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不動産所得の必要経費|借入金利子と元本返済の扱いを国税庁資料で解説

目次
  1. 不動産所得の必要経費と借入金利子の関係
  2. 不動産所得の計算方法
  3. 借入金利子が必要経費になる理由
  4. 借入金利子が必要経費になる範囲
  5. 必要経費になる借入金利子・ならない借入金利子
  6. 元本の返済は必要経費にならない
  7. 元本で手当てした建物は減価償却で経費にする
  8. 設例で見る返済額の内訳と必要経費の計算
  9. 不動産所得が赤字のときの土地等の負債利子
  10. 損益通算が制限される仕組み
  11. 土地と建物を一括で購入したときの負債の区分
  12. 申告書への書き方
  13. 自宅と賃貸の併用住宅の按分
  14. 家事関連費としての区分
  15. 併用住宅で土地等の負債利子を計算する場合
  16. 業務開始前・使用開始前の借入金利子
  17. 事業的規模かどうかによる違い
  18. 申告前に確認しておきたい注意点
  19. まとめ
  20. 参考文献
  21. 不動産所得の借入金利子のよくある質問まとめ

この記事は、アパートやマンション、貸家などを貸している個人の不動産オーナー(賃貸経営をしている方)に向けたものです。結論から申し上げます。賃貸用の建物などを取得するための借入金の利子は、不動産所得の必要経費になります。一方で、借入金の返済額のうち元本に相当する部分は必要経費になりません。元本で手当てした建物の取得費は、減価償却によって毎年少しずつ必要経費にしていきます。また、自宅と賃貸部分が一緒になった併用住宅では利子を按分し、不動産所得が赤字の年は「土地等を取得するために要した負債の利子」に相当する部分の損益通算が制限されます。本記事では、国税庁の資料に沿って、借入金利子が必要経費になる範囲と計算の手順を設例で整理します。

不動産所得の必要経費と借入金利子の関係

「ローンの返済額は毎月出ていくのに、全額を経費にできないのはなぜか」と疑問に感じる方は少なくありません。まずは、不動産所得の計算の仕組みと、借入金利子がどこに位置づけられるかを確認します。

不動産所得の計算方法

不動産所得は、土地や建物などの不動産の貸付け、借地権など不動産の上に存する権利の設定や貸付けなどから生じる所得です。所得の金額は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します国税庁 No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)。

総収入金額 − 必要経費 = 不動産所得の金額

必要経費にできるのは、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち、家事上の経費と明確に区分できるものです。主なものとして、貸付資産に係る固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費が挙げられています。

借入金利子が必要経費になる理由

業務用資産の購入のための借入金など、業務のための借入金の利息は必要経費になります国税庁 No.2210 必要経費の知識。利子は、お金を借りて賃貸用の資産を持つことの対価であり、家賃収入を得るためにかかった費用だからです。

必要経費に算入する時期は、その年に債務が確定した金額が基準です。12月31日までに債務が成立し、具体的な給付をすべき原因となる事実が発生し、金額を合理的に算定できるものが、その年の必要経費になります。借入金利子であれば、その年中に支払うことの確定した金額を計上するのが基本です。

借入金利子が必要経費になる範囲

借入金利子であれば何でも経費になるわけではありません。ポイントは、その借入金が何のために使われたかです。

必要経費になる借入金利子・ならない借入金利子

令和7年分の収支内訳書(不動産所得用)の書き方では、借入金利子の欄に記入するものを「賃貸している建物等を取得するための借入金の利子」と説明しています国税庁 令和7年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方。同じ借入れでも、資金の使い道によって扱いが分かれます。

賃貸用の建物・建物附属設備の取得 不動産所得の必要経費
賃貸用の建物の敷地(土地等)の取得 不動産所得の必要経費
(赤字の年は損益通算に制限あり)
併用住宅のうち自宅部分の取得 必要経費にならない
生活費・自家用車など家事上の支出 必要経費にならない

実務では、借入金を賃貸用以外の目的にも使っている場合に、利子の全額をそのまま計上してしまう例が見受けられます。借入金の使途が分かる契約書や資金の流れを、申告前に確認しておくことが大切です。

元本の返済は必要経費にならない

同じ書き方には、借入金の返済額のうち元本に相当する部分の金額は必要経費になりませんとも明記されています。元本の返済は借りたお金を返しているだけで、費用の支出ではないためです。毎月の返済額をそのまま経費に計上すると所得を過少に申告することになるため、注意が必要です。

元利均等返済の場合、毎月の返済額は一定でも、そのうち利子と元本の割合は毎回変わります。金融機関から届く返済予定表や年間の利息証明などで、その年に支払った利子の合計額を確認して計上します。

関連コラム不動産所得の申告で借入金利子の内訳から金融機関を除く理由とは▸

元本で手当てした建物は減価償却で経費にする

元本の返済が経費にならないからといって、借入金で買った建物の代金が経費にならないわけではありません。建物や建物附属設備などは時の経過によって価値が減っていく減価償却資産であり、その取得に要した金額は、法定耐用年数にわたって各年分の必要経費に配分されます国税庁 No.2100 減価償却のあらまし。

一方で、土地は時の経過により価値が減少しない資産のため、減価償却資産ではありません。土地の購入代金は、借入金で支払った場合でも毎年の必要経費にはなりません。

借入金の利子 支払うことの確定した年の必要経費
借入金の元本返済 必要経費にならない
建物・建物附属設備の取得費 減価償却費として耐用年数にわたり必要経費
土地の取得費 減価償却の対象外

設例で見る返済額の内訳と必要経費の計算

ここからは、実務でよくある形の設例で、返済額を利子と元本に分ける計算を確認します。数字は説明のための架空のものです。

個人のAさんは、賃貸アパート1棟を土地付きで購入しました。土地4,000万円・建物6,000万円を1つの契約で同じ売主から譲り受け、購入資金のうち8,000万円を金融機関からの借入金で賄いました。借入金は土地と建物の別に区分されていません。今年1年間の返済額は420万円で、返済予定表によると、このうち元本の返済額は260万円でした。

年間の返済額420万円 − 元本の返済額260万円 = 借入金利子160万円

必要経費に算入できるのは、このうち借入金利子の160万円だけです。元本の返済額260万円は必要経費にならず、建物の取得費6,000万円が減価償却を通じて必要経費になっていきます。

なお、Aさんの今年の家賃収入は600万円、借入金利子を含む必要経費の合計は700万円(減価償却費380万円、借入金利子160万円、固定資産税・修繕費などその他160万円)だったとします。

総収入金額600万円 − 必要経費700万円 = 不動産所得の金額△100万円

不動産所得が赤字になりました。この赤字をほかの所得と通算する際に問題になるのが、次の章で説明する土地等の負債利子です。

不動産所得が赤字のときの土地等の負債利子

不動産所得の損失(赤字)は、原則として他の黒字の所得金額から差し引くことができます(損益通算)。ただし、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入した土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額は、損益通算の対象となりません国税庁 No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算。

損益通算が制限される仕組み

土地等の負債利子そのものは、不動産所得の計算上は必要経費になります。制限されるのは、不動産所得が赤字になった場合に、その損失のうち土地等の負債利子に相当する部分を生じなかったものとみなすという点ですe-Gov法令検索 租税特別措置法第41条の4。

生じなかったものとみなされる金額は、土地等の負債利子の額と損失の金額の大小で次のように決まりますe-Gov法令検索 租税特別措置法施行令第26条の6。

土地等の負債利子と損失の関係 生じなかったものとみなされる金額
負債利子の額が損失の金額を超える 損失の金額の全額
負債利子の額が損失の金額以下 損失のうち負債利子の額に相当する金額

関連コラム土地等の負債利とは?制度背景とともに説明します▸

土地と建物を一括で購入したときの負債の区分

設例のように、土地と建物を1つの契約で同じ売主から譲り受け、借入金がそれぞれの資産ごとに区分されていないなど区分が難しい場合には、借入金がまず建物の取得の対価に充てられ、次に土地等の取得の対価に充てられたものとして、土地等の負債利子を計算することができます。

その年の土地等の負債利子の額は、建物と土地等の取得のための負債の利子の額に、負債の額のうち土地等の取得の対価に充てられたものとされる負債の額の割合を掛けて計算します国税庁 第41条の4((不動産所得に係る損益通算の特例))関係。Aさんの設例に当てはめると、次のとおりです。

借入金8,000万円 − 建物の取得の対価6,000万円 = 土地等に充てられた負債2,000万円
借入金利子160万円 × 2,000万円 ÷ 8,000万円 = 土地等の負債利子40万円

Aさんの損失100万円は、土地等の負債利子40万円より大きいため、損失のうち40万円だけが生じなかったものとみなされます。

不動産所得の損失100万円 − 土地等の負債利子40万円 = 損益通算できる損失60万円

仮に損失が30万円だった場合は、土地等の負債利子40万円のほうが大きいため、損失30万円の全額が生じなかったものとみなされ、損益通算できる金額はありません。この計算では借入金を建物から先に充てるため、土地等に充てられたとされる負債は、借入金のうち建物の取得の対価を超える部分だけになります。

申告書への書き方

収支内訳書(不動産所得用)では、赤字の方で必要経費に算入した金額のうちに土地等を取得するために要した負債の利子の額がある場合、「土地等を取得するために要した負債の利子の額」欄にその金額を書きます。確定申告書第一表の不動産所得の欄には、損失の金額が負債利子の額より多い方は△印を付けて差額を書き、それ以外の方は0と書きます。設例のAさんであれば、△60万円を記入することになります。

自宅と賃貸の併用住宅の按分

「1階を貸し、2階に自分で住んでいる」といった併用住宅では、借入金利子のすべてを必要経費にすることはできません。

家事関連費としての区分

一つの支出が家事上と業務上の両方に関わる費用は家事関連費と呼ばれ、必要経費になるのは、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる部分の金額に限られます。併用住宅の取得のための借入金利子も、自宅部分に対応する金額は必要経費になりません。実務では、建物の床面積のうち賃貸部分が占める割合など、合理的な基準で区分するのが一般的です。

たとえば、Aさんの借入金利子160万円のうち、賃貸部分の割合が60%の併用住宅だった場合は、次のようになります。

借入金利子160万円 × 賃貸部分の割合60% = 必要経費になる利子96万円

残りの64万円は自宅部分の利子であり、不動産所得の必要経費にはなりません。

併用住宅で土地等の負債利子を計算する場合

併用住宅を敷地とともに取得した場合に、建物から先に借入金を充てる計算を使うときは、建物と土地等の取得の対価と負債の額を、まず賃貸業務に必要な部分とそれ以外の部分に区分します。そのうえで、賃貸業務に必要な部分の金額をもとに計算します。自宅部分の金額を混ぜたまま計算しないよう注意してください。

業務開始前・使用開始前の借入金利子

新しく賃貸物件を建てる場合などは、借入れをしてから家賃収入が入るまでに期間が空くことがあります。この期間の利子の扱いは、すでに不動産所得の業務を営んでいるかどうかで異なります国税庁 No.3264 借入金の利子が取得費になるとき。

状況 使用開始までの期間に対応する利子
すでに賃貸業務を営んでいる方が
新たに賃貸用資産を取得
必要経費に算入する
(資産の取得費に含めることもできる)
賃貸業務を始める前に
賃貸用資産を取得
業務開始前の期間に対応する利子は
資産の取得費に含める

使用開始の日は、建物であれば本来の目的のための使用を開始した日、新たに建物の敷地にする土地であれば、その建物を事業の用などに使用した日で判定します。はじめて賃貸経営を始める方は、入居者の募集を始める前の利子を必要経費に入れてしまわないよう、借入日と使用開始日を記録しておくと安心です。

事業的規模かどうかによる違い

不動産の貸付けが事業として行われているかどうかは、原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模かどうかで実質的に判断します。建物の貸付けでは、貸間・アパート等はおおむね10室以上、独立家屋はおおむね5棟以上であれば、原則として事業として行われているものとして扱われます国税庁 No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分。

借入金利子については、業務のための借入金の利息として必要経費になる点は、事業的規模であってもそれ以外であっても同じです。規模によって所得金額の計算が異なる主な点は、次のとおりです。

以下の表は、事業的規模の場合の取扱いと、カッコ内にそれ以外の場合の取扱いを示したものです。

賃貸用固定資産の取壊し・
除却などの資産損失
全額を必要経費に算入
(それ以外は資産損失を差し引く前の所得が限度)
未収賃貸料の貸倒損失 回収不能となった年分の必要経費
(それ以外は収入計上年分にさかのぼって計算し直す)
青色事業専従者給与・
事業専従者控除
適用あり(それ以外は適用なし)
令和8年分までの
青色申告特別控除
要件を満たせば最高55万円または65万円
(それ以外は最高10万円)

関連コラム確定申告の決算書|一般用と不動産所得用の違い・両方必要なケース▸

申告前に確認しておきたい注意点

借入金利子の計上で誤りが起きやすいのは、次のような場面です。

  • 毎月の返済額をそのまま必要経費に計上している(元本部分が含まれている)
  • 賃貸用以外の目的で借りた資金の利子が混ざっている
  • 併用住宅の自宅部分の利子を按分せずに全額計上している
  • 業務開始前の期間の利子を必要経費にしている
  • 赤字の年に土地等の負債利子を区分せず、損失の全額を損益通算している

とくに土地等の負債利子は、黒字の年には問題にならず、赤字になった年にはじめて計算が必要になります。購入時の売買契約書で土地と建物の価額を確認し、借入金の区分方法を決めておくと、赤字の年にも落ち着いて対応できます。

借入金利子の区分や併用住宅の按分、土地等の負債利子の計算は、物件の取得の経緯や契約内容によって判断が分かれます。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。申告の内容に不安がある方は、まずは税理士にご相談ください。

まとめ

不動産所得の必要経費になるのは、賃貸用の建物などを取得するための借入金の利子です。借入金の元本の返済は必要経費にならず、建物の取得費は減価償却を通じて必要経費になります。

  • 賃貸用の建物等を取得するための借入金の利子は必要経費になる
  • 返済額のうち元本に相当する部分は必要経費にならない
  • 建物は減価償却で経費化し、土地は減価償却の対象外
  • 併用住宅は、自宅部分に対応する利子を必要経費から除く
  • 業務開始前の期間に対応する利子は、資産の取得費に含める
  • 赤字の年は、土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分が損益通算できない
  • 土地と建物を一括購入して負債を区分できない場合は、建物から先に充てたものとして計算できる

借入金利子の扱いは、毎年の申告だけでなく、赤字の年の税額にも影響します。判断に迷う点があれば、申告期限が近づく前に、まずは税理士にご相談ください。

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参考文献

不動産所得の借入金利子のよくある質問まとめ

Q.アパートローンの返済額は全額が必要経費になりますか?

A.いいえ。必要経費になるのは返済額のうち利子の部分だけです。元本に相当する部分は必要経費になりません。返済予定表などで、その年に支払った利子の合計額を確認して計上します。

Q.元本の返済が経費にならないなら、建物の購入代金はどうなりますか?

A.建物や建物附属設備は減価償却資産のため、取得に要した金額を法定耐用年数にわたって減価償却費として必要経費にしていきます。土地は減価償却資産ではないため、減価償却費は生じません。

Q.土地を購入するための借入金の利子も必要経費になりますか?

A.賃貸用の建物の敷地となる土地等を取得するための借入金の利子は、不動産所得の必要経費になります。ただし、不動産所得が赤字の年は、その利子に相当する部分の損失は損益通算できません。

Q.自宅と賃貸部分がある併用住宅の借入金利子はどう扱いますか?

A.賃貸部分に対応する利子だけが必要経費になり、自宅部分に対応する利子は必要経費になりません。実務では、床面積の割合など合理的な基準で区分するのが一般的です。

Q.賃貸を始める前に支払った借入金の利子は必要経費になりますか?

A.不動産所得の業務を始める前の期間に対応する利子は必要経費にならず、その資産の取得費に含めます。すでに賃貸業務を営んでいる方が新たに物件を取得した場合は、使用開始までの利子を必要経費とするか取得費に含めるかを選べます。

Q.土地と建物をまとめて購入し借入金が区分されていない場合、土地等の負債利子はどう計算しますか?

A.1つの契約で同じ売主から譲り受けた場合など区分が難しいときは、借入金がまず建物の取得の対価に充てられ、残りが土地等に充てられたものとして計算できます。その負債の割合を利子の額に掛けて土地等の負債利子を求めます。

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