マイホームの購入は、人生で最も大きな買い物の一つですよね。ご両親や祖父母から資金援助を受けられると、本当に助かります。国もそんな親子間の支援を後押しするために、「住宅取得資金贈与の非課税の特例」という制度を用意してくれています。ただ、この特例は2026年(令和8年)12月31日までの贈与が対象で、要件も細かく、うっかりミスで「非課税になると思っていたのに、数百万円の贈与税がかかってしまった」という失敗も少なくありません。この記事では、実務でよく見る失敗例10選と、その対策を分かりやすくご説明しますね。
結論:失敗は「期限」「使い道」「名義」の3つに集約されます
細かい要件はたくさんありますが、実際に非課税が使えなくなるケースは、突き詰めると次の3つのどれかです。先にここを押さえておくと、あとの話が一気に分かりやすくなります。
| 失敗の型 | 典型例 | 対策の要点 |
| ①期限 | 翌年3月15日までに完成・入居が間に合わない/税額0円だからと申告しなかった | 贈与の実行は「引渡しの見通しが立ってから」。申告は翌年2月1日〜3月15日に必ず行う |
| ②使い道 | 住宅ローンの繰上返済・仲介手数料・登記費用・家具家電に充てた | 使えるのは家屋の請負代金/売買代金と、その敷地の土地代だけ |
| ③名義 | 贈与を受けた本人が家屋の持分を持っていない/義父母からの贈与だった | 「贈与を受けた人=家屋の名義人(共有持分でも可)」を必ず一致させる |
なお、この特例は期限内申告が絶対条件です。贈与税が0円になる場合でも申告書を出さなければ適用されません。ここだけは何があっても外さないでくださいね。
住宅取得資金贈与の非課税の特例とは?【2026年12月31日まで】
まずは、この制度の基本をおさらいしておきましょう。この特例は、ご両親や祖父母といった直系尊属から、ご自身が住むための家を新築・取得・増改築するためのお金をもらったときに使える制度です。国税庁のタックスアンサーNo.4508では、対象期間は令和6年(2024年)1月1日から令和8年(2026年)12月31日までと示されています。つまり、2026年は現行制度の最終年にあたります。
非課税になる金額
非課税の上限額は、取得する住宅の性能によって変わります。金額は贈与を受けた人ごとに判定するので、父と母の両方から贈与を受けても、枠が2倍になるわけではありません。
| 住宅の種類 | 非課税限度額 |
| 省エネ等住宅(質の高い住宅) | 1,000万円 |
| 上記以外の住宅 | 500万円 |
「省エネ等住宅」の基準
省エネ等住宅とは、省エネルギー性能・耐震性能・バリアフリー性能のいずれかの基準を満たす住宅で、住宅性能証明書などの書類を贈与税の申告書に添付して証明されたものをいいます。新築の場合は断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上、耐震なら耐震等級2以上または免震建築物、バリアフリーなら高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上が基準です。中古住宅や増改築の場合は、断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上とされています。証明書はハウスメーカーや不動産会社に早めに依頼しておきましょう。
他の贈与制度との併用も可能
この特例は、他の贈与税の制度と組み合わせて使えます。毎年110万円まで非課税になる暦年贈与と併用すれば、最大1,110万円(1,000万円+110万円)まで非課税で受け取ることも可能です。また、相続時精算課税制度との併用もできます。しかも住宅取得等資金の贈与であれば、贈与者がその年の1月1日時点で60歳未満でも相続時精算課税を選べる特例(No.4503)が用意されています。
【失敗例10選】住宅取得資金贈与で非課税が使えなくなるケース
ここからは、実務でよく見る失敗例をご紹介します。「自分は大丈夫」と思わずに、一つずつチェックしてくださいね。
贈与する人・される人でつまずくケース
失敗例1:義理の両親からの贈与だった
この特例が使えるのは、自分の父母や祖父母など「直系尊属」からの贈与に限られます。配偶者のご両親(義父母)は直系尊属に該当しないため、対象外です。ただし養子縁組をしている場合は直系尊属に該当します。義父母から援助を受けるなら、いったん配偶者本人が贈与を受け、その配偶者が家屋の持分を取得する形にするのが基本です。
失敗例2:贈与を受けた年の所得が高すぎた
贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円を超えていると、この特例は使えません(床面積が40㎡以上50㎡未満の住宅の場合は1,000万円以下)。注意したいのは、ここでいう所得が給与だけでなく、不動産を売却したときの譲渡所得なども含む点です。買い替えで旧宅を売った年に贈与を受けると、思わぬところで所得要件を超えてしまいます。売却と贈与の年をずらすなど、事前の設計が大切です。
住宅・契約でつまずくケース
失敗例3:家の床面積が要件から外れていた
対象となる住宅は、登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下で、かつ床面積の2分の1以上が受贈者の居住用であることが必要です。マンションは専有部分の床面積で判定します。登記簿面積は販売資料の「壁芯面積」より小さくなるため、40㎡前後・240㎡前後の物件は必ず登記簿の数字で確認してください。店舗兼住宅で居住部分が半分に満たないケースもアウトです。
失敗例4:親戚の工務店に建築を依頼した
自己の配偶者や親族など一定の特別の関係がある人から住宅を取得したり、その人と請負契約を結んで新築・増改築したりした場合は、この特例を使えません。お父さんが経営する工務店に建築を依頼した、親戚が所有する中古住宅を買った、といったケースは対象外です。
スケジュールでつまずくケース
失敗例5:土地を先に買ったが、翌年3月15日までに棟上げが間に合わなかった
見落とされがちですが、影響の大きい失敗です。住宅の新築に先行して敷地となる土地を取得する資金も、この特例の対象になります。ただし国税庁の質疑応答事例では、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その土地の上に「屋根(骨組みを含む)を有し、土地に定着した建造物と認められる状態」まで新築が進んでいない場合は適用がないとされています。いわゆる棟上げ(上棟)まで到達している必要がある、ということです。年末に贈与を受けて年をまたぐスケジュールは、ここで詰まりやすいので要注意です。
失敗例6:入居が期限に間に合わなかった
贈与を受けた資金は、贈与を受けた年の翌年3月15日までに全額を住宅の新築等に充て、同日までにその家屋に居住することが原則です。同日後に遅滞なく居住することが確実と見込まれる場合は認められますが、翌年12月31日までに居住していないときは、原則として適用を受けられず修正申告が必要になります。転勤や工期遅延のリスクがあるなら、贈与の実行時期そのものを後ろにずらす判断も必要です。
手続きでつまずくケース
失敗例7:非課税だからと申告しなかった
これが最も多く、そして最ももったいない失敗です。贈与額が非課税枠に収まって贈与税が0円になる場合でも、贈与税の申告は必須です。申告期間は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで。申告書に戸籍謄本や売買契約書の写しなど一定の書類を添付して提出してはじめて適用されます。出し忘れると、通常どおり贈与税が課され、無申告加算税や延滞税まで付いてきます。
資金の使い道・名義でつまずくケース
失敗例8:住宅ローンの繰上返済に充てた
この特例は「これから家を取得するため」の資金が対象です。すでに組んでいる住宅ローンの返済に充てることはできません。
失敗例9:仲介手数料や登記費用などの「諸費用」に充てた
ここも誤解の多いところです。国税庁の質疑応答事例では、新築等の対価とは新築工事の請負代金の額または住宅の売買代金の額と解されており、売買契約書に貼付した印紙代・不動産仲介手数料・不動産取得税・登録免許税は「対価に充てられたもの」に当たらないとされています。カーテンやソファ、冷蔵庫などの家具家電、引っ越し費用も同様に対象外です。一方で、建築業者以外の建築士に支払った家屋の設計料や、住宅と一体で取得した電気設備等の附属設備の取得対価は、対価に充てられたものとして差し支えないとされています。諸費用は自己資金で、贈与資金は本体価格へ――と分けて考えるのが安全です。
失敗例10:贈与を受けた本人が家屋の持分を持っていなかった
共有名義の按分ミスによる失敗です。国税庁は「受贈者が住宅用の家屋を所有する(共有持分を有する場合を含む)ことにならない場合は、この特例の適用を受けることはできない」と明記しています。夫の親から夫が贈与を受けたのに、登記は妻の単独名義にしてしまった、というケースは適用できません。「誰が贈与を受けたか」と「誰が家屋の名義人か」を必ず一致させること。そして持分割合も、実際の資金負担割合どおりに登記しないと、夫婦間でさらに別の贈与とみなされるおそれがあります。
他の制度との関係で注意したいポイント
他の制度との兼ね合いにも、思わぬ落とし穴があります。
住宅ローン控除との併用はできる?
併用は可能です。ただし国税庁の質疑応答事例では、住宅ローン控除の計算の基礎となる「住宅借入金等の金額の合計額」は、次の①②のいずれか低い金額になるとされています。
①住宅の取得等に係る借入金の金額
②住宅の取得等に係る対価の額から、この特例の適用を受ける贈与の金額を控除した額
たとえば4,000万円の家に1,000万円の贈与を受け、3,500万円のローンを組んだ場合、②は3,000万円(4,000万円−1,000万円)となり、控除の基礎は3,000万円までとなります。贈与を受けた分だけ控除額が減る可能性がある、というわけですね。詳しくは住宅取得資金贈与と住宅ローン控除の併用の記事でも解説しています。
過去にこの特例を使ったことがある方は要注意
受贈者の要件として、平成21年分から令和5年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」の適用を受けたことがないことが挙げられています(一定の場合を除きます)。買い替えなどで過去に使った記憶がある方は、当時の申告書控えを確認しておきましょう。
将来の相続で不利になることも?
親の自宅を将来相続する可能性がある方は注意が必要です。相続税には自宅の土地の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」があり、配偶者も同居親族もいない場合の「家なき子」枠を使うには、相続開始時に取得者が居住している家屋を、相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないことなどが条件になります。住宅取得資金贈与を受けて持ち家を取得すると、この条件を満たせなくなります。目先の贈与税と、将来の相続税――どちらを優先すべきかは、ご家庭の資産構成によって答えが変わります。
失敗しないための適用要件チェックリスト
ここまでの内容を、判定しやすい形にまとめました。
| 区分 | チェック項目 |
| 贈与する人 | 自分の父母や祖父母(直系尊属)ですか?(義父母は養子縁組がある場合のみ) |
| 贈与される人 | 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上ですか? |
| 贈与を受けた年の合計所得金額は2,000万円以下(※)ですか? | |
| 平成21年分〜令和5年分でこの非課税の特例を使っていませんか? | |
| 贈与を受けた時に日本国内に住所がありますか? | |
| 住宅 | 登記簿上の床面積は40㎡以上240㎡以下ですか? |
| 床面積の2分の1以上を自分の居住用に使いますか? | |
| 配偶者や親族など特別の関係がある人から取得・請負したものではありませんか? | |
| スケジュール | 贈与資金を翌年3月15日までに全額使い切りますか? |
| 翌年3月15日までに入居できますか?(遅くとも翌年12月31日まで) | |
| 土地の先行取得なら、翌年3月15日までに棟上げまで進みますか? | |
| お金と名義 | 贈与資金の充当先は家屋の請負代金・売買代金(+敷地の土地代)ですか? |
| 贈与を受けた本人が家屋の持分を取得しますか? | |
| 手続き | 翌年2月1日〜3月15日に、必要書類を添えて贈与税の申告をしますか? |
※床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下
2026年が最終年。いつまでに何をすればいい?
現行の非課税限度額(省エネ等住宅1,000万円/それ以外500万円)は、令和8年12月31日までの贈与が対象です。2026年中に贈与を受けるなら、期限から逆算して次のように動くのが安全です。
・2026年内:贈与契約書を作成し、受贈者名義の口座へ振り込む(誰から誰への贈与かを通帳で証明できる形に)
・2027年3月15日まで:全額を住宅の対価に充当し、引渡し・入居まで完了させる(土地先行なら棟上げまで)
・2027年2月1日〜3月15日:住宅性能証明書などを添えて贈与税の申告書を提出する
2027年以降の取扱いは、その年の税制改正で決まります。最新の内容は必ず国税庁の情報でご確認ください。
まとめ
住宅取得資金贈与の非課税の特例は、マイホームの夢を後押ししてくれるありがたい制度です。一方で、要件を一つでも満たせないと適用できなくなり、数百万円単位の贈与税につながります。
・失敗の型は「期限」「使い道」「名義」の3つ
・税額0円でも、翌年2月1日〜3月15日の期限内申告が絶対条件
・使えるのは家屋の請負代金・売買代金と敷地の土地代。諸費用・家具家電・ローン返済はNG
・贈与を受けた本人が家屋の持分を取得すること
・現行制度の対象は2026年12月31日までの贈与
計画段階から一つひとつ丁寧に確認することが、失敗を防ぐいちばんの近道です。判断に迷う点があれば、贈与の実行前に税理士へご相談くださいね。私たちプライムパートナーズでも、贈与のタイミング設計から申告まで対応しています。
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参考文献
国税庁 No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
国税庁 No.4503 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税選択の特例
国税庁 質疑応答事例 住宅用家屋の新築等の対価又は増改築等の費用の範囲
国税庁 質疑応答事例 住宅用家屋を新築するための土地の購入資金に充てるために金銭の贈与を受けた場合における住宅取得等資金の贈与の特例の適用の可否
国税庁 質疑応答事例 住宅取得等資金の贈与と住宅借入金等特別控除との関係
国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
住宅取得等資金贈与の非課税特例!よくある適用失敗例Q&Aまとめ
Q.贈与税が0円でも申告は必要ですか?
A.必要です。非課税の特例は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に戸籍の謄本や契約書の写しなど一定の書類を添付して提出することが要件です。申告をしないと、税額が0円になるはずだった贈与にも通常どおり贈与税が課され、無申告加算税や延滞税も発生します。
Q.土地を先に買いました。翌年3月15日までに家が完成しないと使えませんか?
A.完成までは求められませんが、棟上げ相当まで進んでいる必要があります。国税庁の質疑応答事例では、住宅の新築に先行して取得した土地の資金も対象になる一方、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその土地の上に屋根(骨組みを含む)を有し土地に定着した建造物と認められる状態になっていない場合は適用がないとされています。
Q.もらったお金を仲介手数料や登記費用に充てても大丈夫ですか?
A.対象外です。国税庁の質疑応答事例では、売買契約書に貼付した印紙、不動産仲介手数料、不動産取得税・登録免許税は、住宅用家屋の新築等の対価に充てられたものとはいえないとされています。家具・家電や引っ越し費用も同様です。一方、建築業者以外の建築士に支払った設計料や、住宅と一体で取得した電気設備等の附属設備の対価は、対価に充てられたものとして差し支えないとされています。
Q.もらったお金を住宅ローンの返済に使っても大丈夫ですか?
A.いいえ。この特例は住宅を取得するための資金が対象なので、すでに組んでいる住宅ローンの返済に充てることはできません。贈与された資金は、住宅の購入代金や新築・増改築の工事費用に直接充てる必要があります。
Q.中古住宅を購入予定です。築年数が古いと特例は使えないのでしょうか?
A.現行の要件は築年数ではなく建築時期と耐震性で判定します。建築後使用されたことのある住宅用の家屋は、昭和57年1月1日以後に建築されたものであれば対象です。それ以前の建物でも、地震に対する安全性に係る基準に適合することが一定の書類で証明されたもの、または取得日までに耐震改修を申請し翌年3月15日までに耐震基準に適合したことが証明されたものであれば対象になります。
Q.夫が親から贈与を受け、家は妻の単独名義にしました。特例は使えますか?
A.使えません。国税庁は、受贈者が住宅用の家屋を所有する(共有持分を有する場合を含む)ことにならない場合は特例の適用を受けられないとしています。贈与を受けた人自身が家屋の名義人(共有持分でも可)になる必要があります。持分割合も実際の資金負担割合に合わせて登記しないと、夫婦間で別の贈与とみなされるおそれがあります。
Q.父と母の両方から贈与を受ければ、非課税枠は2倍になりますか?
A.なりません。非課税限度額は贈与を受けた人ごとに、省エネ等住宅で1,000万円、それ以外の住宅で500万円までと定められています。父母や祖父母の複数から贈与を受けても、受贈者1人あたりの合計で判定します。
Q.この特例はいつまで使えますか?2027年以降はどうなりますか?
A.国税庁のタックスアンサーNo.4508では、令和6年1月1日から令和8年(2026年)12月31日までの贈与が対象とされています。2027年以降の取扱いはその年の税制改正で決まるため、最新の情報を国税庁のサイトでご確認ください。
Q.特例を受ける年の合計所得金額が2,000万円を超えそうです。どうなりますか?
A.贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円(床面積40㎡以上50㎡未満の住宅は1,000万円)を超えると、この特例は適用できません。所得には給与のほか、不動産の譲渡所得や副業の所得なども含まれるため、旧宅の売却がある年などは事前に見積もっておくことが重要です。


