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NISAの相続デメリットと注意点|亡くなった後の口座と運用を税理士が解説

目次
  1. 相続財産とNISA|先に押さえたい2つの結論
  2. 相続で受け取った現金はご自身のNISAで運用できる
  3. 亡くなった方のNISA口座は引き継げない
  4. NISA制度の基本|年間投資枠と非課税保有限度額
  5. 運用益が非課税になる仕組み
  6. 年間投資枠と非課税保有限度額
  7. 損益通算・繰越控除ができない点に注意
  8. 相続財産をNISAで運用する3つのメリット
  9. 運用益が非課税になり、効率よく増やせる
  10. 必要なときに売却して現金化できる
  11. 生前贈与と組み合わせて次の世代へ承継できる
  12. 相続財産をNISAで運用するデメリット・注意点
  13. 年間投資枠の上限があり、一度に全額は投資できない
  14. 元本割れのリスクがあり、損失は他の口座と通算できない
  15. 相続税の納税資金まで投資に回さない
  16. 遺産分割が終わっていないお金は動かさない
  17. 亡くなった方のNISA口座に潜む6つの落とし穴
  18. 死亡日の終値で「売却したものとみなされる」
  19. 含み損は「なかったもの」として切り捨てられる
  20. 亡くなった日以後に支払われる配当等は非課税にならない
  21. 複数の金融機関に口座があれば、その全てに死亡届出書を出す
  22. 旧NISAの非課税期間が残っていても、相続人の売却は課税される
  23. 相続人の特定口座で受け入れるには、同じ金融機関に口座が必要
  24. 主な必要書類
  25. NISA口座の資産と相続税・売却時の税金
  26. NISA口座の資産も相続税の課税対象
  27. 上場株式は4つの価額のうち最も低い価額で評価できる
  28. 投資信託は「解約したら受け取れる金額」で評価する
  29. 売却するなら3年10か月以内|取得費加算の特例
  30. 配当等があれば準確定申告が必要になることも
  31. NISA口座の保有者が亡くなってからの手続きと期限
  32. NISAに回してよい資金・避けたほうがよい資金
  33. まとめ
  34. 参考文献
  35. 相続財産のNISA運用に関するよくある質問
  36. Q.相続したお金をNISA口座で運用できますか?
  37. Q.亡くなった親のNISA口座の株を、自分のNISA口座に引き継げますか?
  38. Q.相続財産をNISAで運用するデメリットは何ですか?
  39. Q.亡くなった時点でNISA口座が含み損だった場合はどうなりますか?
  40. Q.亡くなった日以後にNISA口座へ支払われる配当金は非課税ですか?
  41. Q.複数の金融機関にNISA口座がある場合、手続きはどうなりますか?
  42. Q.相続税をNISAで節税することはできますか?
  43. Q.相続したNISAの株はいつ売るのが有利ですか?
  44. Q.旧NISAの非課税期間が残っている株を相続した場合、売却しても非課税ですか?
  45. Q.NISA口座の投資信託は相続税でどう評価しますか?

結論から申し上げますと、相続で受け取った現金をご自身のNISA口座で運用することはできます。一方で、亡くなった方が使っていたNISA口座そのものを相続人が引き継ぐことはできません。同じ「NISAと相続」の話でも、この2つはまったく別のものです。ここを混ぜて考えてしまうと、「非課税のまま受け継げると思っていたのに課税されてしまった」という行き違いが起こります。この記事では、相続財産をNISAで運用する際のメリット・デメリットと、亡くなった方のNISA口座で起こる落とし穴を、順番に整理してご説明しますね。

相続財産とNISA|先に押さえたい2つの結論

「NISA 相続」で調べていらっしゃる方の悩みは、大きく2つに分かれます。ご自身が受け取った財産をどう運用するかという話と、亡くなった方のNISA口座がどうなるかという話です。まずは違いを表で見比べてみましょう。

場面 NISAは使えるか 主なポイント
相続で受け取った現金を運用する 使える(ご自身のNISA口座) 年間投資枠・非課税保有限度額の範囲内で、数年に分けて投資する
亡くなった方のNISA口座を引き継ぐ 使えない 死亡日の終値で売却したものとみなされ、相続人の課税口座へ移管される

相続で受け取った現金はご自身のNISAで運用できる

遺産分割が終わり、ご自身の預金口座に入ったお金は、もうご自身の財産です。そのお金でNISA口座から投資信託や上場株式を買うことに、相続だからという制限はありません。ただし、相続財産をそのままNISA口座へ移せるわけではなく、一度ご自身の銀行口座などに入金し、そこから買い付けるという流れになります。

亡くなった方のNISA口座は引き継げない

NISAの「非課税で運用できる権利」は、口座名義人ご本人だけのものです。相続人が自分のNISA口座へそのまま移すことはできません。NISA口座を開設していた方が亡くなると、口座に入っていた上場株式等はNISA口座から払い出され、亡くなった日の終値に相当する金額で売却したものとみなされます。そのうえで、相続人が取得した上場株式等は、同じ金額で取得したものとして相続人の特定口座または一般口座へ移管されます国税庁 NISA及びつみたてNISAの手続に関するQ&A。

この扱いは租税特別措置法で定められています。NISA口座の上場株式等が相続または遺贈によって払い出されたときは、その時の価額(払出し時の金額)で譲渡があったものとし、相続人はその払出し時の金額で同じ銘柄を取得したものとみなす、という決まりですe-Gov法令検索 租税特別措置法第37条の14。令和6年以降のNISA(つみたて投資枠・成長投資枠)だけでなく、令和5年までの一般NISA・つみたてNISAで買ったものも同じ扱いになります。

また、相続した株式等を相続人ご自身のNISA口座へ入れることはできませんので、相続によって相続人の年間投資枠や非課税保有限度額が使われることはありません。逆にいえば、亡くなった方が使っていた枠を相続人が引き継ぐこともできません。相続人ご自身の枠は、ご自身の資金で新たに買い付けるときに使うものです。

手続きの流れや必要書類については、別のコラムでくわしくご説明しています。

関連コラムNISA口座は相続でどうなる?非課税は引き継げない・手続きと税金を解説▸

NISA制度の基本|年間投資枠と非課税保有限度額

運用するかどうかを判断する前に、NISAがどんな制度なのかを簡単におさらいしておきましょう。NISAは、上場株式等に投資して得た配当等や売却益にかかる所得税・住民税を非課税にする制度です。

運用益が非課税になる仕組み

通常の課税口座(特定口座や一般口座)で上場株式等を売って利益が出ると、20%(所得税15%・住民税5%)に復興特別所得税を加えた税率がかかります国税庁 No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)。たとえば100万円で買ったものが120万円になったときの差を見てみましょう。

課税口座:利益20万円 × 20.315% = 税金約4万600円
NISA口座:利益20万円 × 0% = 税金0円

相続財産のようなまとまった資金を運用する場合、この差は長い年月をかけるほど大きくなります。

年間投資枠と非課税保有限度額

令和6年以降のNISAは、18歳以上(口座開設の年の1月1日現在)の方が使える制度で、枠は次のとおりです国税庁 No.1535 NISA制度。

項目 内容
対象年齢 18歳以上(口座開設の年の1月1日現在)の居住者等
年間投資上限額 つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円=最大360万円
非課税保有限度額 最大1,800万円(うち成長投資枠のみの上限は1,200万円)
非課税保有期間 期間の定めなし(令和5年までの一般NISAは最長5年、つみたてNISAは最長20年でした)

非課税で持ち続けられる期間の上限がなくなったため、長い目でじっくり育てる使い方がしやすくなっています。

損益通算・繰越控除ができない点に注意

NISAは投資ですので、購入した金融商品の価格が下がり、元本割れすることもあります。さらに注意したいのが、NISA口座で生じた売却損は「なかったもの」とみなされるという扱いです。そのため、特定口座や一般口座で出た利益や配当等と相殺する損益通算も、翌年以降へ繰り越す繰越控除もできません。値下がりしたときの救済手段が課税口座より少ない、という点はあらかじめ知っておきたいところです。

相続財産をNISAで運用する3つのメリット

ここからは、相続で受け取った財産をNISAで運用する場合のメリットを3つご紹介します。

運用益が非課税になり、効率よく増やせる

やはり最大のメリットは運用益が非課税になることです。相続によってまとまった資金を手にした方がNISAを活用すれば、非課税の恩恵をしっかり受けられます。せっかく受け継いだ大切な資産ですから、税金の負担を抑えながら増やしていけるのは心強いですよね。

必要なときに売却して現金化できる

NISA口座で運用している資産は、iDeCo(個人型確定拠出年金)のように原則60歳まで引き出せないといった制限がありません。必要なときにはいつでも売却して現金化できます。住宅の購入資金やお子さまの教育費など、急にまとまったお金が要る場面でも対応しやすいという安心感があります。

生前贈与と組み合わせて次の世代へ承継できる

少し視点を変えた活用法ですが、将来の相続への備えとしてもNISAは有効です。暦年課税の贈与税には年間110万円の基礎控除があり、1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下であれば贈与税はかかりません国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合。この範囲でお子さまへ資金を渡し、お子さま自身のNISA口座で運用していただければ、財産を移しながら非課税の運用も進められます。ただし相続開始前の一定期間の贈与は相続税の課税価格に加算されますので、始める時期には注意が必要です。

関連コラム暦年贈与とは?110万円の非課税枠と7年加算の注意点▸

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相続財産をNISAで運用するデメリット・注意点

一方で、相続財産をNISAで運用するときには、通常の資産運用にはない注意点もあります。判断を誤ると納税で困ることもありますので、4つに分けて確認しましょう。

年間投資枠の上限があり、一度に全額は投資できない

年間投資上限額は最大360万円です。たとえば1,000万円の相続財産があっても、その全額を1年でNISA口座に入れることはできません。非課税保有限度額の1,800万円を使い切るにも、最短で5年かかります。

非課税保有限度額1,800万円 ÷ 年間投資上限額360万円 = 最短5年

相続した財産が高額な場合は、数年に分けて計画的に投資していく前提でお考えください。

元本割れのリスクがあり、損失は他の口座と通算できない

前述のとおり、NISA口座の売却損はなかったものとみなされます。相続財産のうち大きな割合をNISAに回してしまうと、値下がりしたときに損益通算という逃げ道がないまま資産が目減りします。「増やすこと」より「減らさないこと」を優先したい資金は、無理に投資へ回さない判断も大切です。

相続税の納税資金まで投資に回さない

相続税は、原則として現金で一括納付します。申告と納税の期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内ですので、納税に充てる予定のお金は投資に回さないのが鉄則です。ちょうど納税の時期に相場が下がっていると、損失を確定させて売るしかなくなってしまいます。

遺産分割が終わっていないお金は動かさない

遺産分割協議がまとまる前の財産は、相続人全員で共有している状態です。まだご自身のものと確定していない資金を先に投資へ回してしまうと、あとで分割内容が変わったときに現金を用意できず、話し合いがこじれる原因になります。運用を始めるのは、分割と納税のめどが立ってからにしましょう。

亡くなった方のNISA口座に潜む6つの落とし穴

ご家族がNISA口座を持ったまま亡くなられた場合、相続人側で見落としやすい点が6つあります。いずれも知らないままだと損をしかねないところですので、順にご説明しますね。

死亡日の終値で「売却したものとみなされる」

NISA口座の上場株式等は、亡くなった時点で、その日の終値に相当する金額で売却したものとみなされて払い出されます。亡くなった時までの含み益には非課税措置が適用されますので、そこまでの値上がり分に税金はかかりません。ただし相続人にとっての取得価額は、被相続人が買ったときの価格ではなく亡くなった日の終値に置き換わります。

死亡日の終値100万円 − 被相続人の取得価額50万円 = 含み益50万円(非課税)
売却価額120万円 − 相続人の取得価額100万円 = 譲渡益20万円(課税)

被相続人が安く買っていたというメリットは引き継げませんが、裏を返せば亡くなるまでの値上がり分は非課税で清算される、ということでもあります。

含み損は「なかったもの」として切り捨てられる

見落とされがちなのがこちらです。NISA口座内で生じた譲渡損失はなかったものとみなされますので、亡くなった時点で含み損を抱えていた場合、その損は誰も使えません。被相続人の高い取得価額を引き継げないまま、取得価額が下がった状態で相続人へ移ります。

死亡日の終値100万円 − 被相続人の取得価額150万円 = 含み損50万円(なかったものとみなされる)
売却価額130万円 − 相続人の取得価額100万円 = 譲渡益30万円(課税)

本来なら30万円の値下がり(150万円→130万円)だったはずなのに、相続人の手元では30万円の利益として課税される、という結果になります。NISA最大のデメリットが表れる場面といえます。

亡くなった日以後に支払われる配当等は非課税にならない

NISA口座の開設者が亡くなられた日以後、その口座で支払われるべき配当等については、非課税措置の適用がありません。「まだ口座はそのままだから非課税だろう」と思っていると、あとで源泉徴収された金額を見て驚くことになります。亡くなられたことがわかったら、早めに金融機関へ連絡するのが結果的に手続きをすっきりさせます。

複数の金融機関に口座があれば、その全てに死亡届出書を出す

NISA口座を開設している方が亡くなられたときは、相続人が、死亡したことを知った日以後遅滞なく、その方のNISA口座が開設されている金融機関へ「非課税口座開設者死亡届出書」を提出する必要があります。ここで注意したいのが、年分ごとに違う金融機関でNISA口座を開設していた場合です。その場合は該当する全ての金融機関に提出しなければなりません国税庁 NISA口座の新規開設又は変更に関する手続等について。1社に出して終わり、と思い込まないようにしましょう。

旧NISAの非課税期間が残っていても、相続人の売却は課税される

令和5年までの一般NISAには最長5年、つみたてNISAには最長20年の非課税期間がありました。「まだ非課税期間が何年も残っているから、相続人が売っても非課税だろう」と考える方がいらっしゃいますが、そうはなりません。非課税の対象は口座の開設者ご本人がNISA口座の中で譲渡した場合に限られるため、相続で取得した相続人が非課税期間内に売却しても、非課税の適用はありません国税庁 措置法第37条の14《非課税口座内の少額上場株式等に係る譲渡所得等の非課税》関係。相続人の手元に移った時点で、ふつうの課税口座の株式等と同じになる、と考えておきましょう。

相続人の特定口座で受け入れるには、同じ金融機関に口座が必要

NISA口座から払い出された株式等を相続人の特定口座で受け入れる場合は、亡くなった方のNISA口座がある金融機関に、相続人ご自身の特定口座を開設しておく必要があります。手続きでは相続人が「相続上場株式等移管依頼書」を提出し、相続で取得した同じ銘柄の株式等は全て、その特定口座へ移管する決まりになっていますe-Gov法令検索 租税特別措置法施行令第25条の10の2。ふだん別の証券会社を使っている相続人の方でも、まずは亡くなった方の口座がある金融機関で口座を用意することになりますので、早めに確認しておくと手続きが滞りません。

主な必要書類

書類の種類 概  要
非課税口座開設者死亡届出書 金融機関所定の書類です。NISA口座がある金融機関ごとに提出します。
被相続人の戸籍謄本等 出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。
相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書 誰が相続人であるかを証明するために必要です。
遺産分割協議書または遺言書 誰がその資産を相続するのかを証明する書類です。

NISA口座の資産と相続税・売却時の税金

NISAは運用益が非課税になる制度ですが、相続税との関係はまた別です。誤解の多いところですので、しっかり押さえておきましょう。

NISA口座の資産も相続税の課税対象

大切なのは、NISAが非課税にするのは「運用で得た利益にかかる所得税・住民税」だということです。NISA口座にある資産そのものが相続税の非課税になるわけではありません。相続税は、被相続人が亡くなった時点で持っていた預貯金・有価証券・不動産などの財産にかかりますので国税庁 No.4105 相続税がかかる財産、NISA口座の中身も他の財産と同じように課税対象になります。

上場株式は4つの価額のうち最も低い価額で評価できる

相続税を計算するとき、上場株式は課税時期(亡くなった日)の最終価格で評価するのが原則です。ただし、その最終価格が次の3つの価額のうち最も低い価額を超える場合は、その最も低い価額で評価できます国税庁 No.4632 上場株式の評価。

  • 課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額
  • 課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額
  • 課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額

株価が乱高下した時期でも納税者が不利にならないよう配慮された仕組みです。なお、ここで使う相続税の評価額と、所得税の世界で使う「死亡日の終値」という取得価額は別物ですので、混同しないようご注意ください。

関連コラム上場株式の相続税評価|4つの価額で最も低い株価を選ぶ方法▸

投資信託は「解約したら受け取れる金額」で評価する

つみたて投資枠で買えるのは一定の投資信託ですので、NISA口座の中身が投資信託という方も多いと思います。上場していない一般的な証券投資信託は、上場株式のように4つの価額から選ぶ方法ではなく、亡くなった日に解約請求等をしたとした場合に支払いを受けられる金額で評価します国税庁 No.4644 貸付信託・証券投資信託の評価。

課税時期の1口当たりの基準価額 × 口数 − 解約した場合に源泉徴収される所得税等の相当額 − 信託財産留保額・解約手数料 = 評価額

1万口当たりの基準価額が公表されている投資信託は、1万口当たりの基準価額と「口数÷1万」で計算します。亡くなった日に基準価額が無いときは、それより前で最も近い日の基準価額を使います。なお、金融商品取引所に上場している投資信託(ETFなど)は、上場株式の評価に準じて評価します。

関連コラム投資信託の相続税評価|基準価額と日々決算型の計算方法▸

売却するなら3年10か月以内|取得費加算の特例

移管された株式等を売却して譲渡益が出たときは、相続税を納めた方であれば「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算の特例)」を検討できます。相続や遺贈で財産を取得し、その方に相続税が課税されていて、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していることが要件です国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例。申告期限が10か月ですので、実質的には相続開始から3年10か月以内が目安になります。売却のタイミングを考える際は、この期限を意識しておくと有利です。

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配当等があれば準確定申告が必要になることも

被相続人に一定の所得があった場合は、相続人が準確定申告をします。期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内で、その年の1月1日から死亡した日までに確定した所得金額および税額を申告します国税庁 No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)。相続税の10か月より先に来る期限ですので、忘れないようにしたいところです。

NISA口座の保有者が亡くなってからの手続きと期限

ここまでの手続きと税金を、時間の流れに沿って並べてみます。NISAの手続きそのものには明確な日数の期限はありませんが、そのあとに続く申告には期限がありますので、逆算して動くのが安心です。

時期の目安 やること ポイント
亡くなったことを知った後、遅滞なく NISA口座がある全ての金融機関へ「非課税口座開設者死亡届出書」を提出 亡くなった日以後に支払われる配当等は非課税にならない
遺産分割がまとまった後 相続人の特定口座または一般口座へ移管 特定口座で受け入れるなら同じ金融機関に相続人の特定口座を用意する
相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内 必要に応じて被相続人の準確定申告 NISA口座内の配当等・譲渡益は申告不要
相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内 相続税の申告・納付 NISA口座の資産も相続税の課税対象として評価する
相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで 売却するなら取得費加算の特例を検討 相続人の取得価額は亡くなった日の終値になる

NISAに回してよい資金・避けたほうがよい資金

最後に、判断の目安を整理しておきます。相続財産のうち、どの部分を運用に回すかを考えるときの物差しとしてお使いください。

資金の性格 NISAでの運用 理由
当面使う予定がなく、10年以上置いておける資金 向いている 非課税保有期間に上限がなく、長期ほど非課税の効果が効く
相続税の納税に充てる資金 避ける 10か月以内に現金で納付する必要があり、値下がりリスクを取れない
遺産分割が終わっていない資金 避ける 相続人全員の共有財産であり、まだご自身の財産と確定していない
数年以内に使う予定がある資金(教育費・住宅資金など) 慎重に 使う時期に元本割れしていても、損益通算で取り戻せない

まとめ

相続財産をNISAで運用することは、運用益が非課税になるという大きなメリットがあり、大切な資産を効率的に増やすための有効な選択肢のひとつです。年間投資上限額は最大360万円、非課税保有限度額は1,800万円ですので、まとまった相続財産は数年に分けて計画的に投じていくことになります。

一方で、亡くなった方のNISA口座は引き継げません。死亡日の終値で売却したものとみなされ、相続人の課税口座へ移ります。とくに含み損は切り捨てられる、亡くなった日以後の配当等は非課税にならない、複数の金融機関に口座があれば全てに死亡届出書が必要という3点は、見落とすと不利になりやすいポイントです。あわせて、旧NISAの非課税期間が残っていても相続人の売却は課税されること、NISA口座の中身が投資信託なら基準価額をもとに評価することも押さえておきましょう。

相続という大きな節目で受け取った財産だからこそ、メリットとデメリットの両方を理解し、納税資金と遺産分割のめどを立てたうえで、ご自身のライフプランに合わせて活用していくことが大切です。相続税の申告や納税資金の見通しに不安があるときは、どうぞお気軽に専門家へご相談ください。

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参考文献

相続財産のNISA運用に関するよくある質問

Q.相続したお金をNISA口座で運用できますか?

A.はい、可能です。ただし、相続財産を直接NISA口座に入れることはできません。一度ご自身の銀行口座などに入金し、そこからNISA口座で金融商品を購入する流れになります。

Q.亡くなった親のNISA口座の株を、自分のNISA口座に引き継げますか?

A.いいえ、引き継ぐことはできません。NISA口座の上場株式等は亡くなった日の終値に相当する金額で売却したものとみなされ、相続人の特定口座や一般口座へ移管されます。非課税の恩恵は引き継がれません。

Q.相続財産をNISAで運用するデメリットは何ですか?

A.元本保証がないこと、年間投資上限額が最大360万円のため多額の相続財産を一度に投資できないこと、NISA口座の売却損は他の口座の利益と損益通算も繰越控除もできないことです。納税資金や遺産分割前の資金を回さないことも大切です。

Q.亡くなった時点でNISA口座が含み損だった場合はどうなりますか?

A.NISA口座で生じた譲渡損失はなかったものとみなされるため、その含み損は誰も使えません。相続人の取得価額は下がった死亡日の終値になるので、その後の値戻り分が譲渡益として課税される点に注意が必要です。

Q.亡くなった日以後にNISA口座へ支払われる配当金は非課税ですか?

A.非課税にはなりません。NISA口座の開設者が亡くなられた日以後にその口座で支払われるべき配当等については、非課税措置の適用がありません。

Q.複数の金融機関にNISA口座がある場合、手続きはどうなりますか?

A.相続人は、死亡したことを知った日以後遅滞なく、NISA口座が開設されている全ての金融機関に「非課税口座開設者死亡届出書」を提出する必要があります。1社だけに提出して終わりではありません。

Q.相続税をNISAで節税することはできますか?

A.いいえ、NISAは運用益にかかる所得税・住民税を非課税にする制度であり、相続税そのものを減らす効果はありません。NISA口座の資産も相続税の課税対象になります。

Q.相続したNISAの株はいつ売るのが有利ですか?

A.相続税を納めた方は、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日(実質的に相続開始から3年10か月)までに売却すると、取得費加算の特例を検討できます。

Q.旧NISAの非課税期間が残っている株を相続した場合、売却しても非課税ですか?

A.非課税にはなりません。非課税の対象は口座の開設者本人がNISA口座内で譲渡した場合に限られるため、相続で取得した相続人が残りの非課税期間内に売却しても、非課税の適用はありません。

Q.NISA口座の投資信託は相続税でどう評価しますか?

A.上場していない一般的な投資信託は、亡くなった日に解約請求等をしたとした場合に受け取れる金額で評価します。基準価額に口数を掛け、解約した場合に源泉徴収される所得税等の相当額や信託財産留保額・解約手数料を差し引いて計算します。

Office

税理士法人プライムパートナーズ

相続税申告・生前対策に特化した税理士法人です。大手監査法人出身の公認会計士・税理士が、東京・赤坂から全国のご相談をお受けしています。

  • オフィスが入居する IsaI AkasakA の外観
  • 税理士法人プライムパートナーズの相談スペース
  • 代表 税理士 島本 雅史
事務所名
税理士法人プライムパートナーズ
所在地
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2-33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5295(受付 全日 9:00〜19:00)
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。