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離婚の財産分与と譲渡所得|不動産を渡す側に課税される仕組みを税理士が解説

目次
  1. 財産分与で不動産を渡すと譲渡所得の課税がある
  2. 収入金額は「分与した時の時価」
  3. 分与した側の譲渡所得の計算例
  4. 自宅を分与するときの3,000万円特別控除の注意点
  5. 財産分与を受けた側の税金
  6. 原則として贈与税はかからない
  7. 取得費は分与時の時価、所有期間は分与の日から数える
  8. 渡す側・受け取る側の取扱いの整理
  9. まとめ
  10. 参考文献
  11. 離婚の財産分与と譲渡所得に関するよくある質問まとめ
  12. 財産分与で不動産を渡すと、渡した側に税金がかかりますか?
  13. 財産分与を受けた側に贈与税はかかりますか?
  14. 財産分与で受け取った不動産を売るときの取得費はいくらですか?
  15. 自宅を財産分与するとき、3,000万円の特別控除は使えますか?
  16. 財産分与で譲渡損失が出た場合はどうなりますか?

「離婚の財産分与で自宅を渡すだけなのに、税金がかかると言われた」「受け取った不動産を将来売るとき、取得費はいくらになるのか」というご相談は少なくありません。この記事は、離婚にともなって土地や建物などの財産分与を予定している方、とくに不動産や自社関連の資産を多く持つ経営者・不動産オーナーの方に向けて、財産分与と譲渡所得の関係を国税庁の資料に沿って整理したものです。

結論から申し上げると、土地や建物で財産分与をした場合、渡した側(分与者)に、分与した時の時価を収入金額とする譲渡所得の課税が行われます。お金を受け取っていなくても、値上がりしている不動産であれば税金が生じる点に注意が必要です。一方、受け取った側には通常、贈与税はかからず、分与を受けた日にその時の時価で取得したものとして扱われます。

財産分与で不動産を渡すと譲渡所得の課税がある

夫婦が離婚したとき、相手方の請求に基づいて一方が相手方に財産を渡すことを財産分与といいます。財産分与が土地や建物などで行われたときは、分与した人に譲渡所得の課税が行われ、分与した時の土地や建物などの時価が譲渡所得の収入金額になります国税庁 No.3114 離婚して土地建物などを渡したとき。

財産分与は売買ではないため、「売っていないのに譲渡所得になるのか」と驚かれる方も多いでしょう。しかし国税庁の取扱いでは、代金を受け取らない財産分与であっても、土地や建物を渡した側に譲渡所得の課税が行われます。分与の方法を決める前に、この点を押さえておくことが大切です。

収入金額は「分与した時の時価」

収入金額となる時価は、実勢価額(通常の取引価額)です国税庁 財産分与に伴う譲渡損失の他の土地譲渡益との通算。購入した時の金額や、固定資産税評価額・路線価そのものではない点に注意が必要です。

実務では、分与する不動産の時価を、近隣の取引事例や不動産会社の査定などで確認し、その根拠となる資料を残しておくようにしています。財産分与の協議で使った金額と、税務上の時価が大きく食い違っていると、あとで説明に困ることがあるためです。

分与した側の譲渡所得の計算例

所有期間が5年を超える土地建物の譲渡所得は長期譲渡所得となり、譲渡価額(収入金額)から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。税率は所得税15%と住民税5%で、あわせて復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)を申告・納付します国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算。

たとえば、15年前に購入した自宅(土地建物)を財産分与し、分与した時の時価が5,000万円、減価償却費相当額を差し引いた取得費が2,400万円、譲渡費用がかからなかった場合は次のとおりです。

分与時の時価5,000万円 − 取得費2,400万円 = 譲渡所得2,600万円
譲渡所得2,600万円 × 20.315% = 税額528万1,900円

20.315%は、所得税15%に復興特別所得税(15%の2.1%)を加えた15.315%と、住民税5%の合計です。分与した側は現金を受け取っていないにもかかわらず、このような税負担が生じる可能性があります。財産分与の内容を決める前に、税金を誰がどう負担するのかまで見込んでおくことが大切です。

なお、時価が取得費を下回り譲渡損失が出る場合、その損失は他の土地建物等の譲渡所得と通算できます。譲渡所得にかかる住民税の計算は、次のコラムでも解説しています。

関連コラム譲渡所得の住民税は何%?長期5%・短期9%と計算方法を税理士が解説▸

自宅を分与するときの3,000万円特別控除の注意点

マイホーム(居住用財産)を譲渡したときは、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例。上の計算例でこの特例を受けられれば、譲渡所得2,600万円は全額控除され、税額は生じません。

ただし、この特例には親子や夫婦など「特別の関係がある人」への譲渡ではないことという要件があります。特別の関係がある人には、生計を一にする親族、譲渡後にその家屋で同居する親族、内縁関係にある人なども含まれます。財産分与の時点でまだ夫婦である場合や、分与後も同じ家で生計を一にしている場合などは、特例を受けられない可能性があります。

また、以前に住んでいた家屋は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡する場合に限り対象になります。別居が長引いてから自宅を分与するケースでは、この期限にも注意が必要です。住まなくなった家を手放す場合の特例の考え方は、次のコラムで詳しく解説しています。

関連コラム住んでいない家の売却でかかる税金|3000万円控除と2つの特例▸

実務では、離婚の成立日、財産分与の協議が調った日、登記の日、転居の日といった日付の順番によって、3,000万円特例を受けられるかどうかの判断が変わることがあります。協議書を作る段階で日付の順番を確認しておくことをおすすめします。

財産分与を受けた側の税金

原則として贈与税はかからない

離婚により相手方から財産をもらった場合、通常、贈与税がかかることはありません。贈与ではなく、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づいて給付を受けたものと考えられるためです国税庁 No.4414 離婚して財産をもらったとき。

ただし、次のいずれかに当てはまる場合は贈与税がかかります。

  • 分与された財産の額が、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合(多過ぎる部分に贈与税がかかります)
  • 離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合(もらった財産すべてに贈与税がかかります)

取得費は分与時の時価、所有期間は分与の日から数える

分与を受けた人は、分与を受けた日にその時の時価で土地や建物を取得したことになります。そのため、将来その不動産を売るときの取得費は分与時の時価が基準となり、長期譲渡になるか短期譲渡になるかも、財産分与を受けた日をもとに判定します。

元の配偶者が何十年も前に買った不動産であっても、所有期間は分与の日から数え直しになります。売った年の1月1日現在で所有期間が5年以下の土地や建物は短期譲渡所得となり、税率は所得税30%(住民税9%)と、長期譲渡所得より高くなります国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算。分与を受けた不動産を早めに売る予定がある場合は注意が必要です。取得費の考え方については、次のコラムも参考になります。

関連コラム譲渡所得の取得費5パーセントとは?概算取得費の計算と注意点を税理士が解説▸

渡す側・受け取る側の取扱いの整理

比較項目 分与した側 分与を受けた側
かかる税金 譲渡所得(所得税・住民税) 通常は贈与税なし
基準となる金額 分与した時の時価が収入金額 分与を受けた時の時価が取得費
確定申告 譲渡益が出れば必要 通常は贈与税の申告は不要(将来売るときは譲渡所得の申告)
所有期間の起点 もともと取得した日 財産分与を受けた日

財産分与は、夫婦のどちらがどの財産を受け取るかという話し合いに目が向きがちですが、税金の面では渡す側と受け取る側で取扱いがまったく異なります。とくに不動産や値上がりした資産が多い場合は、分与する財産の選び方によって、手元に残る金額が大きく変わることがあります。ご自身のケースで判断に迷う場合は、まずは税理士にご相談ください。

まとめ

離婚の財産分与と譲渡所得のポイントを整理します。

  • 土地や建物で財産分与をすると、分与した側に、分与した時の時価を収入金額とする譲渡所得の課税が行われます。
  • 時価は実勢価額(通常の取引価額)で、譲渡損失が出た場合は他の土地建物等の譲渡所得と通算できます。
  • 自宅の分与で3,000万円特別控除を受けるには、夫婦など特別の関係がある人への譲渡ではないことなどの要件を満たす必要があります。
  • 受け取った側には通常贈与税はかからないものの、多過ぎる分与や租税回避目的の離婚では贈与税がかかります。
  • 受け取った側の取得費は分与時の時価で、所有期間は財産分与を受けた日から数えます。

財産分与の税金は、分与の時期や方法、分与する財産の種類によって結論が変わります。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

離婚の財産分与と譲渡所得に関するよくある質問まとめ

財産分与で不動産を渡すと、渡した側に税金がかかりますか?

かかる場合があります。土地や建物で財産分与をすると、分与した人に譲渡所得の課税が行われ、分与した時の時価が収入金額になります。時価が取得費と譲渡費用の合計を上回れば、お金を受け取っていなくても所得税・住民税がかかります。

財産分与を受けた側に贈与税はかかりますか?

通常はかかりません。夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づく給付と考えられるためです。ただし、分与額が多過ぎる場合はその部分に、離婚が贈与税や相続税を免れるためと認められる場合はもらった財産すべてに贈与税がかかります。

財産分与で受け取った不動産を売るときの取得費はいくらですか?

分与を受けた日の時価で取得したものとして扱われます。元の配偶者が購入した金額ではありません。長期譲渡か短期譲渡かの判定も、財産分与を受けた日をもとに行います。

自宅を財産分与するとき、3,000万円の特別控除は使えますか?

要件を満たせば使える可能性がありますが、夫婦や生計を一にする親族など特別の関係がある人への譲渡は対象外です。分与の時点でまだ夫婦である場合や、分与後も同じ家で生計を一にしている場合は受けられない可能性があるため、日付の順番を事前に確認することが大切です。

財産分与で譲渡損失が出た場合はどうなりますか?

分与した土地の時価が取得価額を下回って譲渡損失が生じた場合、その損失は他の土地建物等の譲渡所得と通算できます。

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本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。