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譲渡所得の住民税申告不要は使える?課税方式一致の実務を税理士が解説

目次
  1. 住民税だけ申告不要にする選択は不可
  2. 令和6年度から課税方式は所得税と一致
  3. 確定申告をすれば住民税の申告書は不要
  4. 申告不要を選べる所得と選べない所得
  5. 上場株式等の譲渡所得(源泉徴収ありの特定口座)
  6. 上場株式等の配当所得
  7. 一時所得や少額の副収入との違い
  8. 申告の有無で変わる合計所得金額
  9. 申告不要なら合計所得金額に含まれない
  10. 専業主婦・扶養家族が申告するときの注意点
  11. 保険料など税以外の負担の確認
  12. 実務での取り扱い例
  13. 配当控除・損失の繰越を使う場合の判断
  14. 配当控除は総合課税を選んだときだけ
  15. 譲渡損失の繰越控除は毎年の申告が前提
  16. 申告前に確認したいポイント
  17. まとめ
  18. 参考文献
  19. 譲渡所得の住民税申告不要のよくある質問まとめ

「株の売却益を確定申告したいけれど、住民税だけは申告不要にして扶養や保険料への影響を避けたい」とお考えの方は少なくありません。この記事は、上場株式等の譲渡所得や配当所得がある個人投資家・事業者・経営者の方と、そのご家族を扶養に入れている方に向けた内容です。

先に結論をお伝えします。令和6年度の個人住民税からは、上場株式等の配当所得等・譲渡所得等の課税方式が所得税と一致する仕組みになりました。所得税で確定申告した所得について、住民税だけ「申告不要」を選ぶことはできません。申告するかどうかは、所得税の確定申告の段階で、住民税や扶養の判定まで見通して決める必要があります。

住民税だけ申告不要にする選択は不可

「所得税は申告して還付を受け、住民税は申告不要のままにする」という使い分けができるのか、という疑問から確認していきます。

令和6年度から課税方式は所得税と一致

国税庁の案内では、令和6年度の個人住民税から、上場株式等に係る配当所得等および譲渡所得等の申告における課税方式を、所得税等の課税方式と一致させることとされています国税庁 お知らせ。以前は所得税と個人住民税で異なる課税方式を選ぶ余地がありましたが、現在は所得税の確定申告で選んだ方式が、そのまま住民税にも使われます。

上場株式等の
配当所得等
所得税等の確定申告で選択した総合課税、申告分離課税または確定申告不要制度が、個人住民税でも同じ課税方式になる
上場株式等の
譲渡所得等
所得税等の確定申告で選択した申告分離課税または確定申告不要制度が、個人住民税でも同じ課税方式になる

つまり、譲渡所得や配当金を所得税で申告すれば、住民税でも申告したものとして扱われます。逆に、所得税で申告不要を選んだ所得は、住民税でも申告不要のままです。

確定申告をすれば住民税の申告書は不要

所得税等の確定申告書を提出した方は、その申告書のデータが地方公共団体へ送信されるため、改めて住民税の申告書を出す必要はありません国税庁 手順6 住民税、事業税に関する事項を記入する。住民税の税額は、所得税の申告書に書かれた所得の金額などを基に、市区町村が計算して通知します。

「住民税申告不要」という言葉には、「住民税の申告書を別に出さなくてよい」という意味と、「その所得を住民税の計算に含めない」という意味が混ざりがちです。前者は確定申告をすれば満たされますが、後者は所得税で申告不要を選んだ場合に限られる、と整理しておくと迷いにくくなります。

申告不要を選べる所得と選べない所得

「申告不要」が使えるのは、源泉徴収で納税が完結する仕組みが用意された所得です。所得の種類ごとに扱いを確認します。

上場株式等の譲渡所得(源泉徴収ありの特定口座)

特定口座で源泉徴収を選んだ口座(源泉徴収口座)では、譲渡益に15.315パーセント(他に住民税5パーセント)の所得税および復興特別所得税が源泉徴収され、その口座内の譲渡による所得は申告不要とすることができます国税庁 No.1476 特定口座制度。申告するか申告不要とするかは、口座ごとに選択できます。

ただし、源泉徴収口座の所得を他の口座の譲渡損益と相殺する場合や、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例を受ける場合は、確定申告が必要です。この場合、申告した口座の所得は住民税でも申告したものとして計算されます。

上場株式等の配当所得

上場株式等の配当等は、金額にかかわらず確定申告を要しない「確定申告不要制度」を選べます。選択は1回に支払を受けるべき配当等の額ごと(源泉徴収口座に受け入れた配当等は口座ごと)に行います国税庁 No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)。

注意したいのは、発行済株式等の3パーセント以上を保有する大口株主等が受ける配当です。大口株主等の配当は総合課税の対象となり、少額配当の場合を除いて申告分離課税や確定申告不要制度は選べません。オーナー経営者が自社の上場株式から配当を受ける場合は、まずこの区分に当たるかを確認してください。

関連コラム譲渡所得の住民税は何%?長期5%・短期9%と計算方法を税理士が解説▸

一時所得や少額の副収入との違い

一時所得は、原則としてその所得金額の2分の1に相当する金額を給与所得などの他の所得と合計して税額を計算する所得です国税庁 No.1490 一時所得。口座ごと・配当ごとに申告するかどうかを選べる上場株式等の確定申告不要制度とは、仕組みが異なります。なお、一時払養老保険の差益など一定のものは20.315パーセントの源泉分離課税で完結し、確定申告を行うことはできません。

給与を1か所から受けている会社員の方は、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円以下であれば所得税の確定申告は不要とされています国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人。ただし、所得税等の確定申告書の提出義務がない方は、原則として市区町村へ住民税の申告書を提出する必要があります。上場株式等の「申告不要」と、20万円以下の「所得税の申告不要」は別の仕組みである点に気をつけてください。

関連コラム確定申告20万円以下は不要?必要になる例外と住民税・還付申告▸

申告の有無で変わる合計所得金額

課税方式の一致で実務上の影響が大きいのは、扶養控除や配偶者控除の判定に使う合計所得金額です。

申告不要なら合計所得金額に含まれない

国税庁は、上場株式等の配当等について、確定申告をした場合と確定申告不要制度を選んだ場合の扶養控除等の判定を次のように整理しています国税庁 No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度。

配当等の申告方法 扶養控除等の判定
確定申告して総合課税を選択 合計所得金額に含まれる
確定申告して申告分離課税を選択 合計所得金額に含まれる(譲渡損失との損益通算の特例を受ける場合は適用後の金額、繰越控除を受ける場合は適用前の金額)
確定申告しない(確定申告不要制度) 合計所得金額に含まれない

源泉徴収口座の譲渡所得等も同様で、確定申告をしなければ、配偶者(特別)控除や基礎控除などの判定に使う合計所得金額は、源泉徴収口座の所得を含めずに判定します国税庁 令和7年分株式等の譲渡所得等の申告のしかた。同じ手引きでは、株式等を売った方を控除の対象にしている家族がいる場合、売った方の合計所得金額によってはその控除が受けられなくなることがあると注意を促しています。

専業主婦・扶養家族が申告するときの注意点

扶養親族に当たるかどうかは、年間の合計所得金額が62万円以下(令和8年分から適用。令和7年分は58万円以下)かどうかで判定します国税庁 No.1180 扶養控除。配偶者控除の対象となる配偶者の要件も、令和8年分は合計所得金額62万円以下です国税庁 No.1191 配偶者控除。配偶者の合計所得金額が62万円を超え133万円以下で、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下なら、配偶者特別控除の判定に移ります。

専業主婦(主夫)の方や学生のお子さまが、還付や損益通算のために株式の譲渡所得・配当を申告すると、その金額が合計所得金額に加わります。本人の税金は減っても、扶養している家族の控除が外れて世帯全体では負担が増えることがあるため、申告前に家族全体で試算しておくことが大切です。

保険料など税以外の負担の確認

申告した所得は住民税の計算にも反映されます。保険料など税以外の負担にどう影響するかは、制度や市区町村ごとに扱いが異なるため、この記事では断定しません。年金生活の方や国民健康保険に加入している方は、申告前にお住まいの市区町村の窓口で確認しておくと安心です。

関連コラム前年の株式繰越譲渡損失と確定申告:後期高齢者医療保険への影響▸

実務での取り扱い例

実務でよくご相談いただくのが、「家族名義の口座で損益通算をすると得なのか」という場面です。次の設例で考えます(令和8年分・他に所得なしと仮定)。

申告する方 会社員の夫に扶養されている配偶者(給与収入なし)
A証券の源泉徴収口座 上場株式の譲渡益120万円(源泉徴収済み)
B証券の源泉徴収口座 上場株式の譲渡損40万円

A口座では、譲渡益120万円に対して所得税および復興特別所得税が源泉徴収されています。確定申告で2つの口座を通算すると、課税対象は次のとおりになります。

A口座の譲渡益120万円 − B口座の譲渡損40万円 = 通算後の譲渡所得等80万円

所得税および復興特別所得税は、通算で減った40万円に対応する分が戻る計算です。

減った課税対象40万円 × 15.315% = 所得税等の還付見込み61,260円

一方で、申告した80万円は合計所得金額に含まれ、住民税でも申告したものとして扱われます。80万円は配偶者控除の要件(62万円以下)を超えるため、夫は配偶者控除ではなく配偶者特別控除の判定となり、控除額が下がる可能性があります。申告しなければ源泉徴収口座の所得は合計所得金額に含まれないため、「還付を受ける」か「扶養の判定を守る」かの比較になります。

なお、上場株式等の配当等について、確定申告で申告不要・申告分離課税・総合課税のどれを選んだか(選ばなかったか)は、その後の修正申告や更正の請求で変えることはできません。申告書を出してから「やはり住民税だけ外したい」と考えても、住民税は所得税と同じ課税方式になるため、別扱いにはできない点に注意が必要です。

配当控除・損失の繰越を使う場合の判断

申告すると不利になる場面がある一方、申告しないと使えない制度もあります。代表的なものを確認します。

配当控除は総合課税を選んだときだけ

配当控除の対象は、確定申告において総合課税の適用を受けた配当所得に限られ、確定申告不要制度や申告分離課税を選んだ配当は対象になりません国税庁 No.1250 配当所得があるとき(配当控除)。所得税で総合課税を選べば住民税も総合課税になり、配当は合計所得金額に含まれます。配当控除を目的に総合課税を選ぶ場合は、扶養や住民税への波及も一緒に見ておく必要があります。

関連コラム配当金の確定申告、銘柄ごとに分離課税か総合課税か選べる?▸

譲渡損失の繰越控除は毎年の申告が前提

上場株式等の譲渡損失は、損益通算しても控除しきれない金額を翌年以後3年間繰り越せます。ただし、損失が生じた年に付表を添付して申告し、その後も連続して確定申告書を提出することが要件で、上場株式等の譲渡がなかった年も繰り越すための申告が必要です国税庁 No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除。繰越控除で翌年の利益と相殺するには、その年の利益も申告に含めることになるため、住民税側でも同じ所得が申告された扱いになります。

申告前に確認したいポイント

判断に迷ったときは、次の順で確認すると整理しやすくなります。

  1. 申告して戻る所得税等の金額(還付見込み)はいくらか
  2. 申告後の合計所得金額が、ご自身や家族の扶養・配偶者控除の要件を超えないか
  3. 保険料など、税以外の負担に影響しないか(市区町村へ確認)
  4. 配当控除や損失の繰越控除を使うために、総合課税・申告分離課税を選ぶ必要があるか

株式や不動産の譲渡、資産全体の税負担は、ご家族の状況や他の所得によって結論が変わります。具体的なケースは税理士へのご相談をおすすめします。

関連コラム上場株式等の配当の申告分離課税|20.315%と総合課税の選び方を税理士が解説▸

関連コラム配当控除とは?計算方法と10%・5%の控除率、対象外の配当を税理士が解説▸

まとめ

令和6年度の個人住民税から、上場株式等の配当所得等・譲渡所得等の課税方式は所得税と一致しました。所得税で確定申告した所得について、住民税だけ申告不要を選ぶことはできません。確定申告をすれば住民税の申告書を別に出す必要はありませんが、申告した所得は合計所得金額に含まれ、扶養や配偶者控除の判定に影響します。

申告不要を選べるのは、源泉徴収口座の譲渡所得や上場株式等の配当など、源泉徴収で完結する仕組みがある所得です。還付・配当控除・損失の繰越といったメリットと、扶養や社会保険料への影響を比べたうえで、所得税の申告方法を決めることが大切です。判断に迷う場合は、まずは税理士にご相談ください。

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参考文献

譲渡所得の住民税申告不要のよくある質問まとめ

Q.所得税で確定申告した株の譲渡所得を、住民税だけ申告不要にできますか?

A.できません。令和6年度の個人住民税から、上場株式等の配当所得等・譲渡所得等の課税方式は所得税の確定申告で選んだ方式と一致します。所得税で申告した所得は住民税でも申告したものとして扱われます。

Q.確定申告をしたら、住民税の申告書も別に出す必要がありますか?

A.不要です。所得税等の確定申告書のデータは地方公共団体へ送信されるため、改めて住民税の申告書を提出する必要はありません。

Q.配当金を申告不要にした場合、扶養の判定に影響しますか?

A.確定申告不要制度を選んだ上場株式等の配当等は、扶養控除等の判定に使う合計所得金額に含まれません。総合課税や申告分離課税で申告すると合計所得金額に含まれます。

Q.専業主婦の妻が株の損益通算で確定申告すると、夫の配偶者控除はどうなりますか?

A.申告した譲渡所得等は妻の合計所得金額に含まれます。令和8年分は合計所得金額が62万円を超えると配偶者控除の対象から外れ、配偶者特別控除の判定となります。申告前に世帯全体で試算することをおすすめします。

Q.一時所得にも住民税の申告不要制度はありますか?

A.一時所得は原則として他の所得と合計して計算する所得で、上場株式等の確定申告不要制度とは仕組みが異なります。所得税の確定申告書の提出義務がない場合でも、原則として市区町村への住民税の申告が必要です。

Q.申告後に、申告不要へ変更することはできますか?

A.上場株式等の配当等について確定申告で選んだ方式(申告不要・申告分離課税・総合課税)は、その後の修正申告や更正の請求で変更できません。申告前に住民税や扶養への影響を確認しておくことが大切です。

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