「e-Taxで使うIDとパスワードは、どこで発行してもらえるのか」。確定申告の準備を進めるなかで、この疑問にぶつかる事業者や経理担当の方は少なくありません。従業員の方から聞かれて調べ始めた、という経営者の方もいらっしゃいます。
結論から申し上げます。ID・パスワード方式のIDとパスワードは、もともと税務署の窓口で職員による対面の本人確認を受けたうえで発行されるものでした。ただし現在は、令和7年10月1日以降、新規の発行が停止されています。これから初めてe-Taxを使う方は、マイナンバーカード方式で準備を進めることになります。この記事では、発行の窓口と持ち物、利用者識別番号との違い、すでに持っている方が忘れてしまった場合の動き方までを、事業者の視点で整理します。
ID・パスワード発行の現在地
まず押さえていただきたいのが、ID・パスワード方式の位置づけです。この方式は、マイナンバーカードが普及するまでの暫定的な対応として運用されてきたもので、税務署が本人確認を行ったうえで発行するIDとパスワードを使い、確定申告書等作成コーナーからe-Taxで送信する仕組みです。恒久的な制度としてではなく、移行期の受け皿として設けられていた点が重要です。
そのうえで、令和7年10月1日より、ID・パスワード方式で使用するIDとパスワードの新規発行は停止されました。マイナンバーカードの保有率が約8割に達し、マイナンバーカード方式の利用が増えていることを踏まえた対応です。すでにID・パスワード方式の届出をされている方は引き続き利用でき、e-Taxを利用するために必要な利用者識別番号(半角16桁の番号)の新規取得やe-Taxへのログインも、引き続き可能とされています。国税庁 「確定申告書等作成コーナー」で利用するID・パスワードの新規発行停止について
つまり、いま「税務署でIDとパスワードを発行してもらおう」と考えて窓口に向かっても、新規の発行は受けられません。ここを取り違えたまま申告期限の直前に動くと、時間を失います。ご自身がどちらの立場なのかを、先に確かめておいてください。
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従来の発行窓口と持ち物
すでに届出を済ませている方が「自分はいつ、どこで受け取ったのか」を思い出すためにも、従来の発行の流れを確認しておきます。IDとパスワードは、税務署で職員と対面による本人確認を行った後に発行されるものでした。発行を希望する方は、運転免許証などの本人確認書類を持参のうえ、お近くの税務署に来署する必要がありました。国税庁 平成31年1月からe-Taxの利用手続がより便利になります
発行時の要件の整理
従来の取扱いを一覧にすると、次のとおりです。郵送や電話だけでは完結せず、本人が窓口に出向くことが前提とされていた点が特徴でした。
| 発行の窓口 | お近くの税務署 |
|---|---|
| 本人確認の方法 | 税務署の職員と対面による確認 |
| 持参するもの | 運転免許証などの本人確認書類 |
| 受け取るもの | ID・パスワード方式の届出完了通知 |
| 使える場面 | 国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナー |
| 現在の取扱い | 令和7年10月1日以降は新規発行を停止 |
なお、平成30年1月以降に確定申告会場などで「ID・パスワード方式の届出完了通知」を受け取られた方は、すでに利用開始届出書の提出が済んでいる扱いとなります。心当たりのある方は、お手元の申告書等の控えを先に確認してみてください。封筒に入れたまま保管されているケースは、実務でもよく見かけます。
利用者識別番号との違い
ここで混同しやすいのが、利用者識別番号とID・パスワード方式の関係です。利用者識別番号はe-Taxを使うための半角16桁の番号そのものであり、ID・パスワード方式はその番号と暗証番号を使って作成コーナーから送信するという「方式」を指します。番号と方式は別の概念で、新規発行が停止されたのは後者のID・パスワードです。
| 利用者識別番号 | e-Taxを利用するために必要な半角16桁の番号。新規取得は引き続き可能 |
|---|---|
| ID・パスワード方式 | その番号と暗証番号で作成コーナーから送信する方式。IDとパスワードの新規発行は停止 |
利用者識別番号そのものを取得するための手続は、電子申告・納税等開始届出書の提出です。e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナーで作成して提出する方法のほか、書面で納税地の所轄税務署長に提出する方法もあり、税務署の開庁時間は8時30分から17時までとされています。国税庁 H3-1 電子申告・納税等開始(変更等)の届出
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IDやパスワードを忘れた場合の動き方
「去年は使えたのに、今年になってログインできない」という相談も多く寄せられます。この場合、まず切り分けたいのは、16桁の番号が分からないのか、暗証番号が分からないのか、その両方なのかという点です。原因によって次の一手が変わります。
確認の順序
最初に当たるべきは、お手元の書類です。確定申告会場などで受け取った「ID・パスワード方式の届出完了通知」や、過去の申告書等の控えに記載が残っていることがあります。事業者の場合、前任の経理担当者から引き継いだファイルに紛れていることも珍しくありません。
書類が見当たらない場合は、届出の内容を変更する手続として、電子申告・納税等変更等届出書を提出する方法があります。届出の内容を変更する方や書面で提出する方には、後日、税務署から郵送等で通知書が送付される取扱いです。郵送を挟むぶん日数がかかりますので、申告期限が迫っている時期ほど、早めに着手してください。
なお、e-Taxのメッセージボックスに保管されている受信通知や税務署からのお知らせを確認するには、マイナンバーカード等での認証が必要とされています。IDとパスワードだけでは確認できない領域がある点も、あわせて押さえておきたいところです。
これからe-Taxを始める事業者の選択肢
新規にe-Taxを始める場合は、マイナンバーカード方式が前提になります。令和7年分の確定申告では、確定申告書等作成コーナーで作成した申告書をマイナンバーカードを使用してe-Taxで送信する流れが案内されており、必要なものは、スマートフォンやタブレット、パソコンといった端末と、マイナンバーカード、そしてカード発行時に自身で設定したパスワード2種とされています。国税庁 e-Taxの利用方法
パソコンやタブレットから送信する場合は、マイナンバーカード読取対応のスマートフォン、またはICカードリーダライタが必要になります。電子証明書には有効期限があり、期限を過ぎるとマイナンバーカードを利用したe-Taxによる申告手続等ができなくなりますので、法人の代表者の方も、ご自身のカードの期限を一度確認しておくことをおすすめします。
事業者の方が判断に迷いやすいのは、申告の規模や内容によって、作成コーナーだけで足りるのか、税理士による代理送信を含めた体制を整えるべきなのかが変わってくる点です。ID・パスワード方式はもともと確定申告書等作成コーナーでのみ利用できる仕組みであり、対応できる範囲には限りがありました。自社にとってどの入口が適切か、判断がつかない場合は、まずは税理士にご相談ください。
実務で押さえる留意点
ID・パスワード方式は、国税庁が「廃止を含めた在り方を検討する」と位置づけてきた暫定的な措置です。現時点で既存の届出者は引き続き利用できますが、今後の取扱いについては改めて案内が予定されています。いま使えているからといって来期も同じ運用が続くとは限らない、という前提で社内の手順書を整えておくと安全です。
特に、経理担当者が退職・異動する可能性のある法人では、e-Taxの認証情報を個人に紐づけたまま運用していると、引継ぎの段階で止まります。誰の名義で、どの方式で、どの手続を行っているのかを一覧にしておくだけでも、申告期のリスクは大きく下がります。
また、申告後に誤りが見つかった場合の訂正手続も、e-Taxの利用環境が整っているかどうかで負担が変わります。送信環境の整備は、申告そのものだけでなく、その後の手続まで含めて考えておきたい論点です。
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まとめ
ID・パスワード方式のIDとパスワードは、従来、税務署の窓口で職員による対面の本人確認を受け、運転免許証などの本人確認書類を持参して発行を受けるものでした。ただし令和7年10月1日以降、この新規発行は停止されています。これから始める方はマイナンバーカード方式で準備を進め、すでに届出済みの方は、手元の届出完了通知や申告書等の控えを確認するところから始めてください。
利用者識別番号は方式とは別の概念で、新規取得は引き続き可能です。番号が分からないのか、暗証番号が分からないのかを切り分けたうえで、必要に応じて変更等届出書の提出を検討します。郵送を挟む手続は日数を要しますので、期限から逆算した着手が要になります。
自社の申告体制をどう組み直すか、どの手続を誰の名義で行うかといった判断は、事業の規模や決算期によって答えが変わります。迷われた場合は、まずは税理士にご相談ください。
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参考文献
- 国税庁 「確定申告書等作成コーナー」で利用するID・パスワードの新規発行停止について
- 国税庁 平成31年1月からe-Taxの利用手続がより便利になります
- 国税庁 H3-1 電子申告・納税等開始(変更等)の届出
- 国税庁 e-Taxの利用方法
e-TaxのID・パスワード発行のよくある質問
Q. e-TaxのIDとパスワードは、いまも税務署で発行してもらえますか。
A. 令和7年10月1日より、ID・パスワード方式で使用するIDとパスワードの新規発行は停止されています。これから初めてe-Taxを利用する場合は、マイナンバーカード方式で準備を進めることになります。
Q. 従来は、どこで何を持って発行を受けていたのですか。
A. お近くの税務署で、職員と対面による本人確認を行った後に発行される取扱いでした。発行を希望する方は、運転免許証などの本人確認書類を持参して来署する必要がありました。
Q. すでにID・パスワード方式を使っています。今後も使えますか。
A. すでにID・パスワード方式の届出をされている方は、引き続き利用できるとされています。ただし今後の取扱いについては改めて案内が予定されているため、マイナンバーカード方式への移行も視野に入れておくと安全です。
Q. 利用者識別番号とID・パスワード方式は同じものですか。
A. 別のものです。利用者識別番号はe-Taxを利用するために必要な半角16桁の番号で、新規取得は引き続き可能とされています。ID・パスワード方式は、その番号と暗証番号を使って確定申告書等作成コーナーから送信する方式を指します。
Q. IDやパスワードが分からなくなった場合はどうすればよいですか。
A. まず、ID・パスワード方式の届出完了通知や過去の申告書等の控えを確認してください。見当たらない場合は、電子申告・納税等変更等届出書を提出する方法があります。書面で提出した場合などは後日税務署から郵送等で通知書が送付されるため、日数に余裕をもって着手してください。
Q. マイナンバーカード方式で送信するには何が必要ですか。
A. スマートフォンやタブレット、パソコンといった端末と、マイナンバーカード、カード発行時に自身で設定したパスワード2種が必要です。パソコンやタブレットから送信する場合は、マイナンバーカード読取対応のスマートフォンまたはICカードリーダライタも必要になります。


