この記事は、所得税の納付が期限に遅れてしまい、延滞税がいくらになるかを自分で確認したい個人事業主・経営者・経理担当の方に向けたものです。税務署から金額の連絡が来る前に、手元でおよその負担額をつかんでおきたい場面を想定しています。
結論からお伝えすると、所得税の延滞税は国税庁が公開している延滞税の計算画面(計算ツール)で試算できます。ただし対応している年分と申告の種類が限られているため、ツールで出せないケースは手計算で出すことになります。この記事では、ツールの使い方と入力項目、手計算の3ステップ、令和8年中の割合を使った計算例まで順にご説明します。
結論:国税庁の計算ツールで試算でき、対象外は手計算で出せる
延滞税は、法定納期限の翌日から完納する日までの日数に応じて課される附帯税です。本税だけを対象として計算され、加算税に対しては課されません国税庁 No.9205 延滞税について。
国税庁は「延滞税の計算方法」というページを設けており、その中に「延滞税の計算はこちら」という計算画面が用意されています。所得税と個人事業者の消費税及地方消費税について、令和7年分・令和6年分・令和5年分の期限内申告・期限後申告・修正申告に対応しています国税庁 延滞税の計算方法。
まとめると、押さえるべき点は次の3つです。
- 対応年分に当てはまるなら、国税庁の計算画面がいちばん早い(年分・本税額・納付日を入れるだけ)
- 対応年分より前の年分、更正・決定、重加算税が課された場合は手計算(ツールが対応していない)
- 延滞税の割合は年によって変わるため、どの年の割合を使うかを必ず確認する
国税庁の延滞税計算ツールの使い方
どこにあるか
国税庁ホームページの「納税・納税証明書手続」の中にある「延滞税の計算方法」というページを開くと、ページ上部に「▼ 延滞税計算はこちら」というリンクがあります。そこから下へ進むと「延滞税の計算はこちら」という見出しがあり、令和7年分・令和6年分・令和5年分の3つの入口が並んでいます。使いたい年分の入口を選ぶと、計算画面が開きます。
なお、この画面はJavaScript対応ブラウザでないと利用できません。会社のセキュリティ設定でスクリプトを止めている場合は開けないことがあります。
入力する項目
計算画面で入力するのは、おおむね次の3点です。いずれも手元の申告書と納付記録があればすぐに確認できます。
| 申告の区分 | 期限内申告・期限後申告・修正申告のいずれか。区分によって「納期限」が変わるため、最初に選ぶ必要があります |
|---|---|
| 納付すべき本税の額 | 申告書で確定した所得税(復興特別所得税を含みます)の額。加算税や既に納付済みの予定納税額は含めません |
| 実際に納付する日 | 完納する日。まだ納めていない場合は、納付予定日を入れて試算します |
ここで間違えやすいのが「法定納期限」と「納期限」の違いです。法定納期限は法律で定められた本来の納付期限で、令和7年分の所得税であれば令和8年3月16日です。一方の納期限は、期限後申告または修正申告の場合は申告書を提出した日、更正・決定の場合は更正決定等通知書を発した日から1か月後の日になります。
延滞税の計算の起算日は法定納期限の翌日ですが、割合が高いほうに切り替わる基準日は納期限です。この2つを混同すると金額が大きくずれます。起算日そのものの考え方は別の記事で詳しくまとめていますので、あわせてご覧ください。
関連コラム期限後申告の延滞税はいつから|起算日と割合・加算税を税理士が解説▸
ツールが対応していないケース
国税庁の計算画面には、あらかじめ対応範囲が明示されています。次に当てはまる場合は画面では計算できないため、手計算に切り替えてください。
| 対応する年分 | 令和7年分・令和6年分・令和5年分のみ。これより前の年分は対象外 |
|---|---|
| 対応する税目 | 所得税と個人事業者の消費税及地方消費税。法人税・源泉所得税は対象外 |
| 納付の方法 | 申告した本税額を一度に納付する場合に限られる。分割して納付した場合は対象外 |
| 修正申告の範囲 | 期限内に確定申告された後に提出される修正申告のみ |
| 重加算税が 課された場合 |
対応していない |
| 更正・決定 | 対応していない |
| 申告・納期限の 延長を受けた場合 |
対応していない |
実務では、税務調査をきっかけに数年分をまとめて期限後申告するケースで、この対応範囲から外れることがよくあります。令和4年分以前が混ざっていたり、資金繰りの都合で本税を2回に分けて納めたりすると、画面では出せません。その場合は下の手計算で年分ごとに積み上げ、税務署から届く納付書の金額と照らし合わせるのが確実です。
手計算のやり方(3ステップ)
延滞税は「未納の本税 × 割合 × 日数 ÷ 365」で求めます。これを、割合が変わる前後の2期間に分けて計算し、合算します。
ステップ1:期間を2つに分ける
まず、法定納期限の翌日から完納する日までを、次の2区間に切り分けます。
- 期間①:法定納期限の翌日から、納期限の翌日から2か月を経過する日まで
- 期間②:納期限の翌日から2か月を経過する日の翌日以後、完納する日まで
期間②のほうが割合が大幅に高くなります。つまり納期限から2か月が経つ前に納めきれるかどうかが、負担額の分かれ目になります。
ステップ2:その年の割合をあてはめる
割合は本則では期間①が年7.3%、期間②が年14.6%ですが、令和3年1月1日以後の期間は「延滞税特例基準割合」を使った低い割合が適用され、毎年見直されます。直近の割合は次のとおりです国税庁 延滞税の割合。
| 期間 | 期間① (2か月以内) |
期間② (2か月経過後) |
|---|---|---|
| 令和8年1月1日~令和8年12月31日 | 年2.8% | 年9.1% |
| 令和4年1月1日~令和7年12月31日 | 年2.4% | 年8.7% |
| 令和3年1月1日~令和3年12月31日 | 年2.5% | 年8.8% |
注意したいのは、この割合は「日数が属する暦年」で決まるという点です。令和7年12月から令和8年3月まで滞納が続いた場合、令和7年中の日数には年2.4%、令和8年中の日数には年2.8%を使い、それぞれ別に計算して合算します。令和8年は令和4年以降で初めて割合が上がった年なので、年をまたぐ案件では特に確認してください。
ステップ3:端数を処理する
端数の切り捨ては国税通則法の端数計算の規定に従いますe-Gov法令検索 国税通則法。順番は次のとおりです。
- 計算の基礎となる本税を1万円未満切り捨て(本税の全額が1万円未満なら延滞税はかかりません)
- 期間ごとの計算結果の1円未満を切り捨てて合算する
- 合計額の100円未満を切り捨て(合計が1,000円未満なら全額切り捨てで延滞税はかかりません)
実務では、この「本税を1万円未満切り捨ててから計算する」を忘れて自社試算が数十円ずれ、納付書の金額と合わずに問い合わせになる、というつまずきをよく見かけます。順番どおりに処理すれば税務署の計算と一致します。
計算例:令和7年分の所得税を約3か月半遅れて納付した場合
数字を入れて具体的に追ってみます。前提は次のとおりです。
- 令和7年分の所得税を期限内に申告したが、納付が遅れた
- 納付すべき本税:503,200円
- 法定納期限(=納期限):令和8年3月16日
- 実際に完納した日:令和8年6月30日
まず計算の基礎となる本税を1万円未満で切り捨てます。
次に期間を2つに分けます。納期限の翌日から2か月を経過する日は令和8年5月16日です。
令和8年中の割合(年2.8%・年9.1%)をあてはめて、期間ごとに計算します。
最後に合算し、100円未満を切り捨てます。
106日の遅れで延滞税は7,900円です。同じ本税でも、5月16日までに納めきれていれば期間②が発生せず、負担は大きく下がります。逆に年末まで放置すると期間②の日数が増え続けます。試算して金額が見えたら、まず納付できる範囲から動かすほうが結果的に軽くなります。
計算結果の見方と、あわせて確認したい点
加算税は延滞税とは別枠で計算される
計算ツールで出るのは延滞税だけです。期限後申告をした場合や、税務調査で申告漏れを指摘された場合は、これとは別に無申告加算税や過少申告加算税がかかります。無申告加算税は、調査の事前通知の前に自主的に期限後申告をした場合は納付すべき税金の5%、調査を受けた後の期限後申告であれば50万円までの部分が15%、50万円を超え300万円までの部分が20%、300万円を超える部分が30%といった区分で計算されます国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき。
そのうえで、延滞税は本税だけを対象に計算され、加算税には課されません。つまり「延滞税の試算額=ペナルティの総額」ではない、という点を押さえておいてください。加算税の計算の考え方は次の記事でまとめています。
関連コラム無申告加算税 法人税|税率・計算と免除される場合を税理士が解説▸
1年を超えて遅れた修正申告には計算期間の特例がある
延滞税は日数に比例して増えますが、青天井ではありません。偽りその他不正の行為により国税を免れた場合等を除き、期限内申告書の提出後1年以上経過してから修正申告または更正があった場合は、法定納期限から1年を経過する日の翌日から修正申告書を提出した日までの期間が、延滞税の計算期間から控除されます。期限後申告書の提出後1年以上経過した場合も同様に、その申告書提出後1年を経過する日の翌日以後が控除されます。
ただし重加算税が課された場合はこの控除の対象外です。数年前の申告について修正が必要になったときは、この特例が効くかどうかで金額が大きく変わるため、自分で試算する際にも意識しておくと安心です。修正申告後に届く納付書の見方は、こちらの記事が参考になります。
関連コラム修正申告の延滞税納付書はいつ届く?届いた後の対応を税理士が解説▸
延納を選んだ場合は延滞税ではなく利子税
所得税の延納など、法律で認められた手続きで納付期限を延ばした期間については、延滞税ではなく利子税がかかります。利子税の割合も毎年見直されており、令和8年1月1日から令和8年12月31日までは年1.3%、令和4年から令和7年までは年0.9%です。延滞税に比べて低い水準です。
延納の手続きを取らずにただ納付が遅れた場合は利子税ではなく延滞税になりますので、「延納を申し出たつもりで実は手続きが済んでいなかった」というケースには注意してください。両者の違いは次の記事で整理しています。
関連コラム利子税と延滞税の違い|税率・損金算入の取り扱いを税理士が解説▸
まとめ
所得税の延滞税がいくらになるかは、国税庁の「延滞税の計算方法」ページにある計算画面で試算できます。対応しているのは令和7年分・令和6年分・令和5年分の所得税と個人事業者の消費税及地方消費税で、本税を一度に納付する場合に限られます。それ以外は「未納の本税 × 割合 × 日数 ÷ 365」を2つの期間に分けて手計算し、本税は1万円未満切り捨て、合計額は100円未満切り捨てという順序で処理します。
令和8年中の割合は納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、2か月経過後が年9.1%です。令和4年から令和7年までの年2.4%・年8.7%から引き上がっているため、年をまたぐ滞納では年ごとに分けて計算する必要があります。また、加算税は延滞税とは別枠であること、1年超の遅れには計算期間の特例があることも押さえておきたいところです。
税務判断は個別の事情によって結論が変わりやすい分野です。金額の妥当性や、加算税を含めた全体の見通し、納付の進め方に迷う場合は、自己判断で進める前にまずは税理士にご相談ください。
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参考文献
よくある質問
国税庁の延滞税計算ツールは令和4年分でも使えますか
使えません。計算画面が対応しているのは令和7年分・令和6年分・令和5年分の所得税と個人事業者の消費税及地方消費税です。それより前の年分は、その年の割合を確認したうえで手計算で求めることになります。
延滞税がかからないのはどのような場合ですか
計算の基礎となる本税の全額が1万円未満の場合と、計算した延滞税の合計額が1,000円未満の場合は、全額が切り捨てられて延滞税はかかりません。
令和8年の延滞税の割合は何%ですか
令和8年1月1日から令和8年12月31日までの期間は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以後が年9.1%です。令和4年から令和7年までの年2.4%・年8.7%から引き上がっています。
延滞税は加算税にもかかりますか
かかりません。延滞税は本税だけを対象として計算され、無申告加算税や過少申告加算税などの加算税に対しては課されません。


