識別情報(登記識別情報通知) | 改正後の制度で、登記が完了したときに登記名義人に通知される12桁の英数字の組み合わせです。不動産と登記名義人ごとに定められ、他人に見られないよう目隠しの加工がされた通知書で届きます。 |
改正前に交付された登記済証も、現在の登記申請でこれまでどおり使えます法務局 現在,登記名義人が持っている登記済証(権利証)はどのようになるのですか?。どちらが手元にあるかで効力に差はないので、ご自宅の書類がどちらのタイプか確認しておきましょう。
権利書が売却で必要になる理由
不動産を売却すると、買主へ所有権を移す「所有権移転登記」を法務局に申請します。この登記は売主(登記義務者)と買主(登記権利者)が共同で申請するもので、原則として売主の登記識別情報(または登記済証)を一緒に提供しなければなりませんe-Gov法令検索 不動産登記法第22条。登記名義人本人からの申請であることを法務局が確かめるための資料になるからです。
つまり権利書は、売買の最終段階である決済・引き渡しの日に、所有権を安全に移すために使う書類です。不動産会社や司法書士が売却の相談の段階で権利書の有無を確認するのはこのためです。
権利書と登記簿(登記事項証明書)の違い
「権利書」と「登記簿」は混同されやすいのですが、別のものです。登記簿(登記記録)は法務局が管理しているデータで、その内容を証明したものが登記事項証明書です。登記記録は表題部と権利部に分かれ、権利部の甲区には所有者が誰で、いつ、どんな原因で所有権を取得したかが記録されています法務局 登記事項証明書と登記簿謄抄本とは,どう違うのですか?。
| 比べる点 | 権利書(登記済証・登記識別情報) | 登記事項証明書(登記簿謄本) |
|---|---|---|
| 役割 | 登記を申請する人が本人かを確かめる | 登記されている内容を証明する |
| 誰が持つか | 登記名義人(所有者)本人 | 法務局が管理し、誰でも請求できる |
| なくしたら | 再発行できない | 何度でも取得できる |
「登記簿謄本をなくした」という場合は、法務局で登記事項証明書を取り直せば問題ありません。困るのは権利書のほうなので、以下ではその対処法をご説明しますね。
権利書は再発行できない|紛失に気づいたらやること
まず押さえておきたいのは、権利書は再発行できないという点です。登記識別情報は登記が完了したときに通知するものとされているため、再通知は認められていません法務局 登記識別情報を紛失した場合は,再度通知してもらうことはできるのですか?。一方で、紛失しただけでは登記記録上の権利には何の影響もなく、所有者であることに変わりはありません。
紛失した権利書は悪用される?
心配になるのが悪用の危険です。ただ、所有権移転や抵当権設定の登記を申請するには、権利書のほかに印鑑証明書などの添付書類も必要です。法務局は、実印や印鑑証明書をしっかり管理していれば勝手に登記されることはないと案内しています。仮になりすましによる登記がされても、その登記は無効で、行為は犯罪になります法務局 登記識別情報を紛失したのですが,どうしたらよいのですか?。
あわせて実印・印鑑登録カードの保管場所も確認しておくと安心です。権利書と実印を同じ場所で保管していて両方なくした、という場合は早めに次の手続きを検討しましょう。
不正な登記を防ぐ「不正登記防止申出」
盗難にあったなど、不正な登記がされる差し迫った危険がある場合は、法務局に「不正登記防止申出」をする方法があります。申出から3か月以内に不正な登記がされることを防ぐための制度で、不安が続く場合は3か月ごとに申出をし直します。申出は本人が登記所に出向くのが原則で、やむを得ない事情があれば代理人による申出も認められます。なお、権利の移動そのものを禁止する制度ではありません。
登記識別情報を無効にする「失効の申出」
手元にあったのが登記識別情報で、誰かに見られた可能性がある場合は「失効の申出」により、その登記識別情報を使えなくすることができます。申出できるのは登記名義人のほか、その相続人などの一般承継人ですe-Gov法令検索 不動産登記規則第65条。失効させた後に売却する場合は、次にご説明する方法で本人確認を行います。
権利書なしで不動産を売却する3つの方法
権利書を提供できない正当な理由(紛失など)がある場合は、権利書なしで登記を申請できます。そのときの本人確認の方法は、法律上次の3つですe-Gov法令検索 不動産登記法第23条。
① 事前通知制度
権利書なしで登記を申請すると、法務局から登記名義人(売主)に「このような登記の申請がありました。内容が真実なら申し出てください」という通知が届きます。個人の場合は本人限定受取郵便で送られ、売主が通知書に記名し、申請書や委任状と同じ印を押して法務局に提出します。申出の期限は通知を発送した日から2週間(海外に住所がある場合は4週間)ですe-Gov法令検索 不動産登記規則第70条。
この期間内に申出がない限り、登記は実行されません。また、住所を移したうえでのなりすましを防ぐため、所有権に関する登記で登記名義人の住所の変更登記がされているときは、原則として前の住所にも通知が送られます法務局 登記識別情報を紛失したなどの理由により,登記申請の際に,登記識別情報を提供することができない場合はどうしたらよいのですか?。
法務局に支払う手数料はかかりませんが、郵便のやり取りが終わるまで登記が完了しません。売買代金の支払いと登記を同じ日に済ませる一般的な不動産売買では、買主や住宅ローンを出す金融機関が受け入れにくい方法です。
② 資格者代理人による本人確認情報
登記の申請を司法書士などの資格者代理人に依頼し、その代理人が売主本人と面談して本人であることを確認した書面(本人確認情報)を作成・提供する方法です。登記官がその内容を相当と認めれば、事前通知は行われません。決済の日に登記を申請してそのまま進められるため、売買の実務ではこの方法が広く使われています。
面談では、資格者代理人が次のような書類の提示を求めて本人確認を行いますe-Gov法令検索 不動産登記規則第72条。
- 運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなど顔写真付きの書類なら1点以上
- 顔写真付きの書類がない場合は、健康保険の資格確認書(書面のもの)・介護保険の被保険者証・基礎年金番号通知書などの書類を2点以上
- または上の2点目のグループの書類1点以上と、官公庁が発行した氏名・住所・生年月日の載った書類1点以上
このほか、実印と印鑑証明書、所有者であることを裏付ける資料(購入時の売買契約書や固定資産税の納税通知書など)を求められることも多いので、依頼先の司法書士に確認しておきましょう。費用は登記手続きの報酬とは別にかかる場合があり、金額は事務所ごとに異なります。
③ 公証人による認証
公証役場で、登記の申請書や司法書士への委任状について、公証人から申請人が登記名義人本人であることを確認する認証を受ける方法です。登記官がその内容を相当と認めれば、事前通知は行われません。本人が公証役場へ出向く手間はかかりますが、手数料は法令で決まっています。私署証書の認証手数料は原則1万1,000円ですe-Gov法令検索 公証人手数料令第34条。
3つの方法の比較|売却ではどれを選ぶ?
3つの方法の違いを表にまとめますね。
| 方法 | 費用 | 手間・時間 | 不動産売買との相性 |
|---|---|---|---|
| 事前通知制度 | 法務局の手数料なし | 通知の受け取りと2週間以内の申出が必要。登記完了まで時間がかかる | △(決済と同時に登記できない) |
| 資格者代理人による本人確認情報 | 司法書士などへの報酬(事務所ごとに異なる) | 司法書士との面談のみ | ◎(決済の日に登記を申請できる) |
| 公証人による認証 | 認証手数料 原則1万1,000円 | 本人が公証役場へ出向く | ○(事前に準備しておけば対応できる) |
費用だけを見ると事前通知が有利に見えますが、売買は買主や金融機関など多くの関係者が同じ日に動く取引です。権利書がないと分かった時点で不動産会社と司法書士に伝え、本人確認情報か公証人の認証かを早めに相談するのがスムーズです。決済の直前に紛失が分かると日程の組み直しが必要になることもあるので、売却を決めたらまず権利書の有無を確認しましょう。
相続した不動産の権利書が見つからない場合
親から相続した家や土地を売るときに、亡くなった方の権利書が見つからないというご相談も多くあります。この場合は、まず相続登記で名義を相続人に変えてから売却する流れになります。
- 相続登記には亡くなった方の権利書は原則不要:相続による所有権の移転の登記は、相続人(登記権利者)が単独で申請できますe-Gov法令検索 不動産登記法第63条。権利書の提供が必要なのは、売買のように登記権利者と登記義務者が共同で申請する場合などです。
- 相続登記が終わると相続人に登記識別情報が届く:登記によって自ら登記名義人になった申請人には、新しい登記識別情報が通知されますe-Gov法令検索 不動産登記法第21条。売却のときはこの登記識別情報を使います。
- 相続登記は義務:相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならずe-Gov法令検索 不動産登記法第76条の2、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になりますe-Gov法令検索 不動産登記法第164条。
相続登記の進め方や、相続した不動産を売るときの税金については、次のコラムで詳しくご説明しています。
関連コラム相続登記は権利証なしでも大丈夫!紛失した場合の手続きを解説▸
関連コラム相続登記を自分でやる手順と必要書類|費用と注意点▸
関連コラム相続した不動産を売却したい方へ!手続き・税金・注意点を完全ガイド▸
不動産売却で権利書以外に必要な書類
不動産売却では、権利書以外にもさまざまな書類が必要です。代表的なものをまとめますね。物件の種類や状況によって変わるため、詳しくは不動産会社や司法書士に確認しながら準備を進めましょう。
| タイミング | 主な必要書類 |
|---|---|
| 査定・売却活動時 | ・登記事項証明書(登記簿謄本) ・物件の図面、パンフレット ・土地の測量図、境界確認書(土地・戸建ての場合) ・建築確認済証、検査済証(戸建ての場合) |
| 売買契約・決済時 | ・権利書(登記済証または登記識別情報)※紛失時は本人確認の代わりの方法で対応 ・本人確認書類(運転免許証など) ・実印と印鑑証明書 ・住民票(登記上の住所と現住所が違う場合など) ・固定資産税の納税通知書、固定資産評価証明書 |
登記上の住所や氏名が今と違う場合は、売却の登記の前に住所・氏名の変更登記が必要になることがあります。令和8年(2026年)4月1日からは、住所や氏名が変わったときは変更があった日から2年以内に変更登記を申請することが義務になりましたe-Gov法令検索 不動産登記法第76条の5。引っ越し後に登記を変えていない方は、あわせて確認しておきましょう。
権利書の紛失に関するよくある質問
Q. 家の権利書をなくしたら再発行できますか?
A. いいえ、再発行はできません。登記済証(権利証)も登記識別情報も登記が完了したときに一度だけ交付・通知されるもので、紛失しても再交付や再通知は認められていません。
Q. 権利書がなくても家や土地は売却できますか?
A. はい、売却できます。法務局からの事前通知、司法書士などの資格者代理人による本人確認情報、公証人の認証のいずれかの方法で本人確認を行えば、権利書がなくても所有権移転登記を申請できます。
Q. 権利書をなくした場合、売却ではどの方法が一般的ですか?
A. 買主や金融機関が関わる売買では、決済の日に確実に登記を申請できる資格者代理人(司法書士など)による本人確認情報が広く使われています。事前通知は郵便のやり取りが終わるまで登記が完了しないため、売買では使いにくい方法です。
Q. 権利書がない場合の費用はいくらかかりますか?
A. 事前通知は法務局に支払う手数料がかかりません。司法書士に本人確認情報の作成を依頼する場合は報酬が別途かかり、金額は事務所ごとに異なるため事前に見積もりを確認してください。公証人の認証は、私署証書の認証手数料として原則1万1,000円と定められています。
Q. 権利書を紛失すると所有権を失いますか?
A. いいえ、失いません。所有者は法務局の登記記録で公示されており、権利書を紛失しただけでは登記記録上の権利に影響はありません。
Q. 権利書と登記簿(登記事項証明書)はどう違いますか?
A. 権利書は登記が完了したときに所有者へ交付される本人確認のための書類で、再発行できません。登記簿は法務局が管理する登記記録で、その内容を証明した登記事項証明書は誰でも手数料を払えば取得できます。
Q. 相続した家の権利書が見つからない場合はどうなりますか?
A. 相続による所有権移転登記は相続人が単独で申請でき、亡くなった方の権利書がなくても手続きできます。相続登記が終わると、新しい所有者となった相続人に登記識別情報が通知され、売却の際はそれを使います。
まとめ
- 権利書(登記済証・登記識別情報)は、紛失しても再発行できない
- 紛失しても所有権はなくならず、実印・印鑑証明書を管理していれば勝手に登記されることは通常ない
- 権利書なしで売却するには、事前通知・資格者代理人の本人確認情報・公証人の認証の3つの方法がある
- 売買では、決済の日に登記を申請できる本人確認情報が広く使われている
- 相続した不動産は、相続登記に亡くなった方の権利書は原則不要。登記後に相続人へ新しい登記識別情報が届く
権利書が見つからないときは、一人で悩まず、売却を相談している不動産会社や司法書士に早めに伝えましょう。相続した不動産の売却で税金や申告のことが気になる場合は、税理士法人プライムパートナーズにお気軽にご相談ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案への適用を保証するものではありません。実際の手続にあたっては、管轄の法務局や専門家にご確認ください。
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参考文献
- 法務局 登記済証(権利証)を紛失したのですが,どうしたらよいのですか?
- 法務局 現在,登記名義人が持っている登記済証(権利証)はどのようになるのですか?
- e-Gov法令検索 不動産登記法第22条
- 法務局 登記事項証明書と登記簿謄抄本とは,どう違うのですか?
- 法務局 登記識別情報を紛失した場合は,再度通知してもらうことはできるのですか?
- 法務局 登記識別情報を紛失したのですが,どうしたらよいのですか?
- e-Gov法令検索 不動産登記規則第65条
- e-Gov法令検索 不動産登記法第23条
- e-Gov法令検索 不動産登記規則第70条
- 法務局 登記識別情報を紛失したなどの理由により,登記申請の際に,登記識別情報を提供することができない場合はどうしたらよいのですか?
- e-Gov法令検索 不動産登記規則第72条
- e-Gov法令検索 公証人手数料令第34条
- e-Gov法令検索 不動産登記法第63条
- e-Gov法令検索 不動産登記法第21条
- e-Gov法令検索 不動産登記法第76条の2
- e-Gov法令検索 不動産登記法第164条
- e-Gov法令検索 不動産登記法第76条の5


